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第十七章
「ただいま」
「真様、お帰りなさいませ」
「土姫さんに頼んでいた物が出来上がりましたよ」
「うぁわあああ、早く見たいです」
 日姫は満面の笑みを浮かべた。着物が嬉しいのか、真と一週間ぶりに会えた喜びか判断が出来ないが、恐らく、着物よりも真と会えた喜びと思えた。
「綺麗ねぇ」
 真は、包みを、日姫に手渡した。
「そうだね」
「ねえ、真様。着た姿を見てみたい?」
「うん、見てみたい」
「そう、そうなの、なら見せてあげるわ」
 着物を抱え、自分の部屋に向った。そして、嬉しいのか恥ずかしいのか複雑な笑みを浮かべて現れた。それでも、俯いているのだから恥ずかしいのだろう。その様子のまま、真の言葉を待っていた。
「綺麗だ。日姫さん、本当に良く似合います。綺麗ですよ」
「そう、えへへ、今日一日着ていようかな」
「うんうん」
「ねね」
「日姫さん、なんです?」
「朝食は何が食べたい?」
「ご飯は炊けている?」
「まだ」
「そう」
「なら、パンはある?」
「無いと思う。買いに行ってないし」
「そう」
「ねね」
「何?」
「買い物に行こうかぁ。この着物で外を歩きたいし」
「そう、日姫はパンが食べたいの?」
「好きな物を買っていいよ」
「そう、なら買い物に行こうかぁ」
「行こう、行こう、私はねぇ。着物にあう履物も買おうかなぁ」
「そう、それがいいねぇ」
「でしょう」
「うん、行こう。あっ、そうだぁ。ご飯を炊いてから行こうか」
「うん、そうねぇ。帰って直ぐ食べたいと思うかもねぇ」
「なら、少し待っていて」
「うんうん」
 そして、二人は館から出て、街に向った。まあ、どのような街の作りか分からないだろうが、江戸時代の街並みと考えてくれたら分かり安いだろう。それでも、違う点があるが、真が住む館を中心に商店などがあり、それを囲むように農地がある。そして、住宅と警察と同じ役割の者。一番外側には軍組織隊が構えていた。勿論、館には、七人の女性と真だけではない。近衛隊が居るが、大勢の人々と街並みではこのような感じだ。警備の体制は甘いと思うだろうが、そうではない。外側に行けば行くほどに、監視が厳しくなるのだ。それは当然だろう。宇宙を飛ぶ船、いや、箱舟なのだ。精密機械や生命維持装置などがあるのだから変人などが、普通では考えらない思考で装置を狂わそうと考える者を近づけないように人々の配置を考えたのだ。
「日姫さん。先に履物を買いましょうかぁ」
「うん」
 真と日姫は、館から出てきた。七人の姫が館から出る時は、監視塔や監視部屋から顔を出して人物を確認する程度なのだが、真が出る場合は最低の安全を確かめ、簡単な礼をするのが普通だった。まあ、礼をするという事は安全だと意思表示でもある。その様子を真と日姫は視線を向けるだけで、普通に会話をしながら館から出て街に入って行った。
「ねね、この靴なんて可愛いわね」
「でも、着物なのだし和風が良いと思うよ」
「そうよね」
 街の人々は、真や日姫に気を使う事はない。幼い頃からの知り合いなのだ。友人のように話し掛ける人も居れば、無視すると言うのも変だが興味が無い人もいるのだ。中には、気が付かないと言うか、真と七人の姫を知らない人もいる。その光景は普通の人と同じだ。
「なら、着物と同じような模様の履物にするわ」
「それが良いかもね」
「うん、今度は、朝食の買い物ね」
「日姫さん。朝だけでなくて、昼も夕食のご飯の分も買って行こうか」
「そうねぇ。そうしましょう」
「なら、大型のスーパーにでも行こう」
「うん、うん」
と、常に言うが、二人は、まだ、一度も大型店に行った事はない。日姫が、向う間に違う店屋で興味を感じて買ってしまうからだ。今回も同じようになりそうな雰囲気だった。
「真様、あれ、美味しそうねぇ」
「そうだね。買おうか」
「うん、うん」
 やはり同じになってしまった。大型店に向う間に両手で抱える程の買い物をしてしまったのだ。もしかすると、普通の人々も同じような事になるのだろうか、そのような考えで郊外に大型店があるのだろうか、まあ、歩きでなければ直ぐにでも大型店に行くだろうが、この箱舟には無い。運搬車などは、農地の近辺しかないのだ。商店などが並ぶ街は歩行しか許されていないのだった。このような訳だから意外と、真と日姫と同じような買い物の仕方なのかもしれない。そして、二人は楽しそうに館に帰るのだが、勿論、荷物を持つのは真の役目だ。
「可なりの量の食料を買ったね。一日では食べられないよ」
「いいわよ。一週間分でも、一ヶ月分でも、大丈夫よ。今日は、好きな物だけ食べましょう。残ったら残った時に考えればいいの」
「日姫さんが、そう言うなら好きな物だけ食べようか」
 真は、口では言うが、内心では、簡単に食べられるのは残すしかない。そう思っていた。
日姫が料理の腕が上手くない為に、簡単に食べられる物なら自分で調理すると思うからだ。その考えの通りにしないと、一週間後に部屋に戻って見たら全てが腐っているだろう。勿論だが、掃除をするのは真のはずだ。腐った物を見るのも触るのも嫌なのは、誰でも思うはずだ。それを回避しようと考えるのも普通なら誰でも考える事だ。さてさて、どのようにして好きな順位を、真が食べて欲しい順位にする事が出来るのだろうか。
「ねね、刺身を食べようか」
「え、朝から刺身を食べるの?」
「嫌なら焼いてステーキにして食べようか」
「生で食べる物を焼いても美味しいの?」
「生で食べるよりも美味しいよ」
「なら食べてみる」
「はい、マグロのステーキに決めるよ」
 真は、箱舟の主人と言うよりも、まるで、人質、いや、人質ならまだ、雑用などしなくても良いはず。婿養子だろうか、それでも、まだ良い方だ。使用人と思う方が的確だろう。それは、館の中での反応だが、一般人の間では、様々な事が言われているのだ。七人の姫にちやほやされて生活している。それならまだ良い。好き放題に我侭に暮らしている。とか、七人の姫と楽しい夜を過ごしているのに、子供が出来ないと言う事は種無しだろう。とまで言う人がいるのだ。まあ、誰でも、私生活と外では違うのだ。知らないのは当然だが、それを、買い物などで外に出た時に、真の耳に入っても、まだ、意味が分からないだろう。それでも、五年、いや、三年もしたら意味が分かるに違いないが、その時の真の気持ちを考えると可哀そうに思う。七人の女性も同じように様々の事を憶えるのだ。そして、女性らしく、真に優しく接するようになるのだろうか、そう思ってあげるしか真の救いはない。今、頭の中で考えを巡らせているのは、どのようにして食材を片付けるか、それだけだろう。その気持ちは、日姫には分かるはずがない。それを証明する様な一言を上げた。
「真様の料理を楽しみしていますね。私も、真様が驚く料理を作ってあげるわ。買い物をしているとね。店の主人が、特別の料理の方法と食材を教えてくれたの。だから、楽しみしていてね。美味しいらしいわよ」
 確かに、違う意味で、真は、驚きの声を上げそうになった。
「食材って、テーブルの上にある以外にも、まだ有るのですか?」
「そうよ。楽しみしていてね」
「お願いです。今見せて下さい」
 真の頭の中では、腐った食材、蛆などが這い回る様子が見えていた。それ程に恐怖を感じているのだった。
「もう、そんなに真剣な顔をして、楽しみを後に取っておく事が出来ないのね」
と、日姫は、笑い声を上げた。
「その食材は、どこにあるのですか、お願いですから見せて下さい」
「もう、仕方がないわねぇ」
「どこです?」
「私が買った。菓子と一緒の袋の中よ」
「えっ」
 真っ青な顔で袋を見つめた。日姫は、生の物でも氷を入れるように店の主人に頼むはずもないだろう。それなら、今でも食べられる状態なのか心配していた。そして、日姫は、袋をテーブルの上に載せると中の物を出した。
「シーフードスパゲティーを作ってあげるわ」
「えっ、嘘だろう」
(生の物だぁ。それも、スパゲティーだけでは、絶対に材料が余る。どうすれば良いのだ)
「嘘では無いわ。本当に作ってあげる」
「楽しみ・・・・・・・・ですね」
「でしょ」
「う・・・・・ん」
 真は、一週間後の事を考えると思案するしかなかった。大量の生の物の処分をだぁ。
「店の主人がね。美味しいから、好きな人に作ってみなさい。だって、もう、キャー」
「ああ、ねね、それよりも、シーフードバーベキューしない?」
 真は、思案していたが、何かの答えを考えだしたようだった。
「シーフードバーベキュー?」
「そうだよ。美味しいぞ」
「それって何?」
「友達や家族などで、外で様々な物を焼いて食べるらしいよ。本に書いてあったねぇ。まあ、二人でも美味しいと思うよ」
「そうだぁ。真様、六人の姫も呼ぼうかぁ」
「今日は、日姫様の日ですよ。良いのですか?」
「いいの、いいの。皆で食べると美味しいのでしょう?」
「美味しいはずだよ」
「なら、直ぐにでも呼びましょう」
 そう言うと、固定の電話機で六人の姫に簡単に伝えた。
「あのう・・・・」
 真は、電話での会話を聞いていた。だが、日姫の言葉では伝わるはずが無いように感じた。そして、代わりに電話に出ようとしたのだったが、遅かった。
「真様、皆は来るって、その時に何か持って来るそうよ」
「そう、楽しみですね」
(でも、何を持ってくるのだろう。想像も出来ない。不安だ)
 真は、口から出る声と、頭の中で考える思考とは別の事を言っていた。
「ねね、お腹が空いたわ。まだ、食べないの?」
「ああ、忘れていました。もう、出来ていますよ。食べましょうか」
「うんうん」
 二人は、隣の部屋にある。食卓に向った。そして、楽しい会話をしながら食事を食べていたが、その時、扉を叩く音が聞えてきた。日姫は、顔の表情からもはっきりと分かる嫌気を表して無視をしていたのだが、真は、その気持ちを感じ取って席を立った。
「真様。無視をしていいのよ。朝食の時に来るなんて失礼よ」
「でも、誰も、今の時間に朝食を食べているなんて分かるはず無いよ」
「それは、そうだけど・・・・・でも無視して食べましょう」
 次の更新は二月の予定です。

第十六章
「金姫様。おはようございます。朝食の儀にお連れ頂ありがとうございます。後は、私が引き継ぎします。安心してお帰りください」
「・・・・・・・・・」
 真は挨拶も出来ない程に苦しい気持ちを感じていた。それなのに、同じように酒を飲んだはずなのに、金姫は、何事なかったように清清しい笑みを浮かべているのだった。
「真様。それでは、部屋に入りましょう」
「うっ・・・・・・・・・・・・」
「吐きそうなの?」
「うっ・・・・・・」
 何度も首を上下に動かしていた。声を出すと、苦い物が出そうな状況なのだろう。
「そうなのねぇ。何時もの通りに床の用意は出来てありますわ」
「・・・・・・・・」
 そして、真は、土姫の肩を借りて部屋に入った。すると、居間のはずなのだが床の用意がされているのに気が付き、その床にだけに興味を感じているように視線を向けていた。
「寛いでくださいね。朝食は体が落ち着いてからでも、一緒に食べましょうね」
「・・・・・」
「いいの、返事をしようと思わなくてもね。何時もの事ですもの」
 子供が病気になった時のように優しく床に寝かせ、真の体に布団をかけた。そして、真は、体から酒を抜け出るのを待つかのように死んだように眠った。
「はっぁあ、このような状態になるって分かっているのに、何故、お酒を飲むのでしょうね。私も一度だけ飲んだ事ありますけど美味しいと思わないのに、気持ちが分からないわ」
 そう呟くと、土姫は、不思議そうに真の顔を見つめた。
「あっ、忘れていたわ」
 真の苦しい表情を見て、吐き気を感じてからでは遅いと思ったのだろう。洗面器を用意しようと立ち上がり、枕の近くに置いた。そして、暫く真の顔を見ていたが、何かを思い出したかのように立ち上がった。すると、真に関係ないはずなのだが、反物を手に持ち現れた。そして、真の床の隣に座り、反物や型紙を広げた。それは、真に着させる物を作るのかと思ったが違っていた。どう見ても女性の物としか思えなかったからだ。
「うっうううう」
 真は吐き気を催した。その姿を見ると直ぐに、土姫は、真の体を起こすと、洗面器に顔を近づけた。想像した通りに洗面器に吐き出した。もし、真が起きていたのなら済まないと一言だけでも謝罪しただろうが、酒の成分が体中に浸透している為だろう。呻き声しか口から出る事はなかった。そして、また、何事もなかったように反物に興味を向けたのだ。
「日姫様の着物を先に作った方がいいわねぇ。そして、真様が、日姫様の所に持って行けば少しは気持ちが和らぐでしょうしねぇ」
 土姫が着物を作る事に不思議に思うだろう。館では好きな事だけをして生活が出来るはずなのに、何故、職人のようにするのかと、それは、別に仕事でしているのではない。土姫は、着物などを作るのが好きだった。それで、一度だけ、真から日姫の誕生日のプレゼントにしたいから作って欲しいと言われて、作って上げたのが始まりだった。その着物がよほど嬉しかったのだろう。五人の姫にも見せて心底から土姫を褒めたのだ。それから、六人の姫の全ての着物を作るのではないが、市販していない物だから作って欲しいと頼まれるのだった。それでも、一人で作るのだし時間は掛かる。それでも良いからと頼まれれば嬉しい。土姫は嫌いでないので、暇があれば、真と話しながらでも、今のように看病しながらでも、何時でも、真の側で何かを作っているのだ。
「うっうう、気持ちが悪い」
「おお真様。もう起きても大丈夫なの?」
 真が起きたのは、昼の十二時を過ぎた頃だった。勿論だが、土姫は、朝食を食べてはいない。一緒に真と食べたいと思っていたからだ。
「まだ、少し頭が痛いし、気持ちが悪いけど大丈夫だよ」
「そう、なら、まだ食事はいらないわねぇ」
「そうだね。今食べると戻しそうだしね」
「そうなの」
「あっ、土姫様。私に気を使わずに昼食なら食べてください」
 真は、土姫が空腹を我慢していると思った。
「良いの。私もまだ食べたくないわ。真様が寝ている間に少し食べたの。だから、真様が、お腹が空いたら言ってくださいね。その時は、一緒に食べましょうね」
 土姫は、偽りを言っていた。
「そうだね。一緒に食べよう。楽しみだよ」
「まだ、気持ち悪いの。なら薬でも持ってきましょうか?」
「うん。ありがとう。飲んでみるよ」
 土姫が持ってきてくれた薬を飲んだ後だ。半日も寝ていた為に、また、寝る気持ちがあるはずも無く。隣で、楽しそうな姿で着物を作る。土姫の姿を見ていた。
「本当に好きなのだね」
「えっ、なんですのぉ?」
「着物を作るのが楽しいのだね。と聞いたのですよ」
「ああ、楽しいわよ。でも、着ている姿を見るのが、一番嬉しいわね」
「そうかぁ。そうだよね。そう思うよ」
「分かるの?」
「分かる。分かる」
「そうだわ。真様にも、何か作ってあげますわ」
「男性の物でも作れるのですか?」
「うんうん、作れますわよ」
「楽しみしているね」
 そして、二人は、思い出や冗談などでの会話で盛り上がり、土姫の腹の虫が鳴るのを聞いた後は、笑いながら食事を始めた。
「そうそう、湯浴みの用意をしてきますわ。今日こそ、真様の背中を流してあげますわ」
 冗談なのか本気なのか分からないが、笑いながら問い掛けた。
「ええ、いいよ。一人で洗えるよ」
「はっぁ、そうですのぉ」
 心底から落胆したように呟いた。真には伝わらないが、それでも、土姫以外の者も真に気に入られるように自分の思いを、嫌、普段は隠す自分の殻の中の思いを全て出して、思いを遂げようとしているのだった。まあ、真も、七人の女性も複雑な歳なのだ。子供と言えば子供だろうし、大人と言えば大人だ。後、数年もすれば自然と結ばれるだろうが、だが、そうなる前に、地球に着くと同時に、真は亡くなってしまうのだ。それは、まだ先の話しだ。今までの部屋での生活と同じように湯浴みを済ました後は、土姫が着物を作る姿を見ながら楽しい会話で盛り上がった。そして、土姫は不思議そうに、真に視線を向けながら、別々の部屋に向かい睡眠を取るのだった。
「真様、朝ですよ。早く支度してください。日姫の所に行くのでしょう」
「もう、そんな時間ですか」
「そうなのですよ。それと、行く時は、日姫様の着物が出来上がっていますから持って行ってくださいね。喜ぶと思いますよ」
「ありがとう。来週は酒を飲んできませんので、楽しい日にしましょうね」
「はい、楽しみしています」
 毎週、同じ事を言ってお別れをするのだが、それは、それで、楽しみで一週間を待つのだった。土姫は、真のお供も、お連れする事もしなかった。内心ではしたいのかも知れないが、日姫の気持ちを考えて、真、一人で日姫の所に行かせるのだった。
 
最下部の十七章をクリックしてください。

第十五章
「真様、おはようございます」
「ああ、おはよう。今何時かなぁ」
 真は、御経の声で、朝方近くまで眠れずに、やっと眠れたと思った時に起こされたのだ。
「朝の七時になりました」
「ええ、もう、七時になったの?」
「そうですよ。そろそろ支度しなくては、八時半までに、金姫の部屋に間に合いませんよ」
 木姫は、真に近寄って支度の手伝いはしないが、声を上げて急かすのだった。そして、ぎりぎりの時間で、金姫の扉を叩く事が出来た。
「木姫と言います。真様を、朝食の儀にお連れしました」
「は~い、今出ますわ」
 眠そうな色っぽい声を上げながら扉を開けた。
「真様、おはようございます」
「金姫さん。おはよう」
 真も、金姫と同じように眠そうな声だが、本当に眠いのだろう。
「木姫。お連れ頂ありがとう御座います。後は、私にお任せくださいませ」
「はい、失礼します」
と、木姫は、そう答え自室に向った。そして、直ぐに床に入り昼近くまで寝るのだろうが、真は、眠気を我慢しながら部屋に入り、金姫の朝食を食べる事になる。
「真様、何時もの様に眠いのですね。木姫の部屋では疲れる程に遊んできたのかしら」
 そう真に呟きながら真の隣に座り、金姫の手で、真に食事を食べさせていた。隣と不思議に思うだろうが、眠気で隣に居ると気が付いていないし、金姫の部屋だけが和風のように畳敷きだった為に、真を支えるように食べさせていたのだった。
「えっ、何か言いましたかぁ」
「はっあぁ、私の料理の味を聞いたのですよ」
 真は、瞼をつぶると眠り、そして、寝てしまったと思うと起きる。それを繰り返していた。そのような状態では、話など耳に入るはずもなく、それでも、口の中に入る物を体の中に入れていた。勿論だが、味など分かるはずも無かった。
「美味しいですよ」
と、呟くと、また、一瞬だが寝てしまうのだ。
「ふっ~」
「うわぁ」
 真を起こそうとしたのだろう。真の耳に息を吹きかけた。
「真様って面白い人ねぇ」
「そうかなぁ、ぐ~ぅ」
「また、眠ってしまうのねぇ。朝食だけは食べて下さい。食べて下されば、何時ものように膝枕をしてあげますわよ」
「あっ食事は、美味しいよ」
 もう、真は、眠りたいとしか考えられないのだろう。金姫と真の会話はかみ合わなかった。それでも、金姫は、真の体を心配して無理やりのように全てを食べさせた。
「良い子ですね。朝食は全て食べてくれましたわ。それでは、もう寝てもいいわよ」
 そう真に話を掛けると、真の頭を、自分の膝の上に乗せて頭を撫でていた。毎週同じ状態なので、金姫は、勿論、真が来る前に朝食は済ませていた。
「どのような夢なのでしょうねぇ。少しは、私の夢も見ているのかぁ」
 独り言を呟きながら寝顔を愛しそうに見つめていた。そして、何時ものように二時過ぎまで眠るのだった。もう習慣みたいな感じで、金姫は、膝枕をしていても疲れる事はなかった。そして、真は、気が付くと驚きの声を上げて目を覚ますのだった。
「うぁあああ、ごめんなさい」
「気にしなくてもいいのに、毎週同じようにして寝るのに、起きると恥ずかしがるのね」
「いや・・・・・その・・・」
「真様は、寝ている時は、スカートの中に手を入れたわ。それだけでなくて、顔を入れようとするのに、あっ、それと、女性の象徴を触ろうともしたわねぇ」
「嘘だぁああああ」
「えっ、いいのよ。私達七人は、真様の子を生む為に居るのよ」
「その・・・・あ・・・の」
 顔中を真っ赤にして言葉を詰まらした。
「まさかエッチが嫌いと言う事は無いわよね」
「その・・・・・あっ、金姫さん、疲れたでしょう。もう膝枕はいいよ。ありがとうねぇ」
「何時もの事ですもの大丈夫ですわよ」
「今度来る時は寝ないからね」
「はいはい。それも、何時も言う言葉ねぇ」
「う・・・・・むぅ」
「それよりも、お腹は空かないの?」
「少し、空いたかな」
「そうでしょう。何が食べたい物のある?」
「なら、紅茶とパンが食べたいです」
「それも、何時もと同じねぇ。私も、木姫さん見たいに作れないけど、それでも、料理には少しは自信あるのよ。言ってくれたら何でも作ってあげるわ」
「でも、紅茶がいい。それに、牛乳パンだったけぇ。牛乳をたっぷりパンに吸い込まして焼くの。あれ、美味しいよ」
「まあ、好きなら良いけどね。作ってあげましょう」
「ありがとう」
「食べた後は、何時ものを飲むのよね」
「だから、来るたびに言っているでしょう。酒は駄目だって、私達は未成年だよ」
「真様、子供が生める体なら大人なのよ。だからいいの」
「むむむ」
「真様、でも、来るたびに飲むでしょう」
「それは、知らない間に酔っているからだよ。たぶん、金姫さんが飲むお酒の臭いでだよ。酔うのはね。だから、今日は、飲まないでくださいよ」
「はい、はい」
(真様、紅茶と、パンが好きで食べるって事はね。お酒が好きって意味なのよ。度数の高いお酒が入っているからねぇ。だから、また、一緒に飲みましょうね)
「笑ってごまかす気持ちでしょう」
 金姫は、笑み浮かべて内心の気持ちを隠して、何時ものように酒を入れるのだろう。
「美味しいのを作ってあげるわ。待っていてね」
「うん」
 真は、十分、いや、十五分くらいだろうか、待っていると、金姫が料理を持って、真が待っている部屋に来た。
「出来たわよ」
 酒がたっぷりと入った。紅茶と牛乳パンを持ってきた。
「金姫の、紅茶は得に美味しいよ。濃くのある良い味だね」
「そうなの、ありがとう」
(それは、酒が好きって意味よ。真様)
「美味しい、うんうん、本当に美味しい」
 真は、一口食べる毎に、顔を赤くなり呂律が回らなくなってきた。全てを食べ終えると、目が潤み、夢を見ているように感じられた。
「真様、お酒を飲みますかぁ」
「うん」
「そう、なら一緒に飲みましょう。何にしようかなぁ」
「まずは、ビールだろう」
 真は別人とまでは変わっていないが、普段の表情とは違っていた。それは、完全に酔っていると誰もがわかる様子だった。
「それを、待っていたの。さ~乾杯しましょう」
「乾杯」
「美味しいわねぇ」
「うめぇ」
「今日も、睡眠不足だったの?」
「昨日は、深夜から朝まで御経を大声で読んでいて眠れなかったよ。水曜は、一日働かされたしなぁ。火曜は、何か気持ちが疲れたし、月曜は、噛み付かれるし引っかかれるし、日曜は・・」
「あっ、それは、言わなくていいわよ。私も、あまり聞きたくないしね」
 金姫は、誰が聞いているか分からないと判断したのか、それとも、想像が付くのだろうか、いや、愚痴が聞きたくなかったのかもしれない。全ての曜日を言われたら自分も言われていると思うのが嫌だったのだろう。確かに、愚痴を言われて喜ぶ人は居ないはずだ。そして、また、酔いつぶれ膝枕で寝てしまった。今度は、朝まで起きないだろう。それも、嫌な顔をするのでなく、愛しそうに寝顔を見ていた。何時間が過ぎただろうか、金姫も寝てしまうのだった。それから、足が痺れを通り越し、痛みを感じて起きてみると・・・・。
「うぁああ、真様。起きてください。朝の七時になっています。支度をして直ぐに部屋を出ないと間に合いませんよ」
 土姫の部屋には、八時に向う事になっていたのだ。恐らく、ぎりぎりの時間だろう。それでも、一番慌てているのは、金姫だった。化粧などの身だしなみで、真よりも時間が掛かるからだろう。そして、身だしなみを整え終わって、真に視線を向けると、青白い顔をして座っていたのだ。勿論、寝起きのままで何もしていなかった。
「真様、何をしているのです。時間が無いのですよ」
 そう声を上げると、真を着せ替え人形のように身だしなみを整えて部屋を出た。
「土姫様。真様を朝食の儀にお連れしました。
 
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物語を書いて五年になりましたが、私は「左手の赤い感覚器官(赤い糸)と「蜉蝣(カゲロウ)の羽(背中にある(羽衣)の 夢の物語が完成するまで書き続ける気持ちです。
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