四つの物語を載せます
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第三十一章
道のお蔭で、一回目の旅立ちの時に千人が集まってくれたが、花と同じような症状が殆どだった。人々を見て、想像できない位の酷い戦だったと感じた。二度の竜機の飛行の時は、愛とリキが挨拶に現れた。皆が、愛を忘れるはずもなく、結婚をしたと聞き。無理やりのように竜機に乗せてしまい。一族全てで結婚式を行なった。愛は、「どうやって帰るのよ」そう、怒りを表していたが、本心ではないだろう。恐らく、時が過ぎてからだから恥ずかしかったのだろう。まあ、乙、甲も一緒だったから帰る心配はなかったが、分かれる時に、甲と乙の時はみてなさい。そう笑いながら声を上げた。蘭と甲は時期が近いだろうが、乙はまだ、一人だ。最後に祝福される人は想像も出来ない騒ぎになるはずだろう。もともと、馬鹿騒ぎが出来た気持ちは、前回も、二回目の時も怪我や病人が多かったが、死んだと思っていたのに、会えた喜びだろう。だが、戦だったのだ。死んだ人が多い。そして、会える期待も大きい。それで、慰める気持ちと、父や母や兄が素晴らしく、立派だと教える為と、二度と戦が起きないように、子供や病人などに、話を聞かせていた。 「涙花お姉さん。もう話しは終わりなの?」 「涙姉さん。お父さんとお爺さんに手紙を書いたから届けて」 涙花は笑みを浮かべながら涙を堪えていた。死んだと確認できた者の知らせは、大人でも、死んだと知らせても耐えられる者にしか知らせてない。特に子供には、病気や仕事で、この土地に来られないと話し、手紙を書かせていた。勿論、返事は来る。だが、別人が書いていた。 そして、三回目。竜機の最後の飛行日が近づく。前回の時は見送りや薬品などで忙しかったが、最後だからだろう。子供が竜機の見物と手紙を渡す者しか集まらなかった。 「お姉ちゃん。お爺さんは変身すると、どの位の大きさなの。後ろの竜機と同じくらい」 「はい、話は終わりよ。又、明日ね」 人には最後の飛行でも、竜機には壊れるまでの使命がある。種族と国の象徴として、子供達の夢や希望だ。 涙花は、楽しい事も悲しい事も、全てを子供達に伝えた。その子も又、子供に伝え続けた。その気持ちが竜機に伝わったのだろう。いつまでも壊れる事なく、証拠として、竜機は残り続けた。 最終章 PR 第三十章
第二十九章
「蘭。そろそろ、良いかな」 「そうねえ。殺気は感じられなくなったわねえ。大丈夫かな、良いかも知れないわ」 「わかった。出てみるよ」 「待って、私も一緒に行くわ」 二人が車外に出ると、乙は、うずくまり震えていた。 「何をしているの?」 蘭は、疑問に思い問い掛けた。 「あの、あの、あの、ここから動けないのです。身体が自由に動かないのです」 乙の身体の状態は、蛇に睨まれた蛙のような状態だった。 「そうでしょうね」 「助けてくれませんか?」 「それ位ならまだ良いわよ。愛と会えば殺されるわ。早く逃げなさい」 「でも、でも、動けません」 「もう大丈夫よ」 「本当に、そうなのですかぁ?」 乙は、恐る恐る手を伸ばした。 「早く逃げるのよ」 「でも、どこに逃げたら良いでしょうか?」 「それは、自分で考えるしかないだろう」 「私達が決めてもねえ。気に入らないかもしれないでしょう」 「馬は、どうしたら良いでしょう。返さなければ、この近くに居られないですよ」 「それは心配するな。また、借りなければならないだろうから、老夫婦の家の近くで馬を放すよ。それで良いだろう」 「それより、早く行きなさい。愛が、いつ来るか分からないわ」 「は~い~」 顔を青ざめ、振るえる声でうなずいた。 「乙、気をつけてねえ」 「邪魔者が居なくなったな」 「馬鹿ねえ。可愛そうでしょう。ふっふふ」 蘭は微笑みを浮かべながら、乙の後姿を見る事もなく、甲の目を見詰めていた。 乙は、とぼとぼと歩いていた。行き先は三通りしかない。近くの町には、愛が居る。元の東国は廃墟だから行っても無駄のはず。最後の選択は老夫婦の家しかない。そして、喉が渇いたのだろうか、老夫婦の家の近くの井戸の前に立ち尽くしていた。何分くらい経っただろうか、乙は涙をポロポロ流しだした。心の底から悲しいからだろうか、足に力が入らなくなり、座り込んでしまった。 「うっうう」 乙は、いつまでも涙を流し続け、日付が変わるが、動く事が無かった。 その、少し前の時間に、甲と蘭は、 「乙が居ると酒は飲めないからな。良い酒があるぞ。愛の連れ合いの誕生日が間もなくだ。それを乾杯として、飲まないか?」 「そうねえ。良いわよ」 「椅子に座っていてくれ、持ってくるから」 「楽しみにしているわ」 そう言うと、愛は車内に入らずに、御者に腰掛けた。 「蘭、グラスを取ってくらないか」 「はい、美味しそうねえ」 「そうだろう。少し時間が過ぎてしまったが、いいだろう。ん、どうした?」 「馬の鳴き声が聞こえたような」 「こんな何も無い所で、真夜中だぞ。誰も、居るわけ無いだろう」 「それもそうねえ。いや、気のせいではないわ。甲、やっぱり聞こえるわよ」 「そうか、ん。本当だ。誰だ」 甲は笑っていたが、耳を澄ましてみた。 「愛、愛みたいよ。何でなのぉ。一緒にいる男性は、あの時の子供なのかな?」 「そうだろう。大きくなったな」 「私ねえ、私ねえ」 愛は満面の笑みを浮かべ、馬上から、声を上げながら近づいてきた。 「愛、どうしたの」 蘭は、御者から降り、愛の元に近寄った。「あっ」 甲は、酒を飲まれる事が心配なのか、顔を青ざめながら車内に戻る。それとも、リキの飼い犬がいる。そう思い、初めてあった時の恐怖が思い出されたに違いない。 「蘭、私ねえ。毎年、誕生日になる日。十二時に贈り物を置いてから、朝まで、あの公園で、シロから一年間の出来事を聞いていたの。 だけどね。今回は、お父さんとお兄さんに見付ってしまったの」 「まあ、酷いわね」 「何で酷いの」 「だって、帰れと言われたのでしょう。それとも、泥棒と言われたの?」 「違うの、あのねえ」 「だから、どうしたのよ」 愛の煮え切らない態度に怒りを感じた。 「貴女が、リキの幼い頃からの想い人ですよね。そろそろ、リキと結婚して、一緒に暮らしませんか、そう言われたの」 「本当なの。よかったわねえ」 蘭は、そう言いながら、愛の耳元まで近寄り。そして、リキに聞こえないように囁いた。 (あの愛、歳の事は誤魔化せたの?) (私の事は飛河連合東国の人だと思っているわ。それでねえ。幼い頃に会って居たのは、私の母か姉でしょう。そう言われたわ) (リキもなのぉ) (そう見たい) 「愛、良かったわねえ」 「ありがとう。そして、お別れを言いに来たの。それに、馬も返しに来たわ」 「結婚式はするのでしょう。出席は出来ないけど、遠くから見て祝福するわね」 「ありがとう。だけど、飛河国に睨まれないように、内輪で済ました方が良いって」 「そう、なんか悲しいわねえ」 「ううん。一緒に住めるだけで嬉しいわ」 「そうよねえ」 「乙は居ないようねえ。甲、馬を返して来て、お願いして良いでしょう」 「愛、おめでとう。馬や他の事も心配するな。自分の事だけを考えろよ」 「うん」 「近くに来たら、遊びに来て下さい。慌ただしいですが、これで帰ります」 そう伝えると、愛はリキが乗る馬の後ろに乗り、幸せそうに話しながら町に戻っていた。 「蘭、乙をお姉さんの所に連れて行かないか、野垂れ死にされたら、寝覚めが悪いしなぁ」 「そうねえ。居る所は分かるの?」 「馬を借りた家にしかないと思うぞ」 「そう、私も行くわ。それで、車で行くの?」 「そうだな、車で行こうかぁ」 一頭引きの馬車に装い、出掛けようとした時だ。悲鳴のような怒鳴り声のような音が聞こえて来た。だが、恐怖は感じなかった。獣が居る訳が無いのは分かっていたからだ。 「お姉ちゃんかな?」 そう感じた。 「蘭、違う。と分かったら車内に入れよ」 「やっぱり、お姉ちゃんだ」 自分の名前がハッキリ聞こえたからだった。 「病人がいるのよ。建設途中の新都市跡まで連れて行ってくれない。お願いよう」 「私一人で馬を返してくるよ。お姉さんとゆっくり話す機会がなかっただろう」 甲は、そう言葉を掛けると、蘭も信達もうなずいた。花だけが、不満そう態度だ。 最下部の三十章をクリックしてください。 第二十八章 「んっ」 「嫌な感じねえ」 「この近辺には西国の者は来ないはず。だが、これ程の殺気は獣族しか居無いはずです。 まだ、我々には気が付いてないようだが、丁度良い。先を急ぎます」 三人は、今進んで来た後ろを振り向いた。 「だが、殺気を感じた方角は」 「信ありがとう。蘭達なら大丈夫と思うわ。あの戦いを生き残ったのよ」 「そうだな、考え過ぎか」 「何をしているのですか、急ぎますよ。もう少しで、私の家に着きます」 「済まない。急ごう」 暫く歩くと、道は、二人に声を掛けた。 「着きました、あの家です」 「ほう」 (可なりのぼろ小屋だな。剣を隠す為に好んで選んだのかな。それにしても、男の満面の笑みはなんだろうか?) 「どうします。少し休んで行きますか?」 「そうだな、喉が渇いたなぁ。休まして頂こうか、涙花、そう思うだろう」 信は、男の笑みの理由を知りたい。そう個人的な考えだけなら、先を急いだのだが、涙花の疲れた姿を見て、そう感じた。 「そうねえ。良いわよ」 「美味しい、お茶を飲ませますよ」 そう言うと、道は駆け出した。犬がお帰り。そう吼えているのだろう。それを無視して、家に駆け込んだ。 「花、帰ったよ。信と涙花を連れてきたぞ」 「信様と涙花様でしょう」 女性と思えない。男のような強さを感じる声が、小屋から響いた。 「信で良いですよ。奥さん」 信は、先ほどの笑みの理由が感じ取れた。主人としての態度だろうか、それとも、愛情が溢れた。その声を聞きたいのだろう。 「ごめんなさいねえ。お邪魔します。あっ」 「どうした」 涙花の驚きを感じ取り、信は即座に、涙花の前に出て、身を守った。 「気持ち悪いでしょう。ごめんなさいね」 花の左腕が複雑に折れ曲がっていた。 「医者」 涙花は、そう言葉を掛けようとしたが、西国の者から逃げている者に、それを口にする事が出来なかった。 「花、約束は果たしたぞ。これで、俺の奥さんに成ってくれるのだろう」 「静かにして、その話は後よ。信様、竜家の長老から、鍵を渡すように言われました」 「ありがとう」 「いいえ。それで、鍵の隠し場所は、犬の習性を利用しました。何か光り物を犬に与えれば、鍵の場所に案内してくれます」 「ありがとう」 「ああっお茶を淹れますねえ」 「いらないわ。信、行くわよ」 涙花は、不機嫌と言うよりも、信じられない。そう、思うような怒り顔だ。 「あの?」 「あんたも来るの」 涙花は、そう言いながら、無理やり道の手を引っ張り、小屋の外に連れ出した。 「えっえええ」 「行って来なさい。待っているからねえ」 花は、心の底から安堵した表情で送り出した。 「信。犬と剣だが、鍵だか分からない物は任せるわ。道、必ず。花さんを竜機の所に連れてくるのよ。腕だけでは無いと思うわ。完全の完治と行かないと思うけど、何とか治して見せるわ。良いわね」 涙花は、家に残り、花の容体を確かめた。 「涙花、話は済んだのか」 「なに、それは、剣のように大きいけど、突起が何個も付いて、武器としては役に立ちそうにないわねえ。何か剣というよりも、突起が沢山あって、添え木には丁度良いわねえ。長い突起にトマトが生ると可愛いわよ」 「なななっ、トマトだと、この素晴らしさが分からないのか」 「分からないわ」 馬鹿馬鹿しいのだろう。あっさりと答えた。 「私は、家に入ってもいいですよねえ」 「ああ、そうだ。信、あの人を一緒に連れて行っても良いかな」 「そうだな、一緒に連れていく方が良いだろう。獣機の中にも医療施設があるはずだ」 「そう言うと思っていたわ。早く奥さんを連れてきなさい。信がおんぶしてくれるって」 「えっ」 信と道は満面に嫌気を表した。信は背負う事に、道は、自分以外の男に肌を触れさせたくないのだろう。そう感じられた。 「馬鹿ねえ。おんぶくらいで嫌気を表してどうするの、診察や治すのに肌に触れるのよ」 「うっ」 「早く、準備と奥さんに話してきなさい」 道が小屋に入ると、即座に怒鳴り声が響いた。だが、道の声は聞こえない。一方的に花の話し声だけが響き渡るだけだ。 「説得しに行った方が良いのではないか」 「馬鹿ねえ。今言ったら殺されるわよ。それに話がこじれるわ」 「そうか」 「そうなの。ただ恥ずかしがっているだけ」 「あの怒鳴り声が、恥ずかしがっている?」 「そうよ。女心が分からないのねえ」 「そうとは思えないが」 「あの手の男は泣き落としねえ」 「ん、静かになったな」 「ほらねえ。そろそろ出て来るわよ」 「おっ」 信は二人の姿を見て驚き、声を無くした。 (涙花、男の頬が腫れているぞ。涙花の予想は外れたらしいなあ) (本当に馬鹿ねえ。恥ずかしい気持ちを隠す為に叩いたのよ。分からない人ねえ) (そうか、顔の形が変わっているぞ) 二人に聞こえないように耳打ちした。 「大丈夫なの。おんぶしてもらったら?」 「大丈夫だ。気にするな」 顔を真っ赤にして答えた。恐らく死ぬほど恥ずかしいのだろう。涙花は、自分なら喜んでおんぶしてもらうのに、そう思える。不満顔を表していた。 「蘭の所に急ぎましょう」 (大丈夫か、殺気を感じたのだぞ) (何度もしつこいわよ。大丈夫よ) 涙花と信は囁き合った。 「そうだな、行こう」 「すびばぜん」 「何を謝っている。関係ないだろう」 「ふぁい。そうでず」 信と涙花は笑いながら歩き出した。花と道は、自分の事で笑われた。そう感じて、気分を壊したのだろう。何度も問い掛けながら二人の後を追った。 最下部の二十九章をクリックしてください。
第二十七章
愛に殺されるかもしれない。乙は、悩み悩んで、一歩も進める事が出来なかった。 「う~ん、どうしよう。毎年、適当な菓子を用意するのだが、今回は、そのような時間が無かった。これでは、馬を貸して貰えないだろう。う~ん、時間に遅れても、馬を連れて行かなくても、馬を盗んでも殺されるかもしれない。どうしたら良いのだろう」 乙は、頭を抱えながら座り込み、泣きながら呟いていた。 「どうせ、殺されるのだ。盗むしかない」 死にそうな顔で立ち上がった。そして、神からの贈り物だろうか、ポケットから何かが落ちた。金属の音が耳に入り、不審そうに、それに視線を向けた。 「懐中時計、愛が持ち忘れたのかぁ。これで、頼んでみよう」 もう、夕陽が沈みかけていた。乙の目には、向かう家しか入っていない。恐らく、自分が二時間近くも悩んでいた事も、今の正確な時間も分かっていないだろう。そして、駆け出し、家の扉を叩いた。 「はい、今開けますよ」 その言葉の後に、家の中で囁き声が響いた。 「婆さん、やはり来たぞ」 「私の事よりも、開けるのが先でしょう」 乙には室内の声が聞こえなかった。それで、もう一度、扉を叩こうとした。 「今年も来ましたね。待っていましたよ」 「済みませんが、今回は、この懐中時計で馬を貸して貰えないでしょうか?」 「変わった品物ですなあ」 「なんですのぉ。甘い物、辛い物、なんですのぉ。美味しそうな物なのでしょう」 「今回は懐中時計と言う物らしいぞ」 「済みません。来年は必ず。食べ物を持ってきますから、馬を貸して下さい」 乙が、余りにも低姿勢な態度だからだろう。老夫婦は、不気味な笑みを浮かべた。 「まあ、中に入って下さい」 「あのう、分かりました」 乙は、毎年菓子を渡すと、直ぐに帰るのだが、今回は懐中時計の用途などを教え、馬を借りる為に説得しようとした。 「ほう、太陽の位置が分かるのですか?」 「そうでなくて、時間が分かるのですよ」 「おお動いているぞ」 「馬を貸してください。返しに来た時に、どの様な事でもしますからお願いします」 「ふぅ、ゆっくり出来ないのですか、良いですよ。今度は話を聞かせてください。今日は楽しかったのですよ」 「済みません。お借りします」 老夫婦には簡単な挨拶で済まし。死ぬ気で愛の元に向かった。やはり、愛はやはり車外で待っていた。遅くなり殺されると思っていたが、愛は泣いていた。乙には分からないのだろう。愛は約束に遅れるからでも、会える時間が削られる為でもない。もし、時間に遅れて居なかったら、それが怖いのだ。早く着く事が出来れば、自分から声を掛けられるが、遅れたら声を掛けられない。いつも怖いのだ。歳も離れ、私だけ歳を取らない。怖がれる事もなく、毎回、毎回、満面の笑みを浮かべ話を掛けてくれる。 「お姉ちゃん、早いねえ。今度は、僕が待っているからねえ」 そう言って笑ってくれるから、話が出来るのだ。それでも、笑みを見るまでは、心の中で化け物。そう言われる事を恐れていた。愛が、今までの事を振り返っていると、 「愛、遅れて、ごめん。泣かないでくれないか、まだ、間に合うのだろう」 「話をしている時間が惜しいわ。だけど、これだけは言っとく、女の涙は高いのよ。あなたは、女性の涙の原因で、女性の涙を見たのですからね」 「うっ」 愛は視線で殺せるような目で、乙を見つめた。乙は、まるで、蛇に睨まれた蛙のようだ。 「蘭、愛は泣き止んだようだぞ」 「甲。駄目よ、出ないで、石にされるか、死ぬかよ。女が泣いた後は、満面の笑みを浮かべるか、殺されるかなのぉ。そんな事も分からないの。女の子を泣かせては駄目。そう、親に言われなかったの?」 「乙が帰ってきたから笑っているかも」 「本当に馬鹿ねえ。殺気を感じないの?」 「殺気」 「そう。甲、乙に言った方が良いわ。愛が帰る前に、何所かに消えた方が良い。とねえ」 「大袈裟だろう」 「それ程の事なのよ。女の涙はね」 「分かった。伝えて来るよ」 「まだ駄目よ。死にたいの、この殺気の状態では二時間位は出られないわよ」 「乙は死んで居るのでは無いのか?」 「台風の目と同じよ」 「台風の目?」 「そうよ。殺気を放って、自分が死んでは困るでしょう。だから、自分の中心では何も起きてないのよ。乙は中心にいると思うわ。それだから、まだ生きているはずよ」 「そうなのか?」 甲は半信半疑だったが、蘭だけが感じたのでは無い。まだ、信達も近辺に居た。 最下部の二十八章をクリックしてください。 |
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物語を書いて五年になりましたが、私は「左手の赤い感覚器官(赤い糸)と「蜉蝣(カゲロウ)の羽(背中にある(羽衣)の 夢の物語が完成するまで書き続ける気持ちです。
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