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第十二章、結婚式まで十一日前。薫は両親を連れて行けるか、年一度の出掛ける理由は?
 そして、四人は、朝食を終えると、車に乗り目的の場所に向かった。
「すん、すん」
 涙は、車が目的の場所に近づくにしたがい、目が潤み、泣いているように思えた。
「ねえ、江見さん、国は何処なのかな?」 
 涙が泣く理由を避ける為か、それとも、この場の雰囲気を変えようとしたのか、運転しながら、薫と江見に話を掛けてきた。
「あの、ああ中国とチベットの中間にある国だよ。新楼蘭王国だったはず」
 薫は、思い付く事を並べて、嘘を伝えた。
「えっ」
 江見は、突然の事に戸惑った。
「ねえ、そうだったよね」
「はい、はい、そうです。新楼蘭王国です」
 話しの意味が分かり、その嘘に同意した。
「う~ん、そう、まさか、お姫様」
「いいえ、違いますよ。でも、人口が少ないから血は繋がっているはずです」
「ねえ、お父さん、今日の昼食はなに?」
 涙は、この場の話しに驚きもしないで、自分の思いを口にした。これから行く場所の事だけを考えていた為に、耳に入らなかったのだろう。
「今日は、洋食らしいぞ」
「そう、楽しみしているわね」
 涙の言葉では、自分が楽しいとも、行き先に、誰か居る。そうとも感じ取れた。
「薫も江見さんも楽しみしていてくれ、美味しいぞ。私の友達がホテルの料理長をしているから、毎年、毎年、美味しい弁当を作ってくれるのだぞ」
「本当、楽しみだね。江見さん」
「うん、楽しみです」
 四人が乗る車は、国道四号と言う道を北へ、北へ進み。古川市に入った。そして、あるホテルの駐車場に車を止めた。父親だけが車から降り、そして、数十分後、腰の低い男が父と現れた。恐らく、料理長と思えないから給仕だろうか、父と二人で料理を持ってきた。
「養子でも貰ったのか?」
 後部の荷物入れに料理の袋を入れながら、男は父に話を掛けた。それも小声でだが、驚きを感じる声色だ。でも、車内に聞えないほどの声だった。
「私の息子と息子の嫁になる人だ」
「そうか、何時も二人だから子供が居ない、そう感じていたよ。そうか、なら、今日の主役は喜ぶだろうな。弟に会えて、その嫁さんにも会えるのだからな、良かった。良かった」
「そう思うかな」
「そう思うよ。楽しんで来い。食器などは来年でもいいからな、ゆっくり楽しんで来い」
「うん、そうするよ。ありがとう」
「父さん、今の人が料理長なの?」
 車が発進すると、薫が問い掛けた。
「そうだぞ。本当なら一人一万円近くする料理だからな、それを材料費だけで作ってくれているのだぞ。本当に美味しいからな」
 薫は、人柄で判断して聞いたのだった。人の上に立っているようには見えなかった。まるで、見習いと思えたからだ。
「着いたぞ」
「ん?」
「はい」
 車内に父の声が響いた。ホテルを出て一時間位だろう。薫と江見は、車の中が心地よい温かさで寝ていたのだ。何処か分からないが河原に車が止めてある。車外では涙が料理を並べている。そして、並べ終わったのだろう。何故かカメラを手に持ち、待っているように思えた。二人は寝ぼけて車外を見ていたが、それが薫と江見を待っていると分かると、即座に車から降りた。
「ごめん、お母さん」
「すみません」
「いいわよ。行きましょう」
 そう言うと草むらというか、小さい丘を登っていく。土手からでは判断が出来なかったが、誰が見ても墓地としか思えなかった。江見は好奇心で辺りを見ているが楽しそうだった。薫だけが、不審な表情を表している。祖父や祖母の墓は、この地で無いからだろう。まったく、誰の墓なのか、それとも、他に何か理由があるのかと感じていたからだった。
 そして、ある墓の前に、母と父が立ち止まった。やっぱり墓参りだったのか、そう感情を表していた。でも、誰だろう。そう、表情を変えていた。そして、誰かを聞こうとしたのだろう。その時、
「薫、この墓は、お兄さんよ」
「え」
 薫は、始めて聞かされて驚き、言葉を無くした。
「江見さんも、私の話を聞いて。この墓は、薫の兄の墓なの。事故でね。一才で死んだの。名前は徹、とおるって言うの」
「はい」
 二人は、一言しか言えなかった。そして、父と母の様子を見詰めていた。
「徹、今日の料理は凄いぞ」
「徹、嫌いな物あったら残していいからね。ゲッホ、ごめんね。好きな物も嫌いな物も分からない駄目な、お母さんよね。ゲッホ、ゲッフ」
 本当に目の前にいるかのように、言葉を掛けながら墓の目の前に料理を並べた。涙は昔の事なのに亡くした事を思い出したのだろう。嗚咽を漏らしていた。
「涙、私が写真を撮るから」
「大丈夫、大丈夫だから」
 涙は嗚咽を漏らしたから、少し気持ちが落ち着いたのだろう。写真を撮り始めた。それでも、一枚は失敗したのだろう。ごめんね。そう呟き、もう一枚写真を撮った。
「お父さん、これ」
 涙は、直に写真が見られる物だから選んだのだろうか、それとも、今の新しい物は難しくて使えないのだろうか、それは分からないが、カメラを連れ合いに渡し。写真の写りが浮き出てくるまで、見詰め続けた。
「徹、お父さんとお母さんは、河原でご飯を食べてくるね」
 その写真は、墓石の前に料理が並べてある物だった。確りと写っているのを確認すると、墓石に言葉を掛けた。
「薫、江見さん、待たせたね。車の所に戻って昼食を食べよう」
「はい」
「うん」
 江見は悲しみの為に声が出なく、頷いた。もし、事故なら、私か私達の一族、竜宮城の時を飛び、連れ合いを捜す為の犠牲か、そう感じてしまった。
「ごめんね、江見さん。私達は正気だからね。ただ、薫には言えなかった。死んだと言えなかったの。薫が歳を取るにしたがい、何て、何て言うかを墓の前で相談していたら、このようになってしまったの。確かに分かっているの、変な事だって、でも、私達が変だからって、薫を嫌いにならないでね。お願いね」
 涙は、江見が言葉を無くした。その理由が自分達にある。そう感じたのだろう。薫の事が心配になり、その心の思いを、江見に伝えた。
「いいえ、そのような事は考えていません。一才で亡くなった事が悲しくて、声が出なかったのです。本当に悲しくて、悲しくて、ゴッフ」
 江見は、自分達が原因だ。そう、又、考えてしまい嗚咽を漏らした。
「ごめんなさい。変な事を聞いて、さあ、食事にしましょう」
 涙と江見は、二人で支え合いながら、前を歩く二人の男の後を追った。
 そして、車の所に着くと、徹の話題を口にする事が無く。これから、食べる料理の話題だけで盛り上がった。朝食を軽くしか食べなかった事もあったのだろう。夢中で食べていた。少し空腹が癒されたのだろう。視線を弁当から紙袋に興味が移った。薫が、袋の中に包みがあるのを見つけた。
「なんだろう。お菓子かな」
 そう呟き包みを開けた。その音で、二親は気が付いたが遅かった。もう包みが破られたからだった。江見も気が付き振り返った。それは、写真を入れる物だった。
「お父さん、お母さん。写真を入れて立て掛けよう。毎年しているのでしょう。お兄さんにも見せているのでしょう」
「だって、薫も江見さん、あまり気持ちの良いものではないでしょう。いいわよ。気持ちだけで嬉しいわ。ねえ、お父さん」
「そうだよ。もう、秘密でない。誰にでも言えるし、一年に一度でなくても来られるから」
「気持ち悪くないわ。私のお兄さんですもの。この景色も見せたいしね。会話にも入って欲しい。お兄さんに、私の事も分かって欲しいわ」
「そう、それなら」
 写真を、写真立てに入れ。誰でも視線に入る所で、景色も見られる所に置いた。又、楽しい会話と食事を始めた。今度は、自然と徹の事が出てくる。時間もあっという間に過ぎ。日が沈みかけた頃、
「薫、江見さん、私達、徹の食器を片付けてくるね」
「あ、いいよ。父さんと母さんは休んでいて、俺が片付けてくる」
「薫、高そうなお皿よ。壊したら大変よ。お父さんとお母さんに任せましょう」
「うん、そうだね。ごめん。父さんと母さんに任せる」
 薫は、江見に腕をつねられ、意味を理解した。
「ありがとう。江見さん」
 涙が言葉を返した。
「え、何です。私、不器用だから壊したら大変。御免なさいね。お願いして」
「うん、うん、片付けてくるわ。待っていて」
「涙、行こうか」
「うん」
 二親は、墓のお前に着くと、徹が居るかのように話しながら食器を片付けていた。息子と嫁が居ない為に涙腺もゆるくなったのだろう。それに、息子も嫁も気持ちの優しい。それも嬉しかったに違いない。その間に薫と江見は、自分達が食べたお皿などを片付けて、二親を待っていた。
「ねえ、江見さん、どうやって竜宮城に連れて行く事が出来る。それ専用の機械かなにか持ってきた。それで行けるのかな」
「機械は持って来ていないし。使わないわ。私と薫が心の底から願えば、確認の門が連れて行ってくれるわ。でも、出来れば、古い門か家があれば良いわね」
「そうか、なら適当な神社にしよう。そこを親戚の家とでも言って連れて行こう」
「いいわよ。向うに着く事が出来れば適当な嘘も付けるし、本当の事を言っても良いわ」
「大丈夫よ。帰りは玉手箱を渡して、時間の修正や記憶の修正もしないと駄目だから」
「そうか」
「ごめんね。薫が住んでいる所より文明が進んでいるから、機械など見たら分かる人は分かるらしいの。それを利用されると困る事になるわ」
「そうか」
「うん、でも、竜宮城の事や、もう帰らない事とか、それを話すのは薫に任せるわ」
「分かった。それなら、神社は最後の欠片があった所にしよう。あそこなら一度飛んで竜宮城にも行った事があるからいいだろう」
「そうね。あの神社なら大丈夫よ」
「そうだろう。それで、これからの事を願うとか行って、一緒に願ってもらおう」
「そうねえ、そうしましょう」
「なら時間は明日の昼にしよう」
「なに、何の話をしていたの、明日がなに、何かあるの?」
 薫と江見は話しに夢中になり、二人が帰って来たのに気が付かなかった。それでも、竜宮城の事は聞かれなかった事に胸を撫で下ろした。
「ああ、明日ね。これからの事とか結婚式を無事に挙げられるとか、それで、お参りしたい。そう話しをしていたよ。ねえ、母さん達も一緒にお参りに付き合ってよ。駄目かな」
「そうね、いいわね。ねえ、でも無事に式を挙げるとか、って、物騒な話ね」
「そうだな。まさか、本当にお姫様で命が狙われている。それは無いよな」
「あはぁははは、無い、無い、江見さん、綺麗だろう。結婚式の時に男が現れて、連れられるような気がして、それで、お参りでもしょうかなってね」
「そうか、そうか」
「そうかもね。薫、心の底からお願いしなさいよ」
「もう、母さん。酷いよ」
 父と母は満面の笑みを浮かべた。今はもう、普段の父と母だった。
「そろそろ、出掛けようか」
「そうねえ、お父さん」
 涙は嬉しそうに写真を胸に抱きしめながら答えた。
 途中で寄り道をしなくていいからだろう。高速道路を使って家に向かった。
「薫、お父さん。今日、すき焼きにするから材料買ってきて」
「え、何で、家に着く前に言ってくれれば良いのに」
「嫌なの。疲れているのは分かります。私も疲れているわ。だから、すき焼きにしたいの。お父さんは買ってくるだけでしょう。私達は料理をするのよ。これからね」
「買ってきます」
「薫、薫も一緒に行ってきなさい」
「え、涙姉さん」
「もう、お母さんでいいから行って来なさい」
「はい」
「薫、一番高い肉を買ってこよう」
 涙は、連れ合いが言った言葉は聞こえているはず。だが、表情を変えない、言葉を返す事もしなかった。まるで、使いに出すのは口実に感じられた。車が走り出す音が聞こえると、二人が出かけた。そう感じたのだろう。江見に話しを掛けた。
「江見さん、二つだけ、言っておいた方が良いと思うから伝えるわねぇ」
「はい」
 江見は畏まった。
「一つ目はね。なるべく怒りを溜めて、時々怒りを表したほうがいいわよ。ここって時に使えば、怒りも発散が出来るし、何でも聞いてくれるわ」
「あはは、すみません。そうします」
「いいのよ。さっき見たいにねえ」
「はい」
「二つ目は、薫は料理の事は何も言わないで食べるわ。嫌いな物は無いみたいに、それほど何でも食べるわ。でもね。カレーだけはいろいろ言うのよ」
「そうなのですか」
「そう、だから、カレーの作り方を教えるわ。そうすれば、何も言わないと思うの。それだけが心配だったから、今から作りましょう」
「はい、でも、すき焼き作るのですよね」
「カレーはねえ、一晩は置いた方が美味いの。それに、もし、失敗しても食べなければ良いでしょう。大丈夫よ。私と一緒に作るのだから失敗はしないわ」
「でも、作り終わる前に、薫とお父さん、帰って来るような気がします」
「それは大丈夫よ。高い肉を買う。そう言っていたでしょう。選ぶのに何件も店屋を回るから、可なり時間は掛かるはずよ。お父さんは、そう言う人だからねえ」
「はい、お願いします」
「まず、ジャガイモの皮むいてくれる。私、にんじんを切るから」
「はい」
「料理は出来るのね。ジャガイモの皮をむいた物を見たら分かったわ。ごめんね。試すような事をしてね」
「いいえ、でも、何でも作れる訳ではないですから」
「そう、カレーは作った事はあるの。あっ、水は多めに沸かすからね。もっと入れていいわ。そして、いろいろ切った野菜を入れる。野菜が煮えたら肉を入れます」
「はい」
「今はインスタントのカレーがあるから、それを入れて終わり。私、ここで、蜂蜜を少々いれて、すりおろした林檎を入れるの。後は、ある程度水分が無くなるまで煮込んで終わりよ。何度か作って物足りない。そう感じたら、私がもっと専門的な作り方を教えてあげる。そして、肝心なのが、香辛料が嫌いだから、最後ににんにくを入れて誤魔化すのよ」
「うん、ありがとう。薫、美味しい。そう言ってくれるかな」
「大丈夫よ。今まで作っているところを見ていたけど、問題ないわ」
「涙姉さん、薫とお父さん、遅いわね」
「そろそろ、来るわ」
「あっ」
 家の中に車の排気音が聞こえて来た。
「ねえ、帰って着たでしょう」
「はい、涙姉さん」
 玄関の扉が開く音が響くと同時に、
「お母さん、お母さん、お母さん」
「どうしたの、薫、何か遭ったの、薫」
 薫は、居間に駆け込んできた。
「父さんが、父さんが、百グラム二千円の肉を買ったよ」
「ほう、そう、良かったわね」
 声色では正常を装っているが、眉がピクピクと痙攣している。怒りを感じているはずだ。
「それで、父さんは、何をしているの」
 涙の眉はますます、痙攣した。
「今呼んで来る。父さん、父さん、お母さんは怒ってないよ」
 
「涙、この肉はすき焼きには合う。そう言っていたぞ」
「そうでしょうね。早くもってきて準備するから、まっ、まさか肉だけでないでしょうね」
「大丈夫だ。買って来たよ。今、持ってくる」
「はっあー、疲れる」
「美味しそうな肉だろう」
「そうね。でも、何なの、この山はなんなの」
 涙は頭を抱えた。肉もだが、野菜も四人では食べられないほど買ってきたからだ。
「え、必要な物を揃えたぞ」
「あのねえ。この分量はなんなの、って聞いたのよ」
「ああ、多く買うと安いって言われたからな」
「お母さん、お腹が空いたよ」
 薫は、二人に苦情を伝えた。
「ああ、もういいわ。私が言ったのは冷蔵庫に入れて、他は物置に入れてきて、いいわね」
「はい」
 涙は、バナナの叩き売りのようにテーブルを叩きながら必要のない物を知らせた。
「江見さん、私以上、苦労しそうね。がんばってね。幸せを祈っているわ」
「お母さんからは、そう見えます?」
 二人の女性は、料理の準備をしながら会話をしているが、手元に狂いは無い。涙は当然だが、江見も、やや遅いが、それに付いてきている。料理が好きなのか、小さい頃から親に料理をならったのだろう。その手先を見て、涙は、微笑みを浮かべている。その笑みは、息子を安心して任せられる。そう感じられた。
「一人暮らしをしているのに、分からないのかしらね。何を食べていたのかしら」
「薫から、美味しい紅茶を頂きました」
「そう、なら家で何か作って食べているのね。少し安心したわ」
「う~ん」
 江見には、涙の話しの意味が分からなかった。この世界で部屋を見たのは、薫の部屋と薫の両親の部屋だけだからだ。一人暮らしの部屋は薫の部屋と同じく、部屋の中は本で埋まっている。それが普通と考えていたからだった。
「涙、終わったぞ」
「お母さん、終わったよ。まだ、食べられない」
 二人の声を聞き、涙と江見は手を止めた。
「お茶碗とか出していて、そろそろ、食べられるわ」
「もうー出来たら、先に食べるぞ」
「あの」
 薫は、言葉に詰まった。食欲と江見とどっちを取るか迷った。
「ごめん、江見さん、先に、馬鹿な男を食べさせるわ。このままだと暴れるかも」
「良いですよ。薫も、先に食べていて、良いわよ」
 数分後、全ての野菜を切り終え。四人全てが席に着いた。
「涙姉さん、徹さんが写っている写真を置いたらどうですか、お椀だけでは寂しいですよ」
「はっあー、ありがとう。でも、一才だったの。写真は一枚もないわ」
「ごめんなさい。それなら墓石の写真でもあったほうが寂しくないです」
「ありがとう。江見さんが、そう言ってくれるなら喜んで置かして頂くわ」
「はい、良いですよ」
 写真を置くと、話題は墓参りに戻り、徹の話で盛り上がった。そして、薫の話、江見となり。結婚式の話になった。二人は、竜宮城の話題では、ほとんど、嘘で誤魔化した。
「父さん、お母さん、神社でお参りしたいけど、付き合ってくれる。良ければ、明日、朝食を食べたら行きたいけど駄目かな」
 薫は、話を誘導が出来て、ホッとした。
「私はいいわよ。父さんは大丈夫なの?」
「息子の一大事だ。勿論、休んでお参りするよ」
「ありがとう」
 江見と薫は、同時に喜びの声を上げた。
「お風呂が沸いているわ。さっき点けて来たの、もう入れるわ。勿論、一人、一人入るのよ。分かっているわね」
「お母さん、何を言っているの、当たり前でしょう」
 その言葉を最後に一人、一人と汗と疲れを癒すために風呂に消え、寝室と消えていった。
最後は、涙だけが最後まで残り、徹の写真を見ながら呟いていた。
「やっと家に帰ってこられたわね。これからは何時でも一緒よ。徹、おやすみ」
 涙が、居間から消えると、写真はテーブルに置かれたまま、居間の灯りは消された。
 最下部の十三章をクリックしてください。

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自己紹介:
物語を書いて五年になりましたが、私は「左手の赤い感覚器官(赤い糸)と「蜉蝣(カゲロウ)の羽(背中にある(羽衣)の 夢の物語が完成するまで書き続ける気持ちです。
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