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第二十八章
「んっ」
「嫌な感じねえ」
「この近辺には西国の者は来ないはず。だが、これ程の殺気は獣族しか居無いはずです。
 まだ、我々には気が付いてないようだが、丁度良い。先を急ぎます」
 三人は、今進んで来た後ろを振り向いた。
「だが、殺気を感じた方角は」
「信ありがとう。蘭達なら大丈夫と思うわ。あの戦いを生き残ったのよ」
「そうだな、考え過ぎか」
「何をしているのですか、急ぎますよ。もう少しで、私の家に着きます」
「済まない。急ごう」
 暫く歩くと、道は、二人に声を掛けた。
「着きました、あの家です」
「ほう」
(可なりのぼろ小屋だな。剣を隠す為に好んで選んだのかな。それにしても、男の満面の笑みはなんだろうか?)
「どうします。少し休んで行きますか?」
「そうだな、喉が渇いたなぁ。休まして頂こうか、涙花、そう思うだろう」
 信は、男の笑みの理由を知りたい。そう個人的な考えだけなら、先を急いだのだが、涙花の疲れた姿を見て、そう感じた。
「そうねえ。良いわよ」
「美味しい、お茶を飲ませますよ」
 そう言うと、道は駆け出した。犬がお帰り。そう吼えているのだろう。それを無視して、家に駆け込んだ。
「花、帰ったよ。信と涙花を連れてきたぞ」
「信様と涙花様でしょう」
 女性と思えない。男のような強さを感じる声が、小屋から響いた。
「信で良いですよ。奥さん」
 信は、先ほどの笑みの理由が感じ取れた。主人としての態度だろうか、それとも、愛情が溢れた。その声を聞きたいのだろう。
「ごめんなさいねえ。お邪魔します。あっ」
「どうした」
 涙花の驚きを感じ取り、信は即座に、涙花の前に出て、身を守った。
「気持ち悪いでしょう。ごめんなさいね」
 花の左腕が複雑に折れ曲がっていた。
「医者」
 涙花は、そう言葉を掛けようとしたが、西国の者から逃げている者に、それを口にする事が出来なかった。
「花、約束は果たしたぞ。これで、俺の奥さんに成ってくれるのだろう」
「静かにして、その話は後よ。信様、竜家の長老から、鍵を渡すように言われました」
「ありがとう」
「いいえ。それで、鍵の隠し場所は、犬の習性を利用しました。何か光り物を犬に与えれば、鍵の場所に案内してくれます」
「ありがとう」
「ああっお茶を淹れますねえ」
「いらないわ。信、行くわよ」
 涙花は、不機嫌と言うよりも、信じられない。そう、思うような怒り顔だ。
「あの?」
「あんたも来るの」
 涙花は、そう言いながら、無理やり道の手を引っ張り、小屋の外に連れ出した。
「えっえええ」
「行って来なさい。待っているからねえ」
 花は、心の底から安堵した表情で送り出した。
「信。犬と剣だが、鍵だか分からない物は任せるわ。道、必ず。花さんを竜機の所に連れてくるのよ。腕だけでは無いと思うわ。完全の完治と行かないと思うけど、何とか治して見せるわ。良いわね」
 涙花は、家に残り、花の容体を確かめた。
「涙花、話は済んだのか」
「なに、それは、剣のように大きいけど、突起が何個も付いて、武器としては役に立ちそうにないわねえ。何か剣というよりも、突起が沢山あって、添え木には丁度良いわねえ。長い突起にトマトが生ると可愛いわよ」
「なななっ、トマトだと、この素晴らしさが分からないのか」
「分からないわ」
 馬鹿馬鹿しいのだろう。あっさりと答えた。
「私は、家に入ってもいいですよねえ」
「ああ、そうだ。信、あの人を一緒に連れて行っても良いかな」
「そうだな、一緒に連れていく方が良いだろう。獣機の中にも医療施設があるはずだ」
「そう言うと思っていたわ。早く奥さんを連れてきなさい。信がおんぶしてくれるって」
「えっ」
 信と道は満面に嫌気を表した。信は背負う事に、道は、自分以外の男に肌を触れさせたくないのだろう。そう感じられた。
「馬鹿ねえ。おんぶくらいで嫌気を表してどうするの、診察や治すのに肌に触れるのよ」
「うっ」
「早く、準備と奥さんに話してきなさい」
 道が小屋に入ると、即座に怒鳴り声が響いた。だが、道の声は聞こえない。一方的に花の話し声だけが響き渡るだけだ。
「説得しに行った方が良いのではないか」
「馬鹿ねえ。今言ったら殺されるわよ。それに話がこじれるわ」
「そうか」
「そうなの。ただ恥ずかしがっているだけ」
「あの怒鳴り声が、恥ずかしがっている?」
「そうよ。女心が分からないのねえ」
「そうとは思えないが」
「あの手の男は泣き落としねえ」
「ん、静かになったな」
「ほらねえ。そろそろ出て来るわよ」
「おっ」
 信は二人の姿を見て驚き、声を無くした。
(涙花、男の頬が腫れているぞ。涙花の予想は外れたらしいなあ)
(本当に馬鹿ねえ。恥ずかしい気持ちを隠す為に叩いたのよ。分からない人ねえ)
(そうか、顔の形が変わっているぞ)
 二人に聞こえないように耳打ちした。
「大丈夫なの。おんぶしてもらったら?」
「大丈夫だ。気にするな」
 顔を真っ赤にして答えた。恐らく死ぬほど恥ずかしいのだろう。涙花は、自分なら喜んでおんぶしてもらうのに、そう思える。不満顔を表していた。
「蘭の所に急ぎましょう」
(大丈夫か、殺気を感じたのだぞ)
(何度もしつこいわよ。大丈夫よ)
 涙花と信は囁き合った。
「そうだな、行こう」
「すびばぜん」
「何を謝っている。関係ないだろう」
「ふぁい。そうでず」
 信と涙花は笑いながら歩き出した。花と道は、自分の事で笑われた。そう感じて、気分を壊したのだろう。何度も問い掛けながら二人の後を追った。
 最下部の二十九章をクリックしてください。
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物語を書いて五年になりましたが、私は「左手の赤い感覚器官(赤い糸)と「蜉蝣(カゲロウ)の羽(背中にある(羽衣)の 夢の物語が完成するまで書き続ける気持ちです。
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