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第二部、結婚式まで十五日前、薫との運命の出会い。

 朝日が昇り、日の光が地上を明るくし始めた頃、一人の女性が平成の現代に現れた。場所は宮城県の仙台と言う所だ。その都市の外れ、何処にでもあるような森だった。
「ここは何処かしら、あっ、今度は間違えないようにしないとね」
 そう呟きながら目の前の太い木に両手を触れた。言葉の内容の今度。それは、酷い手違いで、江見が、この地に来た理由だった。でも、その話しは後で思い出すだろう。今は、薫の出会いだけが思い出されていた。そして、人工物がある方に向かった。森と道路しかない為に正確な町名は判断が出来ないが、何処にでもある田舎道だ。
「けほっ、けほ。まあー嫌だわ。戦の後のように土煙が凄いわね」
 その、人工物は道路しかない所。その両脇に広がる森の片側から、少女と言うよりも成人の女性が口を押さえながら現れた。姿は艶かしい着物姿で、髪型は長く腰まであり、後ろで束ねていた。そして、何かを探すように辺りを見回した。その人物は、江見だった。
「この方向のようですわね」
 江見は、時計を見るように左手を見た。と言うよりも小指を見た。小指には指輪なのだろうか、赤い糸が巻き付いているような形をしていた。もし、他人が見たとしても小指の指輪もあるのだな。そう感じるだけだろう。だが、何故か、生き物のようにぴくぴく動いている。その動きは方向を示しているようにも見えた。江見は、この物の事を言っているのだろう。そう呟き終わると道沿いを歩きだした。暫く歩いていると、声を掛ける者が居た。江見は、自分の事なのか。そう不審そうに振り向いた。
「如何しました。財布でも落とされましたか、もし、そうなら、家に着いてからお金を頂いても良いですよ。如何します」
 お客を乗せる事を生業とする車が止まった。
その男は不審そうに声を掛けた。余程、今日の稼ぎが少ないのだろう。近くには民家も店屋もないのだ。もし、歩く人が居るとしたら、車の故障か、拉致されて逃げて来たか、幽霊かと感じるはずだ。この道を通る大抵の営業車は、もし、人が居たとしても、手を上げないでくれよ。そう祈りながら走るのが普通だった。
「乗せて頂けるのですか、変わった籠ですねえ。どうやって乗るのかしら?」
「ひっ、ひ~」
 男の運転手は、籠、その言葉が耳に入ると、即座に窓を閉めて逃げ出した。男は幽霊と感じたのだろう。
「あらあら、如何したのでしょう?」
 江見は、首を傾げながら歩き出した。可なり、長い間歩いていた。その間、何台も車が通る。その中に、人を乗せる生業の車もあったが、止まる事は無かった。
「籠と言ったから悪かったのかしら、だけど、あれ、籠よねえ。それとも自動籠と、そう言えば良かったのかしら?」
 そう呟いた。このまま町まで歩き続けるのだろう。可なりの距離があるはずだが、籠と言う言葉を吐くのだ。歩き慣れているのだろう。それは、声色からも、確りした歩き方からも苦は感じられなかった。
「まあー想像していたよりも、進化した文明なのね。それにしても、気分が悪くなるほど空気が悪いわ。あの自動籠が原因ね」
 江見は、車道脇の歩道を歩き続けた。恐らく、二十キロは歩いただろう。段々と都心に近づき、長町と言う町に入ると、感想を口にした。キョロキョロ辺りを見回していると、ある男を見て疑問を感じた。
「ん。書物を読める所なのかしら?」
 男は数冊の本を手に持ち、店から出てきた。
「この国の事を調べる必要があるわ」
 その書店に向かった。
「あらあら、交換する物がなくては行けないのね。まあ、お金と言うの、残念だわ」
 店内に入ると、驚きの声を上げた。入り口の隣に、周りを囲まれている所があり。その中に女性が立って、親子と女性の金銭のやり取りが見え、それで、そう感じたのだ。
「まぁー読む事も出来るのね。そうなの」
 ふっと周りを見回すと、立ち読みを見かけ、喜びを表しながら店内を歩き回った。そして、一つの本に目を止めた。
「羽衣伝説。私の事。それとも、同じ竜宮城の方々達なのかしら?」
 そう、呟きながら手を伸ばした。
「あっら」
 江見と男が、本を取る為に手が触れた。
「えっ、まさか、この本だったのですか、私が買っても良いのですか?」
「はい」
 そう返事をするが、男を目線で追い続けた。
「う~ん」
 男は本を買い求め。店内を出てしまった。
(なんで、なの。言葉を掛けるどころか、振り向きもしないの。この世界は、男女の係わりが厳しいとは思えないのに、それに、この町は服装からも町並みでも、人々は裕福に感じるわ。貴族の町に思えるのに(女性は、そう感じたが、何処にでもある普通の住宅街の商店街だ)何故なの。貴族でなくても、男なら女性に声を掛けるのが普通よねえ。なのに、何故。私に魅力がないの。まさかねえ。私の女性の象徴は大きいわよ。何故、本当に分からないわ。それとも、目が悪いのかしら?)
 そう思うと、自分の胸に手をあて、納得したのだろう。そして、男の後を追った。
「居たわ」
(何をしているのかしら?)
 男は、歩道で立ったまま呟いていたからだ。それを見て、江見は不審を感じたが、現代人なら不審に思わない。男は携帯電話で話をしていただけだった。
(物の怪と話をしているのかしらね。だけど、物の怪は見えないし感じないわ。ん、店外から店内を見ているの?あっ、そうだわ)
「えへへ」
 江見は、ニヤリと笑みを浮かべた。何かの悪戯を考えたのだろう。同じ笑みを、男なら鼻の下を伸ばす。それと同じだ。だが、女性だと色っぽくて可愛いらしかった。
(あっもー、女性とは話す事も直接見る事も出来ないのね。もー、可愛いわねえ)
 そう思いながら、男が見ている大型の食料品店に入り。ガラス越しから男を見た。
「おいでよ」
 男には聞こえないのは分かっていたが、窓越しから話を掛けながら手を振った。
「ほんとうにっもぉー見えないの。なんなのよ。もー、私を馬鹿にしているの」
 男は、別に馬鹿にしているのではない。女性から見れば、目線を向けているように見えるが見ているのではない。電話に夢中なのもあるが、この手の何年も異性がいない男は、女性が怖いのだろう。女性を見詰めていれば、
「やだー。私を見ているわよ。気持ち悪い」
 そう言われるに違いない。それが怖いのだ。
「えっ。何処に行くの?」
 男は、電話が終わったのだろう。歩きだした。江見は慌てて店外に出て男の後を追う。
店外に出ると直ぐに見つける事が出来た。交差点で待っていたのだ。江見は、男の隣に近寄り。そして、男に目線を向けた。
「ごほん」
 偽りの咳を吐き、男に合図を送った。
男は周りを見回すが、知人が居ない。そう感じると歩き出した。女性は怒りを顔中に表しながら後を追い。男の家まで来てしまった。怒りの為だろう。始めの考えを忘れている。そう感じられた。元々、羽衣の関係などを聞くだけだったはずだ。
「如何しようかな」
 男が家に入ると怒りも消えてしまい、玄関の前で考えてしまった。そして、急に疲れを感じたのだろう。その場に座ってしまった。
(何か、眠くなってきたわ。少し寝てから考えよう)
そして、数十分後。
「なんだ。如何したのだ。開かないぞ」
 男は何ども扉を押すが開かない。それで仕方なく、壊れるのを覚悟で、力ずくで押した。
扉は、壊れる事がなく開いたから安心したが、開くと同時に恐怖のような驚きを感じた。
「なな、何をしているのですか?」
 江見が俯いた姿勢で座っていた。それで驚いたのだ。
「やっと、私に気が付いてくれたのね」
「え」
「覚えていないの。羽衣伝説の本を手に取る時に会いましたでしょう」
「あっああ。それで、何の用件でしょう。そっ、それより、ここから離れましょう。私が紅茶でも奢りますからね。それとも、一緒に昼食を食べます。ねえ、そうしましょう」
 男は急に恥ずかしさを感じた。慌てて鍵を閉めながら声を上げる。何故、部屋に入れないのか、そう思うだろうが、頭の中では昼食を済ませる事と、女性と二人でいる。そう思うと恥ずかしくて、この場から逃げたい一心だった。
「えっ良いわよ」
「それでは行きましょう。そこで、ゆっくり話しを聞きますからね」
「分かりましたわ」
 男は返事を聞くと歩き出した。手を差し伸べる事もしない。さっさと前を歩き、時々振り向くが、付いて来ているのかを確認しているのだろう。そして、二人は、二十四時間営業の大型飲食店に入った。
「あの本の事ですね。私が読んでからなら差し上げますよ」
「う~ん」
 食卓の上に肘をついて何か考えているのだろうか、だが、顔の表情から判断すると挑発しているようにも感じられる。
「だけど、初版本では無いのに、多分だけど、他の店屋を探せば置いてあると思いますよ」
「そうなの。ただねえ。私の知っている物語と同じなのか知りたかったの。それが分かれば要らないわ」
「そうなのですか、それなら、その手の本は何冊かあります。良ければ、私の家に行きますか、ん、どうしました?」
 自分の興味の話題が出てきたからだろう。満面の笑みを浮かべた。それなのに女性は、不審な表情を表した。
「え、家に居られたら困るから、ここに来たのでしょう。又戻るのですか、何故、何故です。それとも違う家に向かうの?」
「えっ、その、あの、狭い部屋に女性と二人では行けないような気がしまして、そう言う事です」
「まあーあれね。自分を抑えられない。そう言う事なの。なら今度は大丈夫なの?」
「え、その、あの」
「なんか悲しいわ。それとも私が、そのような、いかがわしい女性と思われたのですね」
「えっ、その、あの」
 男は、自分が言ってはならない事を言った。そう思い、顔を真っ赤にするが、江見の話を聞けば聞くほど顔を赤らめ、言葉を無くす。
「あの、一つ聞いても良いですか?」
 周りのお客や店員の視線が気に掛かり、とっさの考えを口にした。
「なんです?」
「その左手の小指は指輪ですよね。だけど、そのぴくぴくするのは何ですか?」
「まあ、まあ、まあ、まあ」
 一声を上げる後に顔を赤らめた。よほど嬉しいのだろうか、それとも、心の底から恥ずかしくて声が出ないようにも思えた。
「どうしました?」
「まあっ、まあっ、まあっ」
「大丈夫ですか?」
「みみっ、見えるのですよねえ」
「見えますよ。確りして下さい」
 男は、江見の様子が変だと感じて、席から立ち上がり体を何度も揺す振った。そうしていると、声が大きかったのだろうか、それとも、揺す振っている姿が喧嘩していると感じたのだろう。店員から声を掛けられた。
「お客様、如何なさいました?」
「あっ、何でもありません」
「そうですか、他のお客様からの苦情がありますので、少し会話の声を低くして頂けないでしょうか、それで、宜しければ注文を取りたいと思います」
「あっ済みませんでした。紅茶を二つお願いします、それと、日替わりを二つ」
 店員は注文を繰り返しながら最高の営業ほほ笑みを浮かべた。だが、目が笑っていない。注文した金額が安いからではないだろう。恐らく、他の客からの苦情内容や自分の感情だろう。女性を泣かし、怒らせる。それが我慢できない。そう感じた。それでも、江見の言葉使いが優しいので許したのだろうか、そうでは無かった。
「紅茶を楽しみにしています」
 江見が、満面の笑みで、そう言ったからだ。
「あのね」
 江見が問い掛けた。
「ん」
「しつこいと思われるでしょうが、もう一度聞きますね。本当に見えるのですね」
「見えます。それで、それ何です?」
「貴方に取って良い事の始まりの印ですよ」
「えっ。そうなのですか、何です。ねえ何です。教えて下さい」
「それは、後の楽しみよ」
「分かりました」
「本当に期待していて良いわ。それより。貴方の事、何てお呼びすれば良いのかしら?」
「あっごめん。田中 薫です。よろしく」
「たなか かおる」
「そうです。貴女の名前は何です?」
「私は江見です」
「えみ、江見さんか、可愛い名前ですね」
「名字はありません。結婚しなければ名字を名乗れないのです」
「そう、いいよ。気にしないからね。それより、如何します。今、この本を読みます。待っていますから気にしないで、外で読もうとして持ってきたしねえ」
「う~んん。食後の美味しい紅茶も頂いたし、薫の家に行きましょう。そこで読むわ」
「はい、良いですよ。なら、お金を払ってくるね。外で待っていて、直ぐ行くからね」
「外ですか、そこですね」
 江見は、ガラスに向かって、指を示しながら尋ねた。
「はい、そうです」
 薫は指で示すと、江見は頷いた。
「ごめん、待たせたね」
 薫は会計を済まし。少し慌てるような感じで、江見の元に向かう。少しでも遅れると居なくなる。そう思っているのだろう。
「う~んん。待ってないわよ。行きましょう」
「江見さんは、羽衣の話が好きなの。それとも、羽衣の関係などを調べているのですか、だけど、この本は完全の作り話ですよ」
「本物と偽物があるの?」
「全て作り話と思いますよ。ほら、だけど、神話や古文書などあるでしょう。あの歴史的価値がある。資料って言うか、現本かな、普通は、本当の物語。そう言うでしょう」
「ふ~ん。そうなの」
「この本は嘘です。て、言うか、空想の話、読む人を楽しませる本でしょうね」
「はい、言っている事は分かりましたから良いですよ。その本が嘘なのですね」
「はい、そうです」
「そう、本物も偽物も見せてくれるのね」
「本物は国宝級ですから見せられないけど、中身が同じ物はありますから、まあ、私が持っている物を全て見せますよ」
「ありがとう。ねえ、歩きながら話をしましょう。早く家に行きたいしね」
「あっごめん、ごめん。そうですね」
 薫は、無我夢中で興味を引こうとしているのだろう。店の前にいる事を忘れている。江見はそう感じた。何故、家に行く。そう言ったのに動かない為に提案した。薫は歩きだしたが、江見と居る事が嬉しくて話は止まらない。その様子を見て、江見も微笑みを浮かべて本当に楽しそうだ。
「今日買った本は、作者が好きで必ず買うのですよ。そうですね。この本を読んでから、神話などの資料を見た方が楽しいかもしれませんねえ」
「そうなの、そうしますわ」
 江見は、一度行った家だから指示をされなくても歩きなれた道のように歩く。まるで長い付き合いの恋人のようだ。
  そして、薫の家にたどり着いた。
「ほぉー凄い部屋ですね」
 薫の部屋は散らかっていた。独り者の部屋だからか、そう思うだろうが違う。ゴミや布団が敷いたままでは無い。それでは何故。そう思うだろう。もし、この部屋に本が全くなければ清潔で何もない部屋。そう感じるはずだ。部屋の四隅は本棚で埋まり。窓も見えない。それだけで足りずに、足の踏む場所も無いほど本が積まれているのだ。
「江見さん。本の上に座った方が楽ですよ」
「良いの。大切な物なのでしょう?」
「良いですよ。私が大切だと思っているだけで、まったく価値がない物ですから」
「そうなの?」
「そうです」
「だけど、仕事の本でしょう?」
「違いますよ。楽しむだけの本です。あの時に買った本と同じです。ん、まだ開封してなかったのですか、開封して読んで良いよ」
 薫は、部屋に入ると、直ぐに飲み物を作る為に湯を沸かしに行き、江見と湯を沸かす容器を交互に見ていた。
「そう、読みますね」
 江見は、本を開き、パラパラとめくった。
「如何したのです?」
「私には読めません」
(さっき、題名は読めたのに、なぜ?)
「ん、そう。私が読んであげますね」
 この言葉を男性から聞いたら、馬鹿にされている。そう感じて殴りかかったはずだ。だが、女性だからか、と言うよりも、江見に好かれる為だろう。理由など考えない。そして満面の笑みで、声を上げながら本を読み始めた。
 最下部の第三章をクリックしてください。

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物語を書いて五年になりましたが、私は「左手の赤い感覚器官(赤い糸)と「蜉蝣(カゲロウ)の羽(背中にある(羽衣)の 夢の物語が完成するまで書き続ける気持ちです。
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