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第十九章
「何だ。慌てるな。落ち着け」
 涙花、甲達が都市を出て、一時間後だ。長老は徹夜の為に床に入ろう。とした時に電話がなった。それも、緊急連絡ようだ。
「全家の建物から注意を知らせる水晶球が点滅したそうです」
「注意なら気にしなくても良いだろう」
「確かに、機械の設定も注意なのですが、今の我々には致命傷です。薬がないのです」
「何だと」
「外界では当たり前の細菌なのです。ですが、我々には抵抗がありません。薬も無いのです。都市の中に蔓延するのは時間の問題です」
「分かった。全ての長老に連絡を取る」
「待ってください。その為に連絡をしたのではないのです。細菌に感染した者が多く、都市の機能を維持が出来ません」
「まさか」
「このままでは外界に現れます。と言うよりも、墜落するでしょう」
「どうすれば良いと言うのだ」
「他家と連絡が取れないのです。全部所とは言いませんが、生命、都市機能室に一人でも居てくれれば着陸させる事は出来ます。私が指示を打ち込んでも、返信がなければ機能しません。完全自動は無いのです。今までは簡易自動で機能していましたが、警報が作動した為に、今では手動です。誰か、返信を返せる者を配置して下さい」
「どの位の時間は待てるのだ」
「二、いや一時間です。それを過ぎたら修正をする事は出来なくなります」
「わかった。何とかする、出来る限りの事をしていてくれ、頼んだぞ」
「はい」
 安心したのだろう。ハッキリとした口調だ。電話を切ると、即座に電話が繋がった。
「何をしていた。何度電話をしても繋がらなかったぞ。他家の長老と話をしていたのか?」
「済まない。用件は分かっている。このままでは外界に墜落するのだろう」
「私は細菌の事で、えっ墜落。本当か」
「本当だ。今連絡があった」
「どうすれば良いのだ」
「落ち着け、重要な部署に一人でも就けてくれ。そう言われた。それも一時間以内にだぁ」
「わかった」
「まて、私からも他家に連絡するが、お前からも他家に同じ事を伝えて欲しい」
「わかった。切るぞ」
 この都市の騒ぎは、涙、愛、蘭、甲、乙は知るはずがないが、もし、知る事が出来れば、都市の細菌の駆除は出来ただろうか、それでも、外界の人達の命を優先しただろうか、恐らく優先したと思える、このような人を出さない為に外界と接触を断ったはずだからだ。
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第十八章
 夢の楽園と思われている。その故郷に帰ってきた。話題の人物は、愛にせがまれ夜遅くまで話をしていた。そのお蔭で身体が休まる位の睡眠を取る事ができた。それは後で感謝するだろう。愛と一緒でなければ一睡もできるはずが無かったからだ。愛の方が喜びの為に、涙より朝早く起きていた。
「いい匂い」
 音よりも匂いの方が、目を覚ます効果があるのだろうか、それとも、余ほど空腹だったのだろう。声に気が付き、愛が言葉を掛けた。
「あっごめん。うるさかった」
「ううん。普段からこの時間だから」
 涙は、食欲を感じたとは言えなかった。
「連絡が無いけど、朝食を取ったら長老の所に行きますよ。それの方が良いでしょう」
「そうねえ。それにても、いい匂いね」
「えっそう、そう思う。リキも好きかな」
「食べて見ないと、何とも言えないわね」
「もうー」
 二人は昨夜の話題を上げながら食事を取る。又、時間を忘れて話すと思われたが、涙花は食欲と睡眠を取れたからだろう。怒りと不安の気持ちが膨れ上がった。
「ごめん。私、少しでも早く帰りたいの」
涙花は、幻だが、東国の被害が目に浮かんだ。
「うん。私も会えないけど、リキと同じ地を踏みたいわ。長老の所に行きましょう」
 建物の前では、乙が湯を沸かしていた。蘭か甲にでも目覚めの飲み物が欲しいと言われたのだろう。都市に住む人の出勤時間は早いが、外界に行って恥ずかしい気持ちが無くなったのだろう。それで無ければ、玄関の前で飲み食いする考えは浮かばないはすだ。
「涙花さん。長老から渡されました」
 乙は、握り締めていた物を渡した。
「何で、貴方が持っているの、それなら、早く知らせてくれたら良いのに、人の命が掛かっているのよ」
 そう、言いながら、乙の首を絞める。
「涙さん。手を放してくれないか、今長老が帰りながら渡された。色々な所に連絡をしていたと思う。今帰るのだからなぁ」
 甲は、怒声を聞き車外から出てきた。
「ごめん」
「ああっ言い忘れていた。二万人が限度らしいぞ。恐らく、要らない物を外してくれたのではないかな。愚痴を言いながら帰る人もいたから、そう思うぞ。気を付けろよ」
「ありがとう」
 振り向きながら答え、建物の中に消えた。
「愛、私達も行くぞ」
「良いの、朝食の用意だったのでしょう」
「時間潰しだ。気にしなくても良い」
 その言葉が聞こえたのだろう。乙は不平も言わずに片付け始めた。
 出発の準備をしている時だ。ズズと腹に響く低い音が伝わってきた。
「蘭、姉さんが出たらしいぞ」
「そうね」
 蘭は気の無い返事を返したが、真っ先に車外に出たのだ。姉の事は気にしているはずだ。
「可也大きいなあ」
 甲は呟く。偶然なのだろうか、又、興味が引く事などが起こり、雑用を乙に押し付けた。
「それはそうでしょう。人々を逃がすのよ。二万人乗りの船でも足りないはずよ」
 箸箱の蓋を取ったような船だ。手を加える前は、恐らく、空母のような形のはずだ。
「それでは、行くぞ」
 その言葉がこの地の最後の言葉になった。
全ては、外界に付かなければ遣る事が無いからだろうか、鍵を渡される時に、長老に言われた事を思い出した。
(済まない。始めの予定なら任務は終わりなのだが、他家で新たに水晶球が点滅したのだ。
今回は都市の中の異常らしい。涙花が船の電源を入れたからだと思える。無事に船が都市に戻れば警報は止まるはずだ。頼んだぞ) 
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第十七章

「信、涙花を信じて待とう。それで、この地を去ろう。行き先は、大陸の東に擬人の大きな国がある。その王から不老不死の霊薬の旅に出てくれないか、そう頼まれた事がある。その王に旅に出る。そう言えば全ての用意をしてくれるはずだ。新天地を探せ、良いな」

「そうですね」

 信は、虎家の長老の話に頷いた。

「そうだ、何度か、言ようとしていた事がある。涙花の事だ。左利きの武道家だから常に、左だけに武器を付けている。そう言うが、あれは、信が言っていた。左手の飾りを隠す為と思えないか、一度確かめたらどうだ」

 兎家の長老が問うた。

「えっ」

 信は、問い掛けようとしたが、全ての長老が、都市に付く喜びの声で話す事ができ無かった。

「おわ、おおお」

 都市上空に来ると、虹家、鳥家の獣機に攻撃を受ける。何発も当たるが、貫通する事も変身も解けない。役に立たない。そう感じたのだろう。虹家と鳥家は退却した。その隙に都市に降りる。竜家の長老は即座に変身を解き、声を上げた。

「直ぐに長老会議をするぞ」

 だが、皆は集まったが話し合いと言うよりも確認のように感じられた。恐らく、心の中の考えは同じだったのだろう。それぞれの長老が種族の元に戻ると、高齢者と思える人が可也の人数が集まり、変身を始めた。竜家の長老を残し。それ以外の竜家だけが上空の敵の攻撃を受け持つ。その他の他家は、猪、馬、犬の攻撃を身体で受け止めていた。歳を取ると毛並みや鱗などが硬くなるのだろう。一度や二度位では貫通しない。だが、変身が解ける者が増えたが、気合で何度も変身を繰り返した。

「我らも援護に行くぞ」

 信が自家、他家の獣変身になれる若い者に言葉を掛けた。

「まだ、分からないのか、私や高齢者は旅に出られない。邪魔になるなら、この地で死にたいのだ。それにだ。涙花の為に何かをして上げたい。今まで待たせたお詫びとしてだぁ」

「えっお詫び・・・」

「涙花は、信を助けたいから船を持ってくるのだぞ。信が死んでも、獣族の皆を非難させてくれるだろう。それでは償いきれない」

「私は嫌です。人の犠牲で生き残るなんて」

「いい加減にしろ。誰が、新天地までの護衛をする。はぁー、死ぬ気持ちはない。信と涙花の結婚式を見るまではなぁ」

「だから、私は」

「お前以外は、気が付いている者は大勢いる。確認はしていないが、左手には噂の物があるかもしれないぞ」

 竜家の長老は吐血を吐いた。地上に降りるまで可也の数の石弾が腹に当たっていたからだ。信や他の長老が背に載っていなければ、腹に当たるはずもなかったはずだ。

「竜の長老、大丈夫ですか?」

「気にするな」

「結婚の祝いとして守って頂きます。だけど、遅いと言われ断られるかもしれないです」

「わははは、そうだな。その時はひたすらに謝れよ」

二人は笑っているが、都市の外は地獄のようだ。獣は石弾の角度を見切り、最小限の傷で跳ね返していた。だが、全ての獣と言って良いだろう。獣の身体は血が滲み痛々しかった。長老たちが着てから、都市には全く被害が増えていない。それでも人体だ。時間の限りがある。何故、可也の変身獣がいるのに獣機を壊しに行かないのか、そう思うだろう。それは、六種族の半身獣が六人ずつに分かれ、それぞれの獣の力を使い。変身獣と対等に戦う力があり。都市を守る事しか出来なかったからだ。

「ぐっ、虹、鳥家が来たぞ」

 竜族が、同族の様子を見て援護に向かおうとした時だった。虹、鳥家の獣機は車よりやや大きいが、速度は可也速く、地上獣機と同じく石弾を連射する。だが、竜の腹に当てる事は出来なった。巨体で飛んでいる訳でなく浮いている為に、即座に身体を捩れるからだろう。それで、硬い鱗しか当たらなかった。

「ウォォー、ウォォー」

 竜は痛みを感じるのだろう。泣き声のような悲鳴を上げる。それでも、変身が解ける者はいない。上空から落ちたら死ぬ。そう思うからだろうか、それとも、十二族最強の誇りからとも思えた。だが、竜の表情には微笑みを浮かべているように思える。その下には逃げる人々がいるが、我を忘れているのでなく、竜に手を振る子供がいるのだ。その竜の血族か孫なのだろう。

「最低限の物だけにして下さい」

 都市に残る。戦える者も何もしていない訳ではなかった。

「建物に入って待っていてください」

「そろそろ、満員だ」

「何を言っている。確りとした建物に避難させろ。涙花様が着き次第、この地を出るのだぞ、確りしろ」

 軍属に属す者は部下には厳しいが、避難をする者には穏やかに事を勧めていた。恐らく八つ当たりと思える。それも、そうだろう。軍属に属しているのに、軍属でもない老人が最前線にいるのだから悔しいのだろう。

「それにしても、涙花様は故郷に帰ったのだろう。そして、飛ぶ船を持って来てくれる。そう聞いたが、そこは楽園なのかな?」

「夢のような楽園だと思うぞ」

 避難をしながら話し声が聞こえる。だが、部下でない為に話を止めろ。そう言えない。一瞬だが、顔を顰めたが、笑みに変わった。恐らく、同じ事を考えているのだろう。
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第十六章
 都市の一つだけの門の方からは猪、馬、犬家の戦車が、虹、鳥家は戦車の届かない所を攻撃していた。都市中は弾丸の破片や衝撃の風発、建物の破片や崩壊が起きていた。神が罰を与える為に、地上に地獄を創るとしても、今の惨状を創造も出来ないだろう。それほどの事が起きていた。だが、虹、鳥家の攻撃は予定になかった。元々は要求に応じない時の威嚇の為だった。それが、四時までに指示が来ない為に、虹、鳥家の軍長が自分で判断を下した。何故かは、一時間前の西国で起きていた。それは、猪家の長老の一言が原因だった。事件の一時間前。三時の事だ。
「何故、私は自室で寝ているのだ」
 猪家の長老の灰は声を上げた。
「主様。全て予定通りです」
「何が予定通りだ」
「主様は、手を汚さなくていいのです。私が、主様の願い通りに致しました」
「東国の長老はどうした。まさか、殺したのではないだろうなあ」
「いいえ。牢に入れております」
「そうか、ん。今は何時だ」
「三時を少し過ぎました。どうしたのです」
 主が、慌てていたと言うよりも、考えているのか、悩んでいるとも思える複雑な表情をしている。それで、問い掛けた。
「間に合えばいいが、むっんん。牢屋が先だ。今すぐだ。案内しろ。まだ間に合う」
「主様。落ち着いてください」
「いいから、直ぐに牢を案内しろ」
「はっはい」
「走れ、時間がないのだ」
 灰は、急ぎ部屋を出た。老人が礼儀を優先していた為に、引き摺るように急がせた。
「済まない。何かの手違いが起きた」
 灰も老人とは大袈裟だが、部屋から牢まで走りとおす事は出来なかったが、息が切れるほど真剣に走って来た事は声色で感じ取れた。
「おおそうか、出してくれるのだな」
 灰の様子で、指示を出してないと感じた。
「今出す。それで、竜家の長老直ぐに変身が出来るか、東国が攻撃されているのだ。皆を乗せて帰れるか?」
「主様。何を言っているのです。人質にすれば確実に勝てるのです」
「お前は何を考えている。鍵をよこせ」
「主様。十二族の王に成れるのです。止めてください。お願いです、止めてください」
「何度言ったら分かるのだ。私は王になる気持ちがないと、何度も言っているだろう」
「私達を騙していたのですか」
「良いからよこせ」
 奪い取り、鍵穴に差そうとした。
「うっ、何を考えて、いる、のだ」
 背中を短刀で刺された。刺した者は猪家の灰の片腕の老人だ。主を刺した同時に、牢番兵が刺した者の命を奪った。
「早く出してやれ」
「はっ」
「猪よ。大丈夫か、確りしろ」
 五種族の長老と、涙花、信は自国が攻撃をされているのを忘れているのだろうか、灰の容態を気にした。
「父が、近い間に十二族を一家で従えたい。そう思う者が出るはずだと言っていた。十二種族が分かれ、二つの政治の体制を作れば防げるはずだ。その話を何度も聞かされた。だが、私は年々他家への険悪を感じ、駄目だと感じた。東国の者が遠い地へ行けば防げる。威嚇の行動を起こせば意味が伝わるだろう。そう思ったのだ。それは、酒を飲みながら伝える積もりだった。今日の酒は美味しかった。若い頃に皆で飲んで以来かなぁ」
 目が虚ろで、眠いのだろうか、目を閉じて昔の思い出を見ようとしているのだろうか、それとも、身体の機能が役目を果たせないのだろうか、だが、穏やかな表情している。
「わかった。もう良い」
 灰は言葉を聞き、竜家の長老は、目を見開いた。
「私が死ねば、獣機を止められない、戦も止められない。獣族が泥沼になるはず。東国はこの地を捨てた方が良い」
「獣機。禁忌だぞ」
 四家の長老が驚きの声を上げた。 
「言うな」
 竜家の長老が諌めた。
「そうだな、猪の。そう思う有難う」
 もう、灰の口から出るのは、会話にも言葉にもなっていない。全てを話し終えたら償われる。そう思っているようだ。
 灰が息を引取ると、皆は、建物の外に駆け出した。走りながら竜家の長老が声を上げる。
「変身をしたら直ぐに乗ってくれよ」
 西国の都市に住む者は戦が行われている事は知らない。虹家と猪家が、東国との交渉の為と言う名目で軍を動かしたからだ。勿論、東国の長老を引きとめようとする者もいない。
「急げ、都市の外に出るぞ」
 外に出ると、竜家の長老は変身した。全長二五メートルの蛇と鯉を併せたような物が現れた。それが竜だろう。
「良いぞ。全ての者が乗ったぞ」
 その言葉が分かるのだろう。鳴き声を上げると、大空に昇った。
「あれでは、もう間に合わない」
 悲鳴の聞こえない所でも火や煙が見える。それで、都市中の様子は感じ取れた。都市の中で弾丸の破片や建物の崩壊などが、想像が出来て、状況が目に見えるのだろう。
「竜家の長老。私を北の方向に連れてって、妹がいるはずなの。妹の仲間と一緒に故郷に帰るわ。そして、空を飛ぶ船を持ってくるわ。必ず戻るから待っていて」
 竜は頷いたように首を下げ、北の方向に向かう。それ程飛ばなくても馬車を発見した。                                           
「居た。私を、あそこに降ろして」
 空から大きい蛇のような生き物が降りてきたからだろう。愛達が乗る馬車が止まり、即座に涙花は竜から降りて馬車に向かった。
「私は涙よー。涙花よー」
「涙花さん?」
 愛と乙が不審顔で呟いた。
「そうです。涙花です。蘭を呼んで」
 呼ぶ声が聞こえたのだろう。蘭は現れた。
「なんです」
「私は涙花です。貴女は本名を隠しているようだから言わないけど。私の事忘れたの。涙花よ。貴女の姉の涙花よ」
「涙お姉ちゃん」
「そうよ。涙お姉ちゃんよ」
「会いたかったよぉ。お姉ちゃん」
 嬉し涙を流しながら抱き付こうとした。
「ごめん、そんな暇はないの。私を都市に連れて行って。お願い」
「今直ぐなの」
「そう、今直ぐよ」
「甲、直ぐに都市に帰れる」
「帰れるぞ。だが、愛、良いのか」
「良いわ。直ぐに都市に帰って」
「分かった。それでは、椅子に腰掛けて確りと身体を固定してくれ」
 車は行きの時とは違い。微かな振動もしないで到着をした。恐らく、完全な肯定位置を入力が出来たからだろう。
「帰りは良いわ。勝手に帰るから」
 即座に簡単に挨拶を済まし。事件が起きた建物に入っていった。蘭と同族だからだろうか、それとも元の仕事場だったのか、迷いもしないで地下に向かった。
「静かね。私達の使命は終わった証拠ねぇ」
「そうだな。帰って来たのだから報告しに行くとしよう。報告が終われば安心して好きな事が出来るからな」
「そうしましょう」
「蘭、良いのか」
「何が」
「お姉さんなのだろう。何か久しぶりに会ったように感じたから」
「そうよ。何年も会ってなかったわ。だけど、今は駄目なの。何か遣っている時とか、何か遣ると決めた時のお姉さんは人の話は聞かないから、終わるまで待つしかないの」
「そうか」
「行きましょう。愛、乙も行くわよ」
 愛と乙は、何も否定する理由がない為に話には入らず。そのまま二人の後を追った。
 四人は長老の室に行く途中に喚き声や叫び声は勿論、警報機の音も聞こえてこない。それで使命は終わったと感じた。だが、長老の室の近くに来ると、怒鳴り声が聞こえた。一瞬、事件は終わってないのか、そう感じたが、長老と蘭の姉の声と感じ取り、胸を撫で下ろした。だが、四人は室に入る勇気がなかった。
「長老、船の鍵を貸してください」
「駄目だ。外界で使うのだろう。そして、そのまま外界に置き去りにされては困る」
「だから、何度も、返しに来ると言っているでしょう。分からない人ね」
「それにだ。外界には干渉をしないようにしている。そう何ども言っているだろう」
「だから、ただの運搬船よ。理由を言ってよ。持って帰って来ると言っているでしょう」
 二人の会話は扉の外まで聞こえていた。このような喚き声が聞こえていては、普通の神経の持ち主なら入る者は居無いだろう。四人は話が終わるのを待っていた。その時に後ろから靴音がしたのを気が付かないでいた。そして、その者は近寄り、蘭の肩に手を置いた。
「あっお父さん」
「涙花が帰っているのを知っているか」
 娘が扉に指を向けた。
「ああっそうだな、涙花の声だな」
「蘭と名前を変えて、事件の担当している。そうだな、全てが終わったのか」
 蘭は又、扉に指を向けた。
「そうだな。これでは入れないなあ」
 そう言いながら扉を叩いた。その様子を見て、四人は声を掛けようとしたが、許可の返事も聞かずに入ってしまった。怒鳴り声で扉の音が聞こえない。そう思ったのだろう。
「涙花、少し落ち着きなさい」
「お父さん」
「来てくれたか。お前からも言ってくれ」
「長老、お父さんを呼んだからって、諦めないわよ。ある種族の危機なの、お願いよ」
「長老、娘のかたを持つ。そう思うかもしれないですが、他家の建物で水晶球が点滅した。そう知らせを受けました。同じ警告なのか、違う警告なのか分かりませんが、娘が外界から都市に帰るほどの事が起きているのです。恐らく関係している。そう思うのです。私からもお願いします。許可して下さい」
「うぅうう」
 長老は思案していた。
「長老、又、誰かを調査に向かわせる考えのはず。娘二人と、他の三人で向かわせてください。そして、運搬船の許可もお願いします」
「うぅうう。分かった。議題として採り上げる。今日中に結果をだす。それで良いな」
「お願いします。涙花も納得しろ」
「長老様、お願いします」
 涙花はしぶしぶ納得した。
「失礼します」
 部屋の騒ぎ声が聞こえなくなったからだろう。軽く扉を叩きながら部屋に入った。
「ご苦労さん。そう言いたいが、他家で水晶球が点滅したようだ。もう一度出掛けてもらう事になりそうだ。恐らく明日だろう」
「そうですか。わっ分かりました」
「涙花、久しぶりだ。家でゆっくりしなさい。向こうでの話を聞かせてくれるのだろう」
「嫌よ。この部屋で待つわ。一秒でも早く帰りたいの。今でも、一人、二人と命が消えているわ。その事が分かって言っているの?」
「涙花、我がままは止めなさい」
「あのう」
「なんだね」
「なによ」
 親子二人が、愛に問い返した。蘭は二人の姿を見て天を仰いでいた。
「私の部屋に来ない。ここから近いし、一緒に出発するのでしょう。変な言い方だけど、長老が、私達だけで出掛けろ。そう言ったとしても、私と一緒なら大丈夫よ」
「うっ」
 長老は言葉を無くした。愛に言われた事を考えていたのだろう。そう表情を表した。
「そうする、ごめんね。お邪魔するわ」
 涙花は長老の表情を見て、そう言葉を返した。
「私は車に止まるわ。何か、上手い具合に父さんが来たのって、嫌な予感がするわ。言い包められて、仕事が増えそうだわ」
「勝手にしろ」
 父は、そう言って部屋を出た。
「甲も乙も車に来るわね。勿論、外よ」
 蘭は、二人に聞かずに決めてしまった。
「お姉ちゃん、またね」
「私達も行きましょう。う~ん、涙花さん。それとも、涙さんと言えばいいのかな」
「好きな方で、呼んでいいわ」
 愛と共に部屋を出ようとした時、一瞬だが、長老に鋭い目線を向けた。口では言い切れない事を言っているように感じた。
 最後に長老が一人で残ったが、慌てる訳でも、連絡を取ろうともしない。蘭、涙花の父が来た事で再度四人を行かせる事が決まった。そうなのだろう。残るは、涙に鍵を渡す事は長老の気持ちしだい。そう表情で感じられた。
「あのねえ。・・・・」 
 涙花は、蘭達と別れる時、本名で問い掛けようとした。恐らく、父も同じ気持ちのはず。自分の嬉しい事や妹の嬉しい事などを話したかったのだろう。蘭は、その気持ちを気が付かず。甲、乙と罵り合っていたが、涙花には楽しい会話をしている。そう感じた。
「涙さん。外界に付いて色々聞きたい事があるのです。時が経てばねえ。私も外界で住む事になるのです。あの、そのねえ」
「いいわ。何でも言って、分かる事なら何でも教えるわ」
 愛のお蔭だろう。明日の朝までは、外界の事は忘れて楽しい時間を過ごした。
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第十五章
 王冠の儀と同時刻。十二時に西国の新都から五万の軍勢が東国に向かっていた。それも指揮の時にだけに使われる大太鼓を鳴らしながらゆっくりと進んでいた。何故か、東国の都に分かるように大袈裟に鳴らしていた。
「西国の兵が東国に来る、儀式なのか?」
 知らせが届いたのは新都を出て直ぐの事だった。そして、不信に思い、羊家の長老が問い掛けた。
「違うようです。全て本物の武器を手にしているそうです」
「そうか、儀式だと困る。念の為に都市の前に五万の兵を置くが、仕掛けてくるまで手を出すな。それと、我が羊家と虎と竜家だけで出る。伏兵が居ては困る。残りは城内を固める。そう伝えてくれ、急げよ」
「はっ」
 六家の使いは即答した。西国の軍が、都市から耳を澄ませば聞こえる位まで近づいた頃に用意が整った。その知らせを聞くと、羊家の長老は大声で指示の声を上げた。
「羊家を中央、虎家は左に竜家は右に陣を置く、そして、指示があるまで待機だ」
 即座に命令は実行された。都市の門の前、五百メートルの所に、三家が並んだ。
「何を考えているのか分からん。規律もなく種族もバラバラで行進だぞ。戦う気持ちがあるのか、やはり、儀式なのか?」
「変身できる者だけで確認してきますか、常人の力での刀や矢では傷も付きませんから」
「そうしたいが、罠だったら、それで変獣が遣られたら太刀打ち出来なくなるぞ」
「分かっています。私達も五万に十人で向かうのです。無理はしません」
「もう、羊の純血族が十人しかいないのか?」
「他家の人数は分かりません。調べますか?」
「調べなくても良い」
「ですが、老人を入れれば可也の数になりますが、何時、変身が解けるか分からないようでは使えません。それで、除きました」
「そうだな」
「数が必要なら加えますが」
「良い。十人で頼む」
「はっ」
 即座に変身した。羊と言っても象位の大きさがある。これでは、人の力での刀や弓では毛で遮られ無駄だろう。だが、五万の敵に向かうのだ。鳴き声が怯えているように感じるのは自声とは思えなかった。陣の後方に獣が十頭現れても敵の進撃は止まらない。見えないはずはないのだが、逆に、味方の陣の方が踏まれないように乱れて分かれた。そして、気合か威嚇のような声を上げながら向かった。まだ、乱れた太鼓の音は変わりなく、進撃してくる。もう、踏み潰すと思う時だ。五万の軍勢は乱れながら逃げたのでなく、整然と六人ずつに分かれた。それも、六種族ごとだ。
「な何だ。何が起きた」
 突然、腹に響くような音が聞こえた。その同時に変身した羊が四頭も斃れた。
「たった退却だ」
 指揮官の言葉を聞く前に、我を忘れて自陣に駆け戻る。数人の同族を踏み潰したからか、太鼓の音が止んだからだろうか、やっと我を取り戻した。だが、恐怖の為に変身は解かれ、直ぐには変身は無理だと思えた。
「信じられん。禁忌の武器を使うとは、戦に勝のでなく、皆殺しにする気なのか?」
「報告に来ました。変身できるのは二人だけです。ですが、機動性は無くなるでしょう」
「音が止んでいるなぁ」
 敵の軍勢は六人ずつに別れたまま、行進は止まっていた。
「はい。獣機音を隠す為だったのでしょう」
 羊家の軍長が話し掛ける。
「これは戦と言えない。ただ、指揮も作戦もなく獣機で撃ち続ければ終わりだ。それにしても、何故動かない。弾がないのか?」
「それは違うでしょう。確認したが石でしたから、それに、準備はしているはずです。恐らく、他家の獣変身の数を気にしていると思います。特に竜家でしょう。竜が出て来るのを待っていると思います。効くと分かれば直ぐにでも攻めて来るはずです」
 話をしている間に悲鳴が響いた。石が飛んできたのだ。一つの石で二人、三人と身体を突き抜ける。ただの石と思うだろうが、獣機の中に石を高速で飛ばす仕掛けがしてあるのだろう。恐らく、遠心力だと思える。
「都市に戻るぞ。急げ」
 羊の長老の声で退却の太鼓を鳴らした。
 命令を出して無いが、長老の気持ちを感じ取り、羊家がしんがりを努めた。矢盾は役を立たず、三万の内の半数の命が消えた。三家の全てが都市に入っても攻撃は止まず、城壁や建物が次々と壊される。その都市のある一室で悲鳴以外の声が響いていた。
「猪と馬と犬の戦車と、兵の殆どが半変身獣でした。普段のままの者では太刀打ち出来ないでしょう。まだ現れていないが、完全の変獣と、鳥家と虹家の飛行獣機と猿家の歩兵獣機が現れたら終わりです」
「そう、軍長が話をしてくれた事ですが、撃退は無理だ。出来る事は講和か都市を捨てるかです。それも、六家の完全の変身獣が居て、逃げる作戦だけが、考えられる程度だ」
 羊家の長老が話し掛けると、五種族の軍長が獣の数を即答した。何かが起きた場合は羊家に委ねる。信じて従えと言付けされていた。
「ありがとう。鼠家が十五。牛家が十。虎家が十。兎家が十。竜家が四頭か、それで、あの石弾に耐えられるか?」
 そう羊家の長老が問い掛けた。
「一、二発なら大丈夫と思うが、それ以上は変身が解ける。だが、竜家の獣機なら耐えられると思うが、新都に取りに行ければ」
 思案している時だ。新たな悲鳴と振動を感じられた。そして、一人の男が現れた。
「虹家と鳥家の獣機が現れました」
「来たか」
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垣根 新
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自己紹介:
物語を書いて五年になりましたが、私は「左手の赤い感覚器官(赤い糸)と「蜉蝣(カゲロウ)の羽(背中にある(羽衣)の 夢の物語が完成するまで書き続ける気持ちです。
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