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四つの物語を載せます
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第十七章
「ただいま」
「真様、お帰りなさいませ」
「土姫さんに頼んでいた物が出来上がりましたよ」
「うぁわあああ、早く見たいです」
 日姫は満面の笑みを浮かべた。着物が嬉しいのか、真と一週間ぶりに会えた喜びか判断が出来ないが、恐らく、着物よりも真と会えた喜びと思えた。
「綺麗ねぇ」
 真は、包みを、日姫に手渡した。
「そうだね」
「ねえ、真様。着た姿を見てみたい?」
「うん、見てみたい」
「そう、そうなの、なら見せてあげるわ」
 着物を抱え、自分の部屋に向った。そして、嬉しいのか恥ずかしいのか複雑な笑みを浮かべて現れた。それでも、俯いているのだから恥ずかしいのだろう。その様子のまま、真の言葉を待っていた。
「綺麗だ。日姫さん、本当に良く似合います。綺麗ですよ」
「そう、えへへ、今日一日着ていようかな」
「うんうん」
「ねね」
「日姫さん、なんです?」
「朝食は何が食べたい?」
「ご飯は炊けている?」
「まだ」
「そう」
「なら、パンはある?」
「無いと思う。買いに行ってないし」
「そう」
「ねね」
「何?」
「買い物に行こうかぁ。この着物で外を歩きたいし」
「そう、日姫はパンが食べたいの?」
「好きな物を買っていいよ」
「そう、なら買い物に行こうかぁ」
「行こう、行こう、私はねぇ。着物にあう履物も買おうかなぁ」
「そう、それがいいねぇ」
「でしょう」
「うん、行こう。あっ、そうだぁ。ご飯を炊いてから行こうか」
「うん、そうねぇ。帰って直ぐ食べたいと思うかもねぇ」
「なら、少し待っていて」
「うんうん」
 そして、二人は館から出て、街に向った。まあ、どのような街の作りか分からないだろうが、江戸時代の街並みと考えてくれたら分かり安いだろう。それでも、違う点があるが、真が住む館を中心に商店などがあり、それを囲むように農地がある。そして、住宅と警察と同じ役割の者。一番外側には軍組織隊が構えていた。勿論、館には、七人の女性と真だけではない。近衛隊が居るが、大勢の人々と街並みではこのような感じだ。警備の体制は甘いと思うだろうが、そうではない。外側に行けば行くほどに、監視が厳しくなるのだ。それは当然だろう。宇宙を飛ぶ船、いや、箱舟なのだ。精密機械や生命維持装置などがあるのだから変人などが、普通では考えらない思考で装置を狂わそうと考える者を近づけないように人々の配置を考えたのだ。
「日姫さん。先に履物を買いましょうかぁ」
「うん」
 真と日姫は、館から出てきた。七人の姫が館から出る時は、監視塔や監視部屋から顔を出して人物を確認する程度なのだが、真が出る場合は最低の安全を確かめ、簡単な礼をするのが普通だった。まあ、礼をするという事は安全だと意思表示でもある。その様子を真と日姫は視線を向けるだけで、普通に会話をしながら館から出て街に入って行った。
「ねね、この靴なんて可愛いわね」
「でも、着物なのだし和風が良いと思うよ」
「そうよね」
 街の人々は、真や日姫に気を使う事はない。幼い頃からの知り合いなのだ。友人のように話し掛ける人も居れば、無視すると言うのも変だが興味が無い人もいるのだ。中には、気が付かないと言うか、真と七人の姫を知らない人もいる。その光景は普通の人と同じだ。
「なら、着物と同じような模様の履物にするわ」
「それが良いかもね」
「うん、今度は、朝食の買い物ね」
「日姫さん。朝だけでなくて、昼も夕食のご飯の分も買って行こうか」
「そうねぇ。そうしましょう」
「なら、大型のスーパーにでも行こう」
「うん、うん」
と、常に言うが、二人は、まだ、一度も大型店に行った事はない。日姫が、向う間に違う店屋で興味を感じて買ってしまうからだ。今回も同じようになりそうな雰囲気だった。
「真様、あれ、美味しそうねぇ」
「そうだね。買おうか」
「うん、うん」
 やはり同じになってしまった。大型店に向う間に両手で抱える程の買い物をしてしまったのだ。もしかすると、普通の人々も同じような事になるのだろうか、そのような考えで郊外に大型店があるのだろうか、まあ、歩きでなければ直ぐにでも大型店に行くだろうが、この箱舟には無い。運搬車などは、農地の近辺しかないのだ。商店などが並ぶ街は歩行しか許されていないのだった。このような訳だから意外と、真と日姫と同じような買い物の仕方なのかもしれない。そして、二人は楽しそうに館に帰るのだが、勿論、荷物を持つのは真の役目だ。
「可なりの量の食料を買ったね。一日では食べられないよ」
「いいわよ。一週間分でも、一ヶ月分でも、大丈夫よ。今日は、好きな物だけ食べましょう。残ったら残った時に考えればいいの」
「日姫さんが、そう言うなら好きな物だけ食べようか」
 真は、口では言うが、内心では、簡単に食べられるのは残すしかない。そう思っていた。
日姫が料理の腕が上手くない為に、簡単に食べられる物なら自分で調理すると思うからだ。その考えの通りにしないと、一週間後に部屋に戻って見たら全てが腐っているだろう。勿論だが、掃除をするのは真のはずだ。腐った物を見るのも触るのも嫌なのは、誰でも思うはずだ。それを回避しようと考えるのも普通なら誰でも考える事だ。さてさて、どのようにして好きな順位を、真が食べて欲しい順位にする事が出来るのだろうか。
「ねね、刺身を食べようか」
「え、朝から刺身を食べるの?」
「嫌なら焼いてステーキにして食べようか」
「生で食べる物を焼いても美味しいの?」
「生で食べるよりも美味しいよ」
「なら食べてみる」
「はい、マグロのステーキに決めるよ」
 真は、箱舟の主人と言うよりも、まるで、人質、いや、人質ならまだ、雑用などしなくても良いはず。婿養子だろうか、それでも、まだ良い方だ。使用人と思う方が的確だろう。それは、館の中での反応だが、一般人の間では、様々な事が言われているのだ。七人の姫にちやほやされて生活している。それならまだ良い。好き放題に我侭に暮らしている。とか、七人の姫と楽しい夜を過ごしているのに、子供が出来ないと言う事は種無しだろう。とまで言う人がいるのだ。まあ、誰でも、私生活と外では違うのだ。知らないのは当然だが、それを、買い物などで外に出た時に、真の耳に入っても、まだ、意味が分からないだろう。それでも、五年、いや、三年もしたら意味が分かるに違いないが、その時の真の気持ちを考えると可哀そうに思う。七人の女性も同じように様々の事を憶えるのだ。そして、女性らしく、真に優しく接するようになるのだろうか、そう思ってあげるしか真の救いはない。今、頭の中で考えを巡らせているのは、どのようにして食材を片付けるか、それだけだろう。その気持ちは、日姫には分かるはずがない。それを証明する様な一言を上げた。
「真様の料理を楽しみしていますね。私も、真様が驚く料理を作ってあげるわ。買い物をしているとね。店の主人が、特別の料理の方法と食材を教えてくれたの。だから、楽しみしていてね。美味しいらしいわよ」
 確かに、違う意味で、真は、驚きの声を上げそうになった。
「食材って、テーブルの上にある以外にも、まだ有るのですか?」
「そうよ。楽しみしていてね」
「お願いです。今見せて下さい」
 真の頭の中では、腐った食材、蛆などが這い回る様子が見えていた。それ程に恐怖を感じているのだった。
「もう、そんなに真剣な顔をして、楽しみを後に取っておく事が出来ないのね」
と、日姫は、笑い声を上げた。
「その食材は、どこにあるのですか、お願いですから見せて下さい」
「もう、仕方がないわねぇ」
「どこです?」
「私が買った。菓子と一緒の袋の中よ」
「えっ」
 真っ青な顔で袋を見つめた。日姫は、生の物でも氷を入れるように店の主人に頼むはずもないだろう。それなら、今でも食べられる状態なのか心配していた。そして、日姫は、袋をテーブルの上に載せると中の物を出した。
「シーフードスパゲティーを作ってあげるわ」
「えっ、嘘だろう」
(生の物だぁ。それも、スパゲティーだけでは、絶対に材料が余る。どうすれば良いのだ)
「嘘では無いわ。本当に作ってあげる」
「楽しみ・・・・・・・・ですね」
「でしょ」
「う・・・・・ん」
 真は、一週間後の事を考えると思案するしかなかった。大量の生の物の処分をだぁ。
「店の主人がね。美味しいから、好きな人に作ってみなさい。だって、もう、キャー」
「ああ、ねね、それよりも、シーフードバーベキューしない?」
 真は、思案していたが、何かの答えを考えだしたようだった。
「シーフードバーベキュー?」
「そうだよ。美味しいぞ」
「それって何?」
「友達や家族などで、外で様々な物を焼いて食べるらしいよ。本に書いてあったねぇ。まあ、二人でも美味しいと思うよ」
「そうだぁ。真様、六人の姫も呼ぼうかぁ」
「今日は、日姫様の日ですよ。良いのですか?」
「いいの、いいの。皆で食べると美味しいのでしょう?」
「美味しいはずだよ」
「なら、直ぐにでも呼びましょう」
 そう言うと、固定の電話機で六人の姫に簡単に伝えた。
「あのう・・・・」
 真は、電話での会話を聞いていた。だが、日姫の言葉では伝わるはずが無いように感じた。そして、代わりに電話に出ようとしたのだったが、遅かった。
「真様、皆は来るって、その時に何か持って来るそうよ」
「そう、楽しみですね」
(でも、何を持ってくるのだろう。想像も出来ない。不安だ)
 真は、口から出る声と、頭の中で考える思考とは別の事を言っていた。
「ねね、お腹が空いたわ。まだ、食べないの?」
「ああ、忘れていました。もう、出来ていますよ。食べましょうか」
「うんうん」
 二人は、隣の部屋にある。食卓に向った。そして、楽しい会話をしながら食事を食べていたが、その時、扉を叩く音が聞えてきた。日姫は、顔の表情からもはっきりと分かる嫌気を表して無視をしていたのだが、真は、その気持ちを感じ取って席を立った。
「真様。無視をしていいのよ。朝食の時に来るなんて失礼よ」
「でも、誰も、今の時間に朝食を食べているなんて分かるはず無いよ」
「それは、そうだけど・・・・・でも無視して食べましょう」
 次の更新は二月の予定です。
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物語を書いて五年になりましたが、私は「左手の赤い感覚器官(赤い糸)と「蜉蝣(カゲロウ)の羽(背中にある(羽衣)の 夢の物語が完成するまで書き続ける気持ちです。
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