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第六章、カイ達が森に入る十五分前、
神社の前では、六つの薪が燃えていた。
「祭司様、甲羅をお持ちしました」
 白装束の巫女が階段を登り終えると声を掛けた。
「薪の中に収めなさい」
「畏まりました」
 巫女は納め終わると、周りにある篝火から一つの松明を手にすると、松明を薪に入れた。
 今と同じ事を、五分後とに巫女が現れ繰り返していた。
 祭司は七つ目の薪が盛大に燃えた事を確認すると、一番初めの薪に目を向けた。
「占いの結果を伝えます」
 そう、祭司は声を上げると、祭壇から長い金槌の様な物を手にした。そして、薪の元に近寄る。薪は燃え尽きて炭のように成っていた為に、甲羅が焼けてひび割れを見る事ができた。もっとハッキリ見ようとしたのだろう。手にした長い金槌のような物で甲羅を引きずり出した。
「一つ、吉とでました。神様が願いを聞いてくれるそうです」
 司祭は、甲羅を足元まで引き寄せ、筆で煤を掃うと言葉を告げた。
「そうか、願いを聞いてくれるか」
「はい、上様」
「二つ、凶と出ました。時間が大切。そう出ました」
「そうか、う~ん」
「三つ、吉と出ました。早く行動。そう出ました」
「わかった。早い方が良いのだな」
 上様と言われる者は、告げられた言葉を繋げ、答えを出した。
「四つ、吉と出ました。女性と子供。そう出ました」
「ほう」
「五つ、凶と出ました。女性が重要。そう出ました」
「う~ん」
「六つ、吉と出ました。命が大切。そう出ました。
「血を流すなと言うのか」
「占いには、そう出ています」
「それで、我が一族の運命はどうなる」
「きゃああああ」
 女性の悲鳴が響いた。
「なに、司祭、我々の他に誰かいるのか?」
「居るはずがないです」
「なら、占いに関係ある女性なのか?」
「それは、無いはずです」
「今、悲鳴を上げた女性を連れて来い」
「はっ」
 四人の武将は即座に立ち上がり森の中に向かった。
悲鳴は、江見の悲鳴だった。
 カイ、かかり、江見は、音を立てないように森の中を歩いていたが、突然、江見が悲鳴を上げた。どうしたのかと、江見を見ると胸に手を当てて苦しんでいた。
「大丈夫ですか」
 カイは、振り向き、江見に問い掛けた。
「痛みが治まったから大丈夫です」
「何があった」
 かかりが、江見の元に近寄った。
「分からないわ。突然に、胸に痛みを感じたの」
「わわわ、まずい、誰か来る」
「カイ、俺が囮になるから、江見さんを頼む」
「うっん」
 カイは逃げ腰で、返事と言うよりも呻き声のような声を上げた。
「向うだ。私はこのまま進む。お前らは散開して囲め」
「わかった。向うを頼む」
「居たぞ。向うに行った」
 森の中は、何人もの男の声で反響していた。何処から聞こえるのか、何人なのか分からない。それと同時に草や木々の擦れる音で、三人は益々恐怖を感じた。
「わわわ、こっちに来る。どうしよう」
 カイは、恐ろしさの余りに、江見の事を忘れていた。
「カイ様。立っていたら見付ってしまいますわ。早く、こっちへ」
「うわあああ」
 自分の名前を誰が言ったか、それも判断が出来なかった。自分の名前を言われた事で恐怖を抑える事ができず。江見を見捨てて逃げ出した。
「捕まえたぞ」
 カイが真っ先に捕まった。それも、そのはずだ。叫びながら走っていたからだ。
「女は、まだ居るぞ」
 カイを捕まえた男は、カイに当て身で眠らせ、又、捜索を始めた。
「ぎゃあああ」
 又、江見が悲鳴を上げた。その声は恐怖と言うよりも苦痛の響きに感じた。
「えみ~」
「これで、統べてのようだな」
「ぐっふ」
「キャー」
 かかりも江見も当て身を受け気絶した。後、三人を上様の下に連れ出した。
「先ほどの声は、この者か?」
「はっ、指示を」
「そうか」
「カイ?」
 村長は、息子の顔を見ると声を上げていた。
「知っているのか?」
「息子です。ですが、一族の為なら指示にしたがいます」
「心配するな、占いでは、殺す事も血を流す事もできない。縛っておけ」
「はっ」
「済みませんでした」
「気にするな、同じ一族だ」
「はっ」
「占いの続きを頼む」
「暫く、お待ち下さい。甲羅が大き過ぎるのです。焼き上がるのに時間が掛かります」
「そうか、待とう」
 上様の声が響いた後、静寂が訪れた。暫く薪を見続けると、薪の燃える音だろうか、それとも、甲羅の焼ける音だろうか、その音で静寂が破れた。
「パッキ」
「キャアー」
 破れた音と同時に悲鳴が響き渡った。それは、江見の声だった。江見は体中に痛みを感じて悲鳴を上げたのだ。それは、薪でなく、甲羅が焼けて、ひび割れた音と判断ができた。
「気が付いたようだな。そちは、何故この場に来たのだ」
「か、め、かめ、亀が」
「どうしたのだ」
「おい女、上様の問い掛けに答えろ」
 家臣の男は、江見に問い詰めようとしたが、上様の鋭い視線で受け、その場に留まった。
「あっ、良かった。私の亀で無いわ」
 江見は、祭司の足元にある六個の亀を見ると、一瞬の間だが我を忘れた。
「ん、亀が如何したのだ」
「お願いです。私の亀を返して下さい」
「村長よ。この者は何を言っているのだ」
「キャアー、うっうう。うっうう」
「何だと言うのだ。又、苦しみ出したぞ」
「お願いです」
 江見は、苦しみながら声を上げた。
「うっううう。痛たたぁ」
 カイとかかりは、江見の悲鳴で気が付いた。
「カイ、気が付いたか」
「父上、父上」
 カイは、泣きながら父に縋った。
「カイ様、カイ様からもお願いして下さい」
「俺は知らない。俺には関係ないぞ。許してくれよ。赤い糸が見える何って言ったのは嘘だったのだよ。ちょっとからかって見ようとしただけだ。かかりには勿体無い、いい女だと思って、つい、嘘を言ってしまった。許してくれ、ごめん。ごめんなさい」
「えっ、そんな」
 江見は顔を青ざめて、今直ぐにでも泣き出しそうな顔だ。だが、その気持ちは体の痛みと亀の甲羅の事で忘れられる事ができた。
「カイ、家に帰っていろ」
「はい、はい」
 即座にカイは走り出した。
「返してください。代わりの海亀を必ず用意するからお願いです」
 甲羅がひび割れる度に、悲鳴を上げた。かかりも縛られているが、江見と一緒に大声を上げて頼み続けた。火が段々と弱火になるが、二人の声は大きくなる。その姿に見兼ねたのだろう。
村長が、祭司の耳元で囁いた。
(上様を待たしておけない。これ以上、二人の様子を見たら占いに支障がくると感じるだろう。何か理由を言って、この場から、いや、占いが終わるまで時間を潰す事を言ってくれないか)
「わかった。そこまで言うなら代わりの亀を用意すれば渡そう」
「村長様、祭司様。ありがとう御座います。おれ、直ぐ獲ってくるから、江見さんは、この場で待っていて、心配しないで、いいからな。一緒に来られても邪魔になるからな」
「それは困るな。江見さん、その理由が分かるはず。あなたが何かを感じる海亀でなくては困ります。大事な占いに使うのです。何処にでもある海亀では困るからな」
 祭司だからだろう。占いの結果しだいでは、言いたくない事も言うのが仕事だからだろうか、先ほどから表情は変わらなかったが、二人がこの場を去った後、微かに表情が変わった。口元を微かに吊り上げた。恐らく上手くいったからだろう。それは笑みと思えた。
「最後の占いの結果は分からないのか?」
「済みません。最後の甲羅が間もなく焼き上がります」
「上様、三人の乱入の為に占いが中断されました。やり直しをお勧めします」
「構わない。益々、真実と感じる。普段なら、あの三人を切り捨て、占いのやり直しを考えただろう。だが、今回の占い事はやり直しが出来ないのだ。死ぬか生きるかだ」
「上様」
 祭司が、再度、占いのやり直しを勧めようとした。
「気にするな。あの三人の事も統べての出来事は、神が、私を試しているのだろう」
「分かりました。間もなく火が消えます。燻るまでお待ちください」
「そうか」
 上様は、深々と頷くと、真剣な表情で薪を見続けた。
  最下部の七章をクリックしてください。

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物語を書いて五年になりましたが、私は「左手の赤い感覚器官(赤い糸)と「蜉蝣(カゲロウ)の羽(背中にある(羽衣)の 夢の物語が完成するまで書き続ける気持ちです。
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