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第三章
 万華鏡で見たような無数の地球。その回りを回る月は一つしか存在しない。何故かは解かれていないが、月は地球をそのまま小さくしたように植物も動物も同じ生物が存在しているが、住人だけが違っていた。背中には蜉蝣のような羽が有り。小指には糸のような赤い感覚器官が付いている。その羽のような感覚器官で次元を飛び。糸のような感覚器官の導きで連れ合いを捜し、月に連れ帰る。生まれた月でなければ子孫を残せない為に、何故、我々の月だけで子が生まれるのか。住めるのか。その思いは、総ての月人が幼い頃から思い描いていた。その為に月人の興味は連れ合いを探す事。月の歴史を探る事。一番の楽しみは連れ合い探しの旅で体験した物事だ。地球人でもある。連れ合いは、途中で諦めるしかなかった。その夢を趣味として、人生を使い切る事しか考えていない。月は楽園には違いないが、住人は悪魔の如く完全な自己中心的な人々の集まりだった。
「妻が、煎餅を息子に食べさせたいと言い出して。劉さんは、月での第二の人生は最高の菓子を作ると聞いたのですが」
 斎は酒と自分が栽培した花を持ち現れた。
「詳しい話は中で、突然言われるとは、何か有りましたか」
 劉は奥を指し、話しながら歩きだした。
「私の息子が糸の導きに出掛けます」
 斎は旅立ちが悲しいのか。恥ずかしいのか複雑な顔をしていた。
「おお、おめでとう。年が過ぎるのは早いものですね。それで」
 儀礼で答えたが、目には悪戯心を感じた。
「息子は旅行気分で土産の話になりまして、煎餅の土産を持って来たいけど、食べたことがないから持って来られない。そう、泣かれましてねえ。それで、食べさせてやりたい。そう思って来たのですが、作って頂けないでしょうか」
 斎は相手の顔色を窺い話し始めるが、物々交換の代わりの要求を考えると声が小さくなった。
月人は最低限の主食の生産、衣服、住居は共同で作られ分配する為に、貨幣制度はなく。趣味で菓子、酒などを作り、欲しい物は物々交換していた。文化水準が低い訳ではない。宇宙の果てまで行けるのは嘘ではなく。その船は有るが、新たな新品の船を造るのには、月人全員の協力があれば造れるのだが、人々は自分の趣味の事だけを考える為に、協力は無理、だが、機械製品の土台は古いが年々性能は増していた。性能が増す理由も、土台が古いのも、月人の連れ合いに依る。その理由は月世界よりも遅れている世界から来た場合は理想郷と思うから良いが、そうで無い場合は改良出来ないか。と、考え性能を向上させていた。
「煎餅ですか。見た事も無い物は作れませんよ。今度の共同作業で知っている人が入るかも知れません。煎餅の話しは、その時に聞いて見ましょう。そうそう、妻が花の事で話し有ると言っていましてね。今呼びますから上がって寛いで下さい」
綺麗に部屋が片付けてあるが、所々に思い出の品と思える物が置いてあり。元は子供の部屋だと感じた。糸の導きの旅に出た家では死んだ者として、少しの思い出の品を残し片付けるのが普通だ。だが、永遠の別れではない。月人は連れ合いを見つけた時、二人は強制的に月に飛ばされる。その時、数日間だけだが、子と新たな家族と暮らす事が出来た。月日が経ち、親が生きているのかと思うだろうが、親は子が旅立ち、一時の再会をするまで死ぬ事がない。子供は別れた時の姿で月に帰り、親を見つけるのに時間が掛かるが、親は直ぐに再会できた。この数日だけ再会できるのか調べは付いていない。様々な理由が考えられていたが、恐らく連れ合いが見つかると、次元を飛ぶ力が増大して月に帰る。又、力が弱まり飛ばされるのだろう。そう考えられていた。
「庭の花を見ても枯れていない様ですね」
 その部屋を談話室として使い、客人と自分達の思い出を重ねて空想を楽しむのが普通だったが、斎は娘の事は記憶になく、何を話して良いのかと戸惑っていた時、自分の花が大事にされているのか分かり、声が弾んだ。
「斎様。夫の作った菓子です。冴子さんと輪君の分は包んでおきますから遠慮なさらず。花のお礼ですから食べて下さい」
妻は微笑みを浮べ部屋に入って来た。花の話が出来る事が楽しいのか。それとも夫の菓子を食べた後の顔を見たい為か、それは分からないが、心の底から楽しさが滲み出ていた。
「頂きます。花を見ましたが教える事は無い様です。話が有ると言われましたが」
 斎は話が見えなく不安な顔をしたが、菓子を一口食べると、笑みを浮べた。
「美味しいでしょう」
 妻は微笑から、満面の笑みを浮かべながら本当に嬉しそうに声を弾ませた。
「はい。美味しいです」
  菓子を食べるのに夢中なった。
「内の人。地球では軍人をしていたの。知っていましたかしら。
それも代々の軍人の家系で、料理どころかお茶を淹れた事も無かったのですよ」
 妻は目が虚ろになり、話をしている。と言うよりも、昔を思い出の場面にいるようだ。
「軍では誰でも食事を作る。私も食事を作っていた」
 劉は自分の人格が疑われたと思い、立ち上がり怒鳴り声を上げた。
「あれは、食べられると言う物です。料理とは言えません。そうよね」
 妻も立ち上がり、口調は先程と変わらずに目で訴えていた。
「お前の言う通りだ。分かった話を続けろ」
 劉は疲れたように椅子に腰掛けた。
「菓子を本格的に作り始めたのは、月に来てからなのですよ。それも、料理を始めた理由が、地球で孫が作った菓子を食べて、孫が私に始めて笑い掛けたと言って。私に言いに来ましてね。私も詳しい事は知らないのですが急に料理を始めましてね。あっ、もちん血は繋がっていないのですよ。養子を貰っての子ですから」
 妻は、夫に口を手の甲で急に塞がれ、不思議な顔をした。
「私が話す」
 劉は疲れた顔をして声を上げた。
 妻は夫の言葉で頬を膨らせた。
「私達が言いたいのは、月に来て歳も若返り、本当の第二の人生が出来て嬉しくないのですか。義務と言っても最低の衣食住ですよ。  
 我々が必要な分を作るだけ。贅沢品は趣味で誰かが作っている。欲しければ物々交換か情報で交換すれば良い。斎さん見たいに、第二の人生でも同じ事をする人は稀です。青いバラを作りたいと言っていたはず。他の方々も自然交配で作りたいのだろうと思って、皆は何も言わないのですよ。もし、人為的に作るというのなら、月人の文化は次元宇宙一のようです。私の世界は此処より遅れていたから解りませんが、宇宙の果てまで行ける科学力が有ると、皆も思っているはず。科学という力で探して見てはどうですか。他の地球や他の星では青いバラが咲いているかも知れません。調べて見てはどうです。
 私は最高の菓子を作ると言ったのは、自分が菓子を食べたいから作っている。作るのも楽しい。食べたい者には食べて頂く。食べたくない者に食べられる物を作る事はしない。交換しなくても良いが相手が気にする。だから、物々交換する。他の皆も私と同じはず。自分の遣りたい事だけを遣る。皆も夢が叶ったと言っているはずだ。貴方も自分の遣りたい事を遣れば良い。子は何時帰るか分からず。子の為に何も出来ない。自分の名を残そうと思っても何も残せない。空き家を見れば分かるはずです。使われていたまま、誰も手を付けず土に返るだけだ。
 斎さんも皆と同じく、冴子さんに振り回せながらも、趣味だけに生きたら良いのに」
 劉は話が途中のようだが止め、微笑みを浮かべた。この人は変わらない。趣味より振り回されるのが楽しいのだろう。そう思い。自分の作った菓子を食べ始めた。
「お前が言いたいと思っていた事は、言ったと思うが、他に言い足りない事は有るかな」
 劉は妻に顔を向け訊ねた。
「他には言う事は無いわ。私は聞きたい事が有りますの。冴子さんが何か始めたと聞きましたわ。家にこもって何をしているの。今度はどんな楽しい事を始めたの」
 目を輝かせて問い掛けた。
「煎餅作りです。輪とは、これが最後ですから真剣に考えています」
 斎は、懐中時計を見ながら答えた。
「冴子さんに言いなさい。此れから皆に尋ねて、取り掛かるから。と」
 劉は溜め息を吐き、疲れたように肩を落とし答えた。
「ありがとう。冴子に伝えます。失礼と思いますが、陳さんに、酒のお返しに新しい徳利が欲しいと言われていまして、此れで帰ります。
煎餅の事はお願いします。失礼します」
 斎は話しながら椅子から立ち上がり、頭を下げて帰ろうとしたが、菓子を忘れた事に気が付き、思い出したように菓子を取り上げた。
「劉さん菓子頂きます。英美さん新しい花を作りましたら持ってきますから」
 斎は疲れが取れたように笑みを浮かべた。話が付いたからか。それとも家族が菓子を食べる時の顔を思う為かは分からないが、家に帰るのが楽しみに感じられた。
「時計や車を使うのは斎さん位だろうに、さて、私も出掛けるか。英美も来るか」
 劉は楽しそうに笑っていた。
「はい」
 英美も劉の顔を見て気持ちが伝わったようだ。答えはしたが、心は此処に無いようだ。
「劉さんも同じでしたよ。この部屋を見て壁は写真で埋まっていますよ。この場所には歩いて行ったかしらねえ」
 恥かしいそうに名前を呼び。劉の顔色を見ると、笑いを堪えるような話し方をした。
「そうだったな。車は我が家にも有ったな。さて、車は動くかな」
「劉さん。車が動かなくなった時の事憶えています。劉さんは時間や景色の話で、私の顔をほとんど見ませんでしたよ。車が壊れて初めて、私の顔を見ましたよね。時間が掛かった方が良いものが見られるかも知れませんよ。時間は有るのですからゆっくりと。それでは、私はお茶でも入れますわね」
 二人は話しを止め。昔を思い浮かべた
 英美は椅子から立ち上がろうとしたら、劉は手をつかんだ。
「お茶はいいから。窓を拭いてくれないか」
 二人は同じく立ち上がり。出かける用事を忘れているようだ、昔の思いを話しながら部屋を出て行った。
 最下部の第四章をクリックしてください。
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物語を書いて五年になりましたが、私は「左手の赤い感覚器官(赤い糸)と「蜉蝣(カゲロウ)の羽(背中にある(羽衣)の 夢の物語が完成するまで書き続ける気持ちです。
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