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第十三章、竜宮城へ、結婚式まで十日、そして、薫と薫の両親の時の流れは
「涙姉さん、おはようございます」
 昨朝は始めての家で疲れていたのだろう。今日は鳥の朝の挨拶より早く起きて来たのだが、もう、涙は起きて朝食の用意をしていた。
「おはよう。江見さん、カレー美味しく出来ているわよ。これなら、薫も何も言わないわ」
「よかった。涙姉さんのお蔭です」
「二人が起きて来るのには、まだ、早いわ。紅茶でも飲みましょう」
「はい」
 また、涙から質問攻めを受けた。薫の事が心配なのだろう。少しは、私の事も気に掛けてくれている。そう感じる。でも、ヒョットして、もう会えない。そう感じているのか、それとも、中国の楼蘭って、それほど遠いのか、そう、考えてしまった。
 江見は、気が付いてない。楼蘭は実在しない事。それに、外国で住む。その気持ちも考えも浮かばなかったのだった。それが、分かれば、涙の気持ちも少しは分かっただろう。
 たしかに、一つの国だが、竜宮城は東京都くらいしかない。人口もほぼ同じだ。そして、人口が増える事も減る事もない。旅立つ人と、帰って来る人が同じだからだ。これでは、分かるはずがない。だが、江見は、真剣に耳を傾け、真剣に答えていた。
「母さん、江見さん、おはよう」
「おはよう。薫さん」
「薫おはよう、父さんは?」
「今来るよ」
「そう。紅茶、それとも、コーヒー。何にする」
「父さんは、コーヒーだろう。同じでいいよ」
「おはよう」
 江見が、挨拶すると、父は驚きだろうか、嬉しい。いや、恥ずかしかったのだろう。挨拶を返さなかった。それを隠すように、連れ合いだけには返した。
「父さん、おはよう。コーヒーが出来ているわ」
「ありがとう。あっ、徹にもあげたのか」
「一番先にあげたわ」
「何故、徹兄さんにコーヒーを、ん」
「子供はコーヒーを飲みたがるでしょう。薫も、そうだった」
「え」
 薫は、覚えがない事を言われ、何も言わずに、耳を傾けていた。
「そうだったな、結局は飲めないで、砂糖と牛乳で薄めていたな」
「そうでしょう。だから」
「そうだったのですか」
 江見は、くすくす、と笑ってしまった。
「お腹が空いた。そろそろ食べよう。カレーだろう。もう、出来ているはずだよな」
 薫は口を尖らせ、不満そうに答えた。好きな人に笑われたからだろう。
「そうね。食べましょう」
 そう、涙が答えると、江見と涙が用意を始め、それぞれが、食べ始めた。
「薫、食べ終えたら、直にお参りするのだろう」
「うん、そうしたい。父さん、母さん、いいかな」
「父さんが、いいなら、私も、いいわよ」
「問題はない」
「ああ、でもね。車では行きたくないなあ」
 薫は、慌てて頼んだ。頭の中で一瞬考えが過ぎる。突然消えるはず。車では、そのまま置いとく事は無理だ。そう考えたからだ。
「う~ん、まあ、そうしたいなら、構わない」
 息子の考えに一瞬だが悩んだが、承諾した。
 家族は、早々と朝食を食べると、息子の言う通り、個人所有の自動籠でなく、数人用の乗り合い自動籠で、八木山神社に向かった。そして、到着すると、母が驚きの声を上げた。
「えっ、この神社が、いいの?」
 やはり、母と父も驚きの声を上げた。
 誰でも、始めて来た者は驚く、余りにも小さく、鳥居と社しかないからだ。
「お参りしよう」
「そうねえ」
 鳥居の前で、まず先に、神様が話を聞いて貰えるか、その伺いに、手を重ね、二度お辞儀をした。そして、鳥居を通ると一瞬の内に、この地から四人は消えた。何故、今回は簡単に通れたか、恐らく、行きの確認の門に原因があった。江見と違い。何も問題がない場合は入れば、必ず同じように帰れるのだった。現れた所は、前回と違い、確認の門だった。恐らく、人数が多い為に、一番繋がりが強い所が門なのだろう。江見と薫は驚かなかったが、二親は何が起きたのかと、目を見開き、口まで開けたまま、立ち尽くしていた。
「父さん、母さん、信じられないだろうが、夢でも幻でもない。現実だから、この世界が、江見の生まれ育った所、竜宮城だよ」
 二人が驚くのは無理なかった。都心にいたはず、それが、何故か、草原に自分達が居たからだった。本当に何もない、ただ、門があるだけだ。
「えっ竜宮城って、あの、浦島太郎の、まさかね」
「そう、あの竜宮城だよ」
 薫が話しを掛けるが、父はまだ立ち尽くしていた。
「あの話は現実だったの」
「海の底でなく、時の流れの狭間に浮かんでいたのです」
「ほうう」
「もういいよね。江見さんの家に行こう」
「そっそう、そうね」
 涙は真っ青な顔で答えた。そして、連れ合いを見た。
「もう、父さん、大丈夫。江見さんの家に行くよ」
 そう声を上げながら、涙は、連れ合いの背中を叩いた。
「うわああ、ここは何処だ」
 叩かれたから驚いたのでない。まるで、頭と体の機能が切れていたが、叩かれた事で神経が繋がったかのようだ。それで、全く話が耳に入ってなかった。
「お父さん、落ち着いて、大丈夫だから落ち着いてよ」
 叫び声は大きくなる。もしかしたら演技か、いや、これは、雄の本能かもしれない。危険を感じて、叫び、暴れて、自分に全ての危機を招こうとしているのだろうか、これが獣なら危機を感じて、この場から離れるはず。だが、
「馬鹿、確りして」
 涙は、先ほどから涙を流しながら声を上げていたが、声が届かない。そう感じたからだろう。頬を叩いた。
「えっ」
「ここは、江見さんの生まれ故郷よ」
 薫と江見は、二人の様子を見ている事しか出来なかった。それほど、真剣に、涙は、連れ合いを正気に戻そうとしていたのだ。そして、涙の言葉を聞くと、二人は何度も頷いた。
「ほう」
「広いわねえ。このような所は日本には無いわ」
「そうだな、でも、もし、無理して場所を挙げるとしたらゴルフ場だろうなあ」
「そう、ゴルフ場って、この場所みたいなの、見てみたいわねえ」
「ヒョットして本当にゴルフ場か、それとも、何かの競技の場所かもなあ」
 涙の話を聞いてなかった。
涙は場所のお蔭か、うっとりと話をしていた。それが、自分の話を聞いて無い。それに気が付くと、大きな溜息を吐き、不満そうに口を開いた。
「行きましょう」
 涙の言葉で、薫と江見は頷く。
「もうー、父さん、行くわよ」
 涙は振り向くと、我を忘れている連れ合いに言葉を掛けた。
 江見も、薫と両親も知らないが、ここは神聖な場所だった。門しか残ってないが、初代竜族の墓所だ。それを中心に竜族の墓が在った。まだ、時間の狭間に落ちる前なら文献や口伝などで知る事は出来ただろう。狭間に落ちた時、いや、落とされた時は、生きるか死ぬか、それしか考えられなかった。落とされた理由も、元同族が原因だった。何百年、何千年も経ち同族と考えは薄れていたが同族には違いない。元々宇宙を放浪して、この地球に来た同胞だ。それが十二族に分かれてしまった。家族単位か、思想か、理由は忘れられたが、それでも、命を取り合う程の諍いは無かったのだが、突然に竜族以外の種族が戦を始めた。戦の理由も竜族が中立を守り説得するくらいなのだから些細な事だったのだろう。だが、竜族は謀られたのか、戦の巻き添えか、それとも、正常な判断が出来ないほど血に酔っていたのだろう。十一族の力で、竜族は時の狭間に落とされた。それから、長い時間が経ち、体が環境に順応して、背中に羽が、左手の小指に赤い感覚器官が現れた。もしかすると、祖先には合ったが、長い宇宙の漂流で消えた物が、時の狭間の為に先祖帰りしたのだろうか、それとも、閉鎖された環境の為に進化したのか、それは、判断は出来ないが、背中の羽で時の流れを飛び、赤い感覚器官で連れ合いを探していた。それでも、旅には出るが、生涯の連れ合いを赤い感覚器官の導きを信じる者は全てでは無かった。最後は自分の意志で判断し、導き以外の者を生涯の連れ合いとする者もいた。それでも、必ず、江見のように旅をして、故郷に帰ってくる。そして、又、新しい生活を始めるのだ。
「お母さん、行こう」
 涙の言葉を聞いて、薫と江見も頷き、歩き始める。
「お父さん」
 涙は、知らない地だから恐いのだろうか、それとも、連れ合いと離れ離れになる。そう感じているのだろうか、連れ合いの所に戻り、手を引きながら歩き出した。薫は一度歩いた所だから関心を示さない。だが、両親は、町に入ると、ますます、辺りを窺う。危険を感じているのか、それとも、ただの好奇心だろうか、周りをキョロキョロ見回している。二人は何かを探そうとしているようにも思えた。何度周りを見ても、見に覚えのある町並みだ。もし、日本を探して見れば何処にでもあるような風景だからだ。恐らく、眺め回しているのは、自分の記憶に有る物を探し、日本に居る、そう思いたいのだろう。
「やっぱり、親子ね」
 江見は、そう呟いた。
「江見さん、何か言った」
「いいえ」
 薫は、行きの時は違い。恐怖を感じずに、江見と楽しそうに会話を楽しんでいた。両親も、連れ合いがいるからだろうか、何かを探す為だろうか、疲れは感じていなかった。四人は、それから、数十分くらいだろう。歩くと、江見の家に着いていた。
「お父さん、お母さん、少し、ここで待っていて」
 江見が、二人に声を掛けると、薫の手を引き玄関に入った。
 最下部の十四章をクリックしてください。

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物語を書いて五年になりましたが、私は「左手の赤い感覚器官(赤い糸)と「蜉蝣(カゲロウ)の羽(背中にある(羽衣)の 夢の物語が完成するまで書き続ける気持ちです。
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