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第十五章、そして、結婚式、当日
「あら、私と出かける時はお洒落しないの。今まで出かける時は毎日お洒落していたでしょう。もう私は逃げないから捕まえようとしないのかしら」
「いや、違う。考え過ぎだよ。これから式だよ。向うでいろいろしてくれるだろう。それで今、髪型や服装を選んでも、向うで又着替えるのに無駄だよ。愛しているよ。チュ」
「何かあった。前は、愛しているって、簡単に言わなかったわ。それに、人前で、キスなんて、恥ずかしくてしなかったわよ」
「人前って、私の親の前だよ。江見の親の前では恐くて出来ないよ。でも、江見から言ったのでしょう。家の中なら出きるはず、何度も言ったの、江見だろう」
「そうだけど、でも、何故か、いい気分しないわ」
「早く行こう、時間なのだろう」
薫と薫の両親はまだ気が付いてない。恐らく、自宅の周囲は生活に支障ないように決まっているのだろう。前日までは、暖簾や看板だったのだが、今日は当日だからだろう。人が信じられないほど集まっている。まるで祭りだ。道路の脇に隙間なく立ち、その前を警備のような武人、それも、礼装のようなきらびやかだ。後ろの人々は手を振り、叫び、興奮を表しているが、人々を見ても演技には見えない。
「お乗り下さい」
 勲章のような者を多くつけた武人、隊長格だろう。その人物が馬車の前で呟く。人々との境が無いのだが、境があるように人々がいない。その所に、馬車が置いてあった。
「はい」
 薫と両親は驚き頷くだけだった。
「ご苦労様、ありがとうねえ」
 生まれ育った所だろう。江見も、両親もタクシーに乗るような態度だ。
 馬が鳴き声を上げると走り出した。そして、江見も両親も楽しそうに手を振る、その脇で、顔を引き攣りながら、薫と、薫の両親も、ぎこちなく手を振っていた。五分、十分と手を振り続く、だか、人々の数は増え、叫び声も大きくなる。馬車からは見えないが、他の馬車も合流したのだ。やや離れた所を一緒に式場に向かっていた。このような大袈裟な、いや、人違いをされているような騒ぎと感じて、薫と両親は、ちらちらと、江見と両親に視線を向けるが、向けられた方は、薫達の事を忘れているように手を振り、声を上げていた。薫達の気持ちが分かったのだろうか、段々と、騒ぎ声も低くなり、見物人より武人が多くなって来た。そして、突然に馬車が止まった。すると、江見と家族は窓をしめ、真剣な顔を作り、衣服を整え、深呼吸をしたのち、何かを待つように椅子に腰掛けた。
「トントン」
「新婦様、新郎様、私の後に着いてきて下さい。これから、お召し替え致します」
 先ほどの隊長格の人物が扉を叩き、待っていた。
「はい」
 薫は意味が分からず、江見に視線を向け続け、江見が答えると、それに従った。
 三人は、馬車が止まった所の左右に大きな建物があり。大きさは三階建ての建物くらいあり、円筒形の櫓の様な作りだった。そして、左の建物に向かった。
「分かっていると思いますが、今日は両竜王様が祝いに来られております。その為に白以外のお召しは禁止になっております。女性の場合は、この建物の中にある物から選んで頂きます。男性も隣の建物の中から選んで頂くのですが、今日の場合は決められていますので、この建物の中の別室にある物を着て頂きます」
「はい」
 江見はこの世の幸せと思える笑みを浮かべていた。その横で薫が、何処に行けば良いのかと視線を向けているが、もう、薫の事は完全に忘れていた。
「ごっほん、新郎様、どうぞ、こちらへ」
 薫が、連れ合いの顔を見て惚けている。そう感じたのだろう。それで、仕方が無く、薫を正気にさせようとした。そして、薫は、一着しかなくて選ぶ事もない為に、江見を待っていた。その横で、隊長格の人物が、江見に時間が無いと伝えている。
「うわあ、凄いわ。おおこれも、着てみたい」
 江見は、ぎりぎりの時間になっても、着替え室から出てこない。仕方なく、薫に部屋に入ってくれ、そう話をかけようとした時だ。江見は、満面の笑みで現れた。その姿を見て、薫が声を掛けようとしたが、即座に、馬車に入る事を勧められた。
「うん、うん、衣服の乱れはないようですね。そちらの男性が、新しく一族に入られる方ですね。それと、ご両親ですね。あっ、返事はいいです。ただ耳を傾けて頂くだけで良いのです。これから先、声を上げてはなりません。礼をされても、頭を下げなくて構いません。ただ、最後に、証明書をいただく時だけ、頭を下げて下さい。その前に、礼儀と感じて、頭を下げる事の方が失礼ですから、それだけは、守って下さい。良いですね」
 馬車に入り、一分も経たない時だ。又、扉を叩く音が響いた。
「・・・」
「そうです。それでいいのです。無視して下さい」
「・・・・」
「暫く、すると馬車が動きだし、又、扉が開きます。薫様と、江見様だけに、手を差し出されます。その者に従い、歩いて下さい。ご両親は、お子様の後を歩いて頂きます」
「・・・・」
「そうです。お名前を聞かれますが、礼はしないで下さいね。証明書を頂く時だけ、簡単に会釈してくれれば良いですから、お願いしますよ」
 そう、一人で話し終えると、老人は、だが、可なりの身分があるのだろう。今まで見てきたなかでは、勲章の数も、そして、見事な竜の刺繍がしてあった。そして、会釈をすると馬車から消えた。又、馬車は動きだすが、直に門が開き、そして、閉じる音がすると馬車は止まった。すると、又、扉を叩く音がした。
「これから、扉を開けますが、決して、声を上げる事も礼儀を返す事はしないで下さい。良いですね。それでは、これから、ご案内します」
 そして、扉が開けられた。開けると同時に、何の模様も勲章らしき物もない。真っ白の上下の服を着た若者が現れ手を差し出してきた。それと同時に、耳を塞ぎたくなるほどの拍手の音が響いた。どこから見ても身分があるような人々達が立ち並び、手を叩いていた。
「・・・」
 薫と両親は声と同時に頭を下げそうになったが、それを隠そうとしたのだろう。やや、首を上げた。空を見る。そう思わせた。そして、今度は逆に目を見開き、口を開ける所だった。信じられない程の神殿が目に入ったからだった。金銀、宝石があった。そう言う事でなく、大きく、素晴らしい彫刻の模様が彫られている。誰が見ても、この地に入れるのは、限られた者だけ、恐らく二人だけだろう。そう思える所だ。それが一番に感じるのは入り口だ。それは、二匹の竜が口を開き、神殿を絡まっているような彫刻だ。恐らく、女性と男性の入り口だろう。それも、一人だけしか入れない入り口のはずだ。
「ふー」 
 薫と江見と両親は、深呼吸するように息をすった。そして、視線を竜から真ん中の小さい扉に視線を向けた。そこから入ると考え、歩く準備をしたのだろう。
「足元に気をつけてください。ご案内します」
 男性は、薫の手を取り、歩き出し、女性は江見の手を取り歩きだす。その後ろを両親が付いて行く。そして、すぐに、驚きのような顔色を作ったのだった。真ん中に進まず。竜の口に向かう。それも、薫、江見が、それぞれの入り口に手を引かれたからだった。だが、二人の両親は、真ん中の小さい扉の方に向かわされた。
「・・・・・・・」
 そして、拍手はさらに大きくなる。入り口の近くになると、武人でなく役所で働く人なのだろうか、竜の刺繍だけの人が多くなった。そして、三組の結婚する者は中に入った。
「ふわー」
 入り口に入る時、益々、緊張したのだろう。大きく息を吐き中に入っていた。
 口の中、竜の体内、通路の中は、彫刻が施されていた。恐らく想像だろうが、始祖から代々の歴史が彫られている。それを見る、心のゆとりは無い、ただ、出口の光だけに視線を向けて歩いていた。
「・・・」
 通路の出口に行き着く。そう感じて、心が落ち着いた時だ。
「ここでお待ち下さい」
 それぞれに、分かれた江見と薫は、声を掛けられると、不安な気持ちで待っていた。
「仮扱いの四竜族の江見、新郎の薫、中に入りなさい」
 数分後、大きい声で呼ばれた。
「行きますよ」
 真っ白い服の若者に声を掛けられ出口に向かった。
 江見と薫が真っ先に目に入った物は、劇場のような舞台の上に出て、その真ん中に二つの椅子に座る年配の男女だった。はっきりとした年齢は分からないが、自分達の親よりやや年配だろう。そう感じた。その者、二人は薄い水色の上下の衣服で金糸の刺繍の竜が描かれていた。誰が見ても、この地の最高の権力者か、身分が一番高いのだろう。そう感じられた。その二人の前に手を引かれながら歩いて行く。前に付くと、若者は手を離し畏まった。それと同時に、椅子に座る二人が、江見と薫に声を掛けた。
「仮扱いの四竜族の江見、新郎の薫。二人を四竜族の血族に入る事を許す」
「・・・・」
「江見、薫、おめでとう。私の元に来なさい」
「おめでとう」
 二人に祝福を言われ、江見と薫は近寄った。
「これが証明書だ。幸せに暮らしなさい」
「おめでとう」
 二人から、証明書を頂いた。そして、満面の笑みを浮かべながら何度も頭を下げた。恐らく、礼儀は一度で良かったのだろう。そして、普通考えれば、何度か礼儀を返して、元の所に戻るはず。それが、何度も礼を返していた為に、案内をした若者は苦笑いを浮かべながら二人の元に行き、手を引きながら中段の所に行った。二人の両親の元に連れて行き。
「四竜族の江見、新郎薫、退室を許します」
 江見、薫と両親は嬉しくて抱きしめ合った。と、同時に拍手と同時に指示を言われた。今度は、竜からの出口でなく、舞台から降りる階段から降りた。その下には、大勢の人達が拍手で迎えてくれた。恐らく、竜族の直系の一族だろう。四色の竜の刺繍が描かれている。だが、薄い水色の者は居なかった。あの二人は特別の人と感じたはずだ。二人は出口に出るまで拍手が止む事が無く。その後、江見と薫と両親は気が付かなかったが、別の名前が呼ばれていた。例を挙げるなら、同じ様に
「仮扱いのニ竜族の健二、新婦の美沙、中に入りなさい」
 江見と薫と同じく証書を貰う、儀式が進んでいた。だが、出口に出た。といって終わった訳では無かった。又、馬車まで戻るまで、拍手が止む事は無かったからだ。
「お幸せに、おめでとう」
 そう、若者に声を掛けられ、馬車の扉を閉じられた。それでも、声を上げる事はしない。
行きと同じように神殿を出るまで無言が続き、そして、自宅に帰り着いた。
「凄かったわね。まるで、大奥の世継ぎの母にでもなった気分だったわ」
「うん、お母さん、俺も、そう感じて本当に緊張した」
「江見さん、何故、あのように盛大にするのですか」
「え、お父さん。一族に入るのですから、皆で、祝いするのは当然ですよね」
「確かに」
「薫さんのお父さんも、お母さんも、それくらいにして、ゆっくり寛ぎましょう」
 江見の母の言葉で、思い出と今日の出来事を肴で、酒や食べ物や菓子などで会話を楽しんでいた。その中の話題の一つ、薫の兄の話を聞くと、何故か、突然に、江見は、父に勧められて席を立った。そして、父の書斎に入って行った。
「江見に任せるが、薫君のお兄さんを助ける事が出きるぞ。だが、薫が生まれて来るか分からないが、でも、薫は、竜宮城に来たのだ。時間の流れから離れたから、何事も無いはず安心しなさい。そうすると、もし、薫君が、生まれた所に帰っても、両親に会えなくなるだろうがなあ。まあ、必ず、そうなるか分からないが、どうする?」
「う~ん」
「江見、普通の玉手箱は、この地に連れて来る前に記憶を戻す。勿論だが、時間も戻す。それで、薫君は、遠い地で暮らす事になった。そう記憶を入れ替える。どうせ記憶を入れ替え、時間を戻すなら、お兄さんを助けた方が嬉しいだろう。私は、そう思った」
「薫と、薫のお父さんとお母さんに相談する」
「そうか、だが、間違いなく、薫君を取るぞ。それでも、相談するのか?」
「相談したい」
「そうか、私は、薫君の両親に済まないと思っている。会いたくても会えない。その気持ちを考えるなら、始めからやり直した方が喜ぶと思ったのだぞ」
「でも、私一人では決められない、話をしてくる」
 江見は、そう、父に言葉を掛けると、居間に向かった。
「江見さん、涙なんか流してどうしたの?」
「あのう、お母さん、もし、お兄さんが生き返るとしたら、どうします?」
「え、もう、冗談は言わないの」
「それは、本当ですよ」
「おっお父さんも冗談を言わないで下さい」
 そして、娘に言った事と同じ事を話し始めた。
「私は、薫の命と引き換えに、徹を助けたいと思わないわ」
「薫君が死ぬ事はありません。ですが、薫が生まれないか、別の薫が生まれる可能性があります。新しい時の流れになりますから、どうなるか分かりません」
「えっ」
「明日の朝まで答えを決めてくれればいいです」
「え、明日、帰らないと行けないのですか」
「済みません、式の次の日に帰る事が、規則なのです」
「そんな、私達の気持ちが落ち着くまで、居させて下さい」
「その気持ちが分かるから、私の独断で、お兄さんが生き返る玉手箱を用意したのですよ」
「でも、まだ」
「寝室に、玉手箱を用意しておきました。左が、お兄さんと新しい生活、右が、今の記憶が残ります。ですが、少し記憶が変わります。薫君は、元の世界の遠い国で暮らす。そう記憶になりますから、竜宮城の事は記憶に残る事はありません」
「どちらにしても記憶は消されるのですか、酷すぎます」
「必ず消えると言う訳ではないです。可能性が一番高い場合を言いました。それでは、私は用事がありますので、明日の朝までユックリ寛いで下さい」
 威圧的な言葉が部屋に響くと、皆は沈黙した。
「江見さん。私達は明日には帰らないと行けないのですか?」
 その一瞬の沈黙後に、心の底から疑問を感じたのだろう。涙は、心の中の疑問を江見に話しかけた。
「そうです。規則ですから、どうする事も出来ません」
「そうなの」
 涙は悲しそうに俯いた。
「お母様、明日まで、まだ時間がありますから楽しみましょう。そうだ。薫の好きな食べ物の作り方を教えてください。駄目ですか」
 江見は、元気つけようとして、言葉を掛けた。
「でも、言葉だけでは分からないと思うわよ」
「私の母なら分かると思います。分からなければ母から聞きますからお願いします」
「えっ、分かると思うわよ。でも、私が、あなたに教えるの、はっきり言って無理ね。あきらめなさい。薫さんには、私が作りますから、教えてくれませんか?」
「もうー」
 皆が笑い声を上げた。でも、薫の二親は苦笑いだったが、少しは気分が解けたようだ。
 この笑い声から会話が弾み、朝方近くまで電気が消える事は無かった。一人、二人と、その場で寝てしまったが、江見だけは、薫の両親に、自分の料理を美味しい。そう言って欲しくて、寝ずに、何度も朝食を作り直していた。
「お母さん、お父さん、起きてください。食事も出来ましたし、そろそろ時間ですよ」
「え、そう、帰る時間なのね。ありがとう。直ぐ行くわ」
 涙は、どちらの箱にするか決められずに、二つの箱を持って現れた。
 そして、皆で食卓に座り、食事を始めた。
食事はまるで通夜のようだった。そろそろ食べ終わる頃、江見は恐る恐る声を掛けた。
「お母様、お父様、私の父が時の管理人に掛け合って、玉手箱を用意しましたのは憶えていますよね。それで、もう一度言いますね。右が、お兄様が助かる世界。左が竜宮城の記憶は無いですが、今の薫と会える世界です。その玉手箱を開けると、そく世界に戻ります」
「何なの、そんなに、私達を元の世界に帰したいの。私達はねえ、薫と江見さんの幸せな顔を見たいだけなのよ。心は決まっているわ。薫の命を犠牲にしてまで、徹を助けたいと思いません。左で構いません」
 涙は、怒りを表しながら左の箱を開けた。そして、箱から白い煙が吹き出てきた。
「ああっお母様」
 江見の制止の声と同時に、ピキ、時の流れの修復する音が重なった。
 江見が崩れるように倒れる所を、実の父が抱きとめた。
「心配するな、こうなるのは分かっていた。私が右と左を入れ替えてある。徹君は助かるから、江見は、何も心配しなくていいから、いいからなあ。泣かないでくれ」
「でも、でも、お母様、怒っていたわ」
 江見は、煙が消え、二人が消えた事が分かると、父の胸の中で泣き崩れた。
 最下部の十六章をクリックしてください。

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物語を書いて五年になりましたが、私は「左手の赤い感覚器官(赤い糸)と「蜉蝣(カゲロウ)の羽(背中にある(羽衣)の 夢の物語が完成するまで書き続ける気持ちです。
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