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第二章
真っ暗な部屋に朝日が照らされたお蔭で、室内の様子が分かるようになった。影の形で判断するなら、窓側に事務用の机が一台と、その向かいにもう一台があり。その二台で部屋を半分に仕切っているように置かれ、残りの半分には応接間のようにソワーが二台と長いガラスのテーブルが置かれていた。恐らく、事務用の机は簡易台所を隠すのが目的と思えた。このような室内の影は、まあ、何処にでも有るだろう。疑問に思うのは一番長くて細長い影が有るからだ。見た感じでは人か、等身大の人形と思えば納得するのだが、洋服屋でも無いのだからマネキンと判断するのは変だ。どのように考えても物を売る店、と、言うよりも事務所だ。それなら人だろう。そう思うだろう。真っ暗な部屋にいるのは個人の自由だが、まったく動か無いのだ。呼吸をしているのかは影では判断が出来ないが、 おかしな仕草をしている。まるで突然に時の流れが止まったかのような姿だ。
 そして、朝日が室内を明るくなるにつれて、それが、若い男性と分かった。はっきりと分かると、益々、その男性が人か、人形か判断が出来ない。何故だろう。そう思うはずだ。それは、左手に飲みかけの水が入っているコップを持ち、飲み終えて唇から離れて直ぐの状態だ。そして右手には、飲み終えた薬の袋を持っていた。本当に時が止まってしまったのだろうか、そう思うだろうが、そうでは無かった。正確に時間を知らせる。そう思えるほどの力強い時計の音が響いているからだ。
「ドンドン」
「俺様のお帰りだぞ。早く鍵を開けろ」
 建物の玄関の方から扉を叩く音が聞こえてきた。恐らく、酔っ払いが間違って扉を叩いているのだろう。
「ん」
 男は、その音と言葉を聞くと不審そうに顔を歪めた。そして、微かに身体も動き、これで人間と判断が出来たはずだ。
 それなら何故、この男は病気なのか、そう思うだろうが、そうでは無かった。この男は生前に父から渡された。遺言書と書かれた本。その本の通りにしか生きられない人だった。それだけでなく、人から命令をされなければ行動する事も食事を摂ることも出来なかった。それは突然に病気になったので無く、幼い頃、いや、生まれた時から自我が無かった。乳を与えるにも、母親が手元まで抱きしめ、口元まで導かないと駄目だった。それだけでなく、最後に命令のように細々と、口の開き具合から含み加減まで言い。そして吸って飲みなさい。と、言うように指示をしないと乳も飲めない赤子だった。それを見続けて育てた両親は、歳が取れば普通の子供のようになってくれる。そう思っていたのだが、七歳を過ぎても治らなかった。その事に悲しみと息子の事が心配になり、父がある本を作成したのだ。それが、遺言書と言う。それが本の題名だ。人として生きられるように思案をして作成した。それはロボットを動かすような計算式のような内容と、全ての事柄を思案しなくても良い。辞書のような物だった。両親は、まあ、特に父親が本のおかげで人間らしくなったはず。そう思い、一万冊、いや十万冊以上と思える数を書き残していた。まあ、母は、合っても要らない物で無いから何も言わずに好きにさせていたが、本心は友達と遊んで自然と治ってくれたと思っていた。
 それでも、今は、男の意識や自我は無い。そのように生まれた男を哀れと思い神が使わしたのだろうか、別の人間。いや、男の先祖で、男は生まれ変わりだった。ある男が意識を支配しながら夢を見ていた。それと同時に、友人であり旅の仲間でもある。旅の友の動物も同時に同じ夢を見ていた。まあ、それは夢と現実の合わさった物だった。
「凄く強そうな獣になった。あれを見たら静かも驚くだろうなぁ」
 鏡は、身体が無いからだろう。人々の夢の中を幽体離脱のように渡り歩き続けた。そして、やっと、昔の旅の仲間だった。天猫に会い。又、子孫であり、生まれ変わりの男の身体に戻って来た。 
最下部の第三章をクリックしてください。

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自己紹介:
物語を書いて五年になりましたが、私は「左手の赤い感覚器官(赤い糸)と「蜉蝣(カゲロウ)の羽(背中にある(羽衣)の 夢の物語が完成するまで書き続ける気持ちです。
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