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第二十二章
「甲、今度は戦わないと行けないの?」
「うう、その」
「嫌ですよ。私は車から出ませんよ」
「おおー乙が話した」
 愛が驚きの声を上げた。
「酒が完全に抜けたか、もう菓子はないぞ」
「愛は怖くないのですか、蘭も甲も、神経が無いのですか、死ぬかも知れないのですよ」
「私は、外界のこの地で生きなければ成らないし、少々の血を見るくらい大丈夫よ」
「自分の血を見るかも知れないのですよ」
「大丈夫よ。自分の血は見慣れているわ」
「そろそろ、着くぞ。うるさいから、何でも良いから酒を飲ましとけ」
「はい」
「だから、その血でなく、死ぬごぼぉ、ごぼ」
 愛は酒の瓶を無理やり、乙の口に突っ込んだ。乙は苦しくて手を動かすが、愛は左手で何度も手を払い、手を叩き退ける。
「うぉおおおお、美味いぞ。酒は無いのか足りないぞ」
 乙は、顔を赤くしたり青くしたりしていたが、瓶の中身が半分を過ぎると、自分の手を使い呑み尽くした。
「話は後だ。もう着くぞ。椅子に座れ」
 甲が声を上げた。それから間もなくしてだ。
「おおお、到着点がハッキリしていると、全くの揺れもないぞ。これなら、何でも行き来するのなら、到着点を示す物を置くか」
 甲は、自分だけが到着した事に気が付いて、車内の機器に目を輝かせながら、車内を出たり入ったりを繰り返していた。その時に、聞き慣れない声を聞き振り返った。
「甲、着いたようだな。酒は無いのか?」
 乙は身体の隅々まで酒が回り、完全の酔っ払いに変身した。
「うっ」
 頭痛がするほどの低くて響く声、もし人間が殺人鬼と言うよりも獣になってしまったら、このような声になるだろう。そう思える声で、乙が声を掛けた。
「酒は、まだか?」
「貴方様とは、いつお会いしたでしょうか?」
 甲は、死を覚悟するように震える声で伝えた。乙は、人間の顔がここまで赤く出来るのか、そう思う顔色で、目は酔っているからだと思えるが、生気が感じられない。だが、顔の表情には怒りが感じられた。恐らく、酒が無い為の禁断症状だろう。
「酒は、まだかー」
「はい、はい、はい。愛さ~んぅ。あれ、蘭さ~んぅ、お酒は何処にあるのでしょう」
 愛と蘭は、扉が開くと直ぐに逃げ出していた。外に出ると、涙花に気が付き声を上げた。
「おー姉ちゃぁ~んぅ。助けてー」
「涙さ~んぅ、助けて、お酒をーくださぁーいぃ」
 涙花に声を上げても届かないのだろう。だが、必死に走りながら何度も、何度も声を上げながら走った。涙花は様子が変と思い、二人の元に向かいたかった。その指示を羊の獣に頼もうとした。
「危険だ。私が見てくる。先に行け」
「妹も助けてくれ」
「分かった」
 遺言男が、涙花に言った。そして、羽衣の力を使い、一瞬の内に二人の元に着いた。
「あっ人形さん。助けて、お酒を下さい」
「甲が危ないの、お酒を、お酒、お酒」
「酒、酒か、分かった」
 そして、一瞬の内に避難する人々の元に行き、酒を持ち帰った。
「持って来たぞ」
「中に居る。乙に、乙に」
「甲を助けて」
 遺言男は、愛、蘭の言葉を聞き、車内の殺気に気が付き目線を向けた。
「こーう、私に嘘を付いたのかー、それとも、私に飲ませる酒がないのか、まさか、酒はあるが、私に飲ませるくらいなら捨てた方が良いと思っているのだな」
「ひっひー」
 甲は、何かを言いたいが悲鳴しか出ない。
「何をしている。私は忙しい。要件を言え」
「ひっひー」
「お前は助けて欲しいのか、分かった」
「その酒をくれ」
「お前は酒を要求か、わかった」
(乙と言っていたな、普通とは違うと感じていたのは、人を殺した事がある人間だったのか、この男の手を借りるか?)
 遺言男は、乙の目を見るまでは、要求を求めないで酒を飲ませる考えだったが、自分でも感じる殺気の為に考えを変えた。
「だが、酒を渡すが、要求をするぞ」
「何でもする酒をよこせ」
「飲め。来い、行くぞ」
「愛と蘭、涙花の所に行け、良いな」
「はい、そうします」
「甲は大丈夫なのねえ。分かりました。私も姉の所に行きます」
 蘭は、遺言男に頷かれて心を決めた。
「酒を飲ませろ」
「もう飲んだのか仕方が無い、待っていろ」
 今度は抱えられるだけ持ってきた。そして、甲に渡しながら念を押した。
「これで最後だ。用が終われば好きなだけ飲ませる。これで我慢しろ」
「えっ、私も何かするのですか?」
「酒を持ちながら、乙の後を付いて来い」
「うっうう、うっうう、私が、私が」
 二人に睨まれ、承諾するしかなかった。
「我らは、半身獣を避難民に近づけないようにしに行く。石弾は敵の中に入れば撃たれる事はないだろう。分かったな、ならぁ行くぞ」
「そうか、わかった。甲、行くぞ」
「ふぁい」
(酒を飲んで、これほど変われば監禁室に入れられるのは当たりまえだ)
 甲は、そう考え。背中と前に、酒入りの袋を抱えて必死に走って付いて行く。
「遅いぞ」
「済まない。甲、先に行くぞ。遅れても良いが、呼んだら酒を渡せよ。分かったな」
「ふぁい」
 泣きそうな声を上げた。
(この二人、人でないぞ)
 上空には竜が飛び交う。まるで、超大形のヘリコプターと戦闘機のような戦いだ。虹家と鳥家の二台しかないから何とか防いでいるが、石弾が当たったからだろう。泣き声なのか、雄叫びなのか分からない叫びが止まない。石弾を何十発も身体で受ける。その破片が雨のように地に落ちる。それと同じように鮮血が飛び交い。そして、痛みで変身が解けたのだろうか、それとも、命が尽きたのだろうか、一緒に人も落ちてくる。
「俺の頭に落ちないだろうなあ」
 上を見ながら二人の後を追う。
「うぇー、あの中を通り抜けろと言うのか?」
 地上では、五種類の獣が垂直に飛んでくる石弾を受ける者。弾き返す者がいた。竜より酷い有様だ。全身血だらけで、ふらつく者が殆どだ。丸一日石弾を受け続けているからだろう。回りには命を尽きた者が数え切れないほどだ。変身獣が減ってきた為に、変身が出来ない者や変身が解けかかった者が、補うように前進する。元々敵は半身獣の集まりだけでなく、六種族の混合で弱点を補っている。数は対等だが、勝てる訳が無い。抑えているのが奇跡に近い。もう陣が崩れてしまう。その時に遺言男と乙が現れた。甲の姿が見えないが向かっているのだろう。特に遺言男の速さは、虹家と鳥家の空を飛ぶ獣機と同じと思えた。乙も、獣族最速の虹族と同じくらいだ。もし、虹族の完全変身なら敵わなかっただろう。だが、乙は酒の力を使い。ふらふらだが、戦う為の攻撃の形がない為に敵の攻撃が当たらない。奇跡と思えた。
「甲、何処だ。酒を飲ませろ」
 突然に、敵の攻撃がかすり始めた。その時に、乙は大声を上げた。酒で痛みを和らげる為か、それとも酒で、全ての身体の機能を柔軟に出来る。そう思っているのだろう。
「ふぁい、ふぁい」
 甲は、声を上げるが、変身獣の足元で震えていた。だが、何度も言われ、恐る恐る向かい出した。それでも、近寄れない。仕方がなく一本の瓶を、乙に投げた。
「遅い」
 乙は、飛び跳ねて受け取る。一口飲むごとに、人体機能の柔軟性が復活した。殴る、蹴るだけだったが、落ちている刀を拾うと、刺す。切るに変わった。
「大丈夫だな」
 遺言男は、乙の姿を見て安心した。そして、先ほど以上の敵を倒し始めた事を確認した。だが、遺言男は、誰構わずに殺す事は出来なかった。この世界に来たのは、連れ合い探しの為に来た。連れ合いが居ない場合は、時の流れの修正をしなければならない。赤い糸は、連れあいを捜す方向を示す物と赤い糸で傷を付けられる者の命を絶たなければ成らなかった。それは、自分が、この世界に来た為に世界の時間の流れが変わり、死ぬべき者が生きた時間の流れに変わったからだった。遺言男は、命を絶たないと行けない事を思い出したのだろう。大きな溜息を吐いた後、赤い糸を伸びる程伸ばし。鞭のように使いって敵にぶつける。殆どが何も無かったように通り過ぎる。だが、何回かに一回は血が飛び散る者がいる。その人物の所に、羽衣の力を使う事で、信じられない程の速さで向かった。そして、殺した後は、又、先ほどの所に戻る。その行動を、何度も何度も繰り返した。
「あの二人は凄いぞ。涙花の一族なのか?」
 二人の様子を見る為ではないが、避難民が船に入るのに時間が掛かり、心配になり視線を向けたら目に入ったのだ。
「し~ん。ぁ遺言男とおなっじのぉ変人に見えます~の」
 甘い声でしな垂れかかる。
「そうだな」
それしか言えなかった。避難の誘導に時間が惜しいが、それよりも、怒らせると怖い。そう本能で感じたのだろう。そう思う、表情が現れていた。
「お姉ちゃん。今度は甲板の上に案内しても良いのでしょう?」
「いいわよ、お願いね」
「涙花さん。女の人や子供が多いから、予定よりも、千、千五百人位は多く乗れると思うわよ。知らせられないの?」
「そうね。知らせないと行けないわね。長老達と話が出来てれば、う~む。このまま、来るのを待つしかないわ」
「そうですか、分かりました」
「来たらお願いね」
「はい」
「グゴォォー」
 竜が鳴き声を上げた。船に乗る為に集まっていた人々が、全て乗れた事への礼の様な鳴き声に思えた。その意味は獣には分かるのだろう。上空にいる全ての竜が同じ鳴き声を上げ、少し遅れてから五種族も次々と鳴き声を上げる。その喜びのような鳴き声も、十分、二十分、三十分と過ぎてくると、不審とも悲鳴とも泣き声のように思えてくる。獣の言葉の意味がわからなくても、感じ取れる。
「何故、飛ばない」
「飛べ、立っているだけでも苦しいのだ。孫の前では死ねない。早く行ってくれ」
「どうしたのだ?」
「早く、この場から離れてくれ」
 そう、悲しい泣き声に思えた。その言葉を聞いたからか、飛ばない苛立ちだろうか、上空の一匹の竜がゆっくりと降りてくる。それも手に触れられると思える程に近づいた。
「ひどい、鱗が剥がれている」
 涙花は悲鳴を上げた。信は竜の姿を見て助からない。そう感じ取れたからだろう。一言も声を出す事が出来なかった。二人は竜を見つめていたが、突然視界から消えた。
「涙花さん。どうしたのですか、何故飛び立たないのです。故障ですか?」
 竜家の長老は女性の為だろうか、半獣になっていた為に裸のようには見えない。それとも、命の火が消える寸前の為に自分の思う通りに変身が出来ないのだろう。そう思えた。
「まだ、乗れます。急いで連れてきて下さい。それと、私が戻って来た時に、どこに降りたら良いのか、それを聞いていません」
「避難を頼みたいのは、船に乗っている人だけです。今、戦っている人達は、船の安全を確かめしだいに逃がす予定だ。頼むから早く飛び立ってくれ、もう持ち堪える事が出来ない。頼むから急いでくれ、頼むから」
「え、町の人達が船にいるだけ」
 涙花は最後まで言葉に出来ず、嗚咽を漏らした。それを慰めようとしたのか、長老は幼子を癒すように頭を撫でた」
「そうだ、船に居るだけだ。だから、心の底からお願いする。助けてくれ、頼むぞ」
「はい」
 長老は船から飛び降りた。普通の変身が出来ないのだろう。人体機能の危機を無理やり起こして変身を試みたのだろう。
「長老、心配しないで後は任せて下さい」
 信は、言葉を掛けられなかったが、船から飛び降りる時、やっと声が出せた。そして、長老は竜になり、目で言葉を言われたように感じた。死んだら許さない。死ぬ気持ちで守れ。殺気を身体で感じて、そうだと確信した。
「うっうげぼ。うっうげほげほぉ」
 嗚咽も漏らしながら、船内に駆け込んだ。恐らく、操縦室に行ったのだろう。涙花は自分を責めた。一分でも早く来られたら一人でも多く助けられたはずだと、だが、心の底では別の考えもあった。船を貸して貰えなければ六獣族が死ぬはずだった。その事を都市の長老に感謝していた。涙花はホットしているだろうが、ある事を知れば自分の命を絶っていただろう。結局は獣族が死ぬか、自分の同族が死ぬかの運命だった。神は同じ数の命を要求していたからだ。
 最下部の二十三章をクリックしてください。

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