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第十三章
「水姫様。真様をお連れしました」
と、火姫は、朝の十時になると水姫の部屋に向い。そして、用件だけを伝えた。
「まま真様。お待ちしていました」
と、水姫は、火姫に礼儀も返礼も返さず。扉を開けると真の手を取り部屋の中に招き入れた。そして、思い出したように、火姫に頭を下げた。
「火姫さん。ありがとうね」
 火姫は、水姫の言葉を聞き、無言で丁寧に礼儀を返すと、自室に向った。その向う途中に、部屋の中居るはずの水姫の大声が響き渡っていた。
「真様。私、一週間も待って居たの。早くぅ。早くゲームをしましょう」
 部屋の中では、水姫が真にすがる様に、壁に書いてあるダーツの的のような物に指を指していた。疲れたように真は頷いていた。恐らく真にとっては嫌な事でも始まるのだろう。
「又、週一回だけのゲームを始めましょう。ねね、やってくれますわよね」
「は、い」
 真は、疲れたように頷いた。よほど、嫌なのだろう。
「ねね、それで勝った人は、勿論、勝つ度に言う事を一つ聞くのでいいわよね」
「は・・・い」
「それでは、まず一回目、負けた方が昼食を作る。それでいいわよね」
「は・・・い」
「ダーツの的に赤い感覚器官で三回刺して、点数が多い方が勝ちよ。真様は、ダーツの矢ね。それでは、先に、私から先に行くわよ」
と、水姫は、左手の小指の赤い感覚器官を手の平と水平に伸ばした。そして、手の平をダーツの中心に合わせた。
「当たれ」
と、声を上げると同時に、赤い感覚器官が水平にダーツの的の中心に刺さった。
「やったわ。十点よ」
 それは当然だろう。赤い感覚器官は身体の一部だ。伸びる長さは決まっているが、手で物を掴む様な感じだ。それだから狙いは百パーセントだ。
「次は、真様よ。がんばれぇ」
「そうだね。当たるといいなぁ」
「大丈夫よ。しっかり狙えば当たるわよ」
 水姫は、簡単の様に言うが、自分と違い、真は、ダーツに付いている専用の矢だ。当たる確立は百パーセント勘と考えていいだろう。中心に当たる訳が無いのは分かるはずだ。それでも、笑みを浮かべて声援しているのは勝利の女神のつもりだろうか、いや、そうでは無いだろう。勝ちが決まっているからの余裕の笑みに間違いないはず。そして、真は、何度も中心に当たるように狙い。ダーツを投げた。勿論だが、外れた。
「あらら、残念ねぇ。八点だったわ。でも、三回の勝負だから次は当たるわよ」
「そうだね。次は当てるぞ」
「そうよ。そうよ。どうする。今度は、真様から投げますか?」
「そうだなぁ。先に投げてみるよ」
 真は又、真剣に狙い中心を狙い。二度目を投げた。だが・・・・・・。
「おおおお、凄いわね。又、八点だわ。今度、私が六点以下なら負けるわ。怖いわ。どうしましょう。怖くて手が震えてきたわ」
「がんばれ、大丈夫だって深呼吸して落ち着いてから投げた方がいいよ」
 真は、本心なのだろうか、赤い感覚器官は手が震えようがまったく逆の方向を向いて伸ばしても頭で思った狙いの場所に曲がって当たるのだ。それは、分かっているのだろうか、いや、感覚器官が無い為に判らないだろう。震える手を見て真剣に祈ってあげていた。だが、水姫は、曲がった性格なのだろうか、真の練習の為なのだろうか、同点が何度も続いた。その回数は、二人は分からないだろう。それでも、一時間も同点の争いが続き。食事の用意をするぎりぎりの時間。十一時に決着が付いた。勿論、水姫が勝ったのだ。
「うぁわああああ。中心に当たりましたわ。やったわ。私の勝ちですねぇ」
(真様。ごめんね。私は、というか女性はね。男性で全ての人生は決まってしまうの。運も、力も無ければ駄目なのよ。それに、優しいだけでも駄目なの。家事も何でも出来ないと駄目だと思うの。だから、私は、試しながら遊んでいるのよ。ゲームでも戦いの役に立つはずだし練習にもなるわ。だから、ごめんね。私が勝ってしまったわ。ああ、でも、私が楽をしたいからでは無いの。だって、真様は、赤い感覚器官が無いし、何かの武器の練習をしないと駄目だと思うわ。自分を守る事も戦う事も出来る。それで、私も真剣に相手をしているの。がんばってくださいね)
「負けたね。それで、水姫さんは、何が食べたいのかな?」
「オムライスが食べたいわ。綺麗な半熟にして下さいね」
「先週は失敗したね。大丈夫だよ。今度は半熟にするからね」
「うわぁ。楽しみですわ。でも、真様。私、先に、サラダから食べたいわ。それから、スープねぇ。それで、出来上がるまでニ品を食べながら待っているわ」
 水姫は、注文を言った。真が困った顔が見えないのだろうか、満面の笑みを浮かべた。
「そうかぁ。いいですよ」
「ありがとう」
 水姫は、真が汗を流しながら作っていると言うのに、「サラダを早く頂戴」「スープはまだなの?」など注文を付ける。やっとメインのオムライスが出来上がると、食後の紅茶が欲しいと駄々をこめる。仕方なく自分の食事を中断して用意すると、今度は「早く食べて終えてゲームをしましょう」と言い出すのだった。
「早く、早く」
「はい、うん、直ぐ食べ終わるからね」
 真は、サラダも、スープもなく、オムライスを紅茶で流し込むように食べ終えた。そして、真が片付けるのを見ながら次の勝負の約束事を口に出して考えていた。
「そうだぁ。今度、負けた人は、部屋の掃除をするって事にしませんか?」
「水姫さんが、それを希望するなら・・・・・」
「なら、決まりね」
 水姫は、真が悩んでいる姿など構わないで勝手に決めてしまった。勿論、また、真が負けて掃除をする事になり、次の勝負は、洗濯、肩を揉むなど様々な事を勝負する。そして、負けたからと言う理由でやらせた。それが、夕方が過ぎても続くのだ。勿論、夕食の食事も湯浴みの用意から寝室の寝具の用意まで忘れるはずもなく。極めつけは、明日の朝食と七時に起床するから起こしてくれと言い放ったのだった。そして、真は用件をすませ湯浴みから床に入る時は、朝の三時になっていた。直ぐに熟睡できたが、朝食の用意の為に仮眠のような睡眠を取り、約束の朝食を用意してから起こしに向った。
「水姫さん。時間だよ。起きてくださいね」
と、扉越しから言うが、それで起きるようなら起こしてくれなど言うはずもなかった。ドキドキしながら扉を開けて中に入ってきた。ドキとするような寝相の悪さに驚きと言うか微かな喜びを感じながら、水姫のオデコを叩いた。
「ううっう、もう朝なの?」
「七時は過ぎたよ」
「着替えて直ぐ行く。真様の用意は出来ているの?」
「用意?」
「エプロン姿のままでしょう。早く着替えて」
「えっ」
「木姫から言われているのを忘れていたわ。必ず七時半には部屋に連れてきてって言われているのよ」
「えっ」
「だがら、早くしてね。私が着替え終わる前には、部屋から出られる用意をしてよ」
 真は、下着の乱れなど忘れる程に急いで着替えた。それと同時に部屋から水姫が出てきて一言だけ呟いた。
「納豆にはネギが入ってないのね。来週はちゃんと入れてね」
「えっ」
「それでは、また、来週の勝負を楽しみしているわ」
「あっ」
 信じられない事を言うと、急いでも木姫の部屋に向うのだった。
 最下部の十四章をクリックしてください。

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自己紹介:
物語を書いて五年になりましたが、私は「左手の赤い感覚器官(赤い糸)と「蜉蝣(カゲロウ)の羽(背中にある(羽衣)の 夢の物語が完成するまで書き続ける気持ちです。
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