四つの物語を載せます
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第五章
「今日子、お帰り」「ただいま」 今日子は、日の出の頃に洞窟に入ったが、予定の通りに、日が沈む間際に洞窟を出る事になった。父親の想像の通りに、娘は満面の笑みを浮かべて現れた。それでも、一つだけは想像とは違う事があった。自分の連れ合いの明子(あきこ)が悲しい事でもあったのだろうか、泣きそうな表情だったのだ。もしかして母親は、自分の娘の身体の中に男性の意識がある事に気が付いたのだろうか、その様子を見て妻に話をかけた。「明子。如何したのだ?」「何でも無いわ」 返事を返すと同時に、今日子が、父に話をかけた。「お父さん。今から出掛けていいわよね」「駄目だと言っても会いに行くのだろう」「・・・・」 父に視線を向けて返事を待った。「行って来なさい。だが、遅くても十時までには戻るのだぞ。良いな」「・・・・」「良いな。その頃になれば食事の準備も終わっているはずだ。待っているからなぁ」「はい。行ってきます」 今日子は、父に返事を返すと、洞窟の入り口に向かった。そして、出ると眩しい訳でもないのに、立ち眩みのように身体がふらついた。その様子は、始祖の真が身体から出た証拠だった。その事には、二親も娘も気が付いていなかった。「久しぶりの外だぁ。だが、想像以上に変わってしまった。私が魂になって最後に見たのは、人工物など無い森林だったはずだ。どの位の年月が過ぎたのだろう」 真は、今は月と言われている箱舟で死んだ時の思い出と、魂になって洞窟に保存される最後の景色を思い出していた。「うぉおおおお」 真は、自由になった喜びからだろう。叫びながら上空に上っていった。そして、驚くのだった。あまりにも想像と違う事に言葉を無くすのだ。「えっ・・・・・」 辺りの景色を見回し、見た物が信じられないのだろう。更に上へ上へと上がり続ける。「馬鹿なぁ。何という数の人工物だ。人口は何人だぁ。これでは探しようも無い」 真は、地球に向かう時の人数は一万にも満たなかったのだ。それで、増えたとしても十倍と考えたのだろう。それなら、一人、一人の男性の意識を読もうとしたのだ。だが、完全に無理だと判断した。「あっ、静の生まれ変わり、今日子の赤い感覚器官を頼るしかない」 即、先ほどの洞窟に向かったが、今日子が居るはずがない。「居るはずがないかぁ。晶とか言う男に赤い感覚器官を見せに行ったのだからなぁ。仕方が無い。二親の近くで待つしかないなぁ」 洞窟から離れ、母屋へ、二親の声が聞こえる方向に向っていった。だが、後、五分早ければ、今日子の声も聞こえただろう。 最下部の六章をクリックしてください。 PR 第四章 「月の主様。いや、始祖様は、真様と言ってね。后の静(しずか)様。愛称では、日姫と言うの。それと、六人の側室がいたのよ」 「ほう」 「静様は、心底から真様を好きだったのだけど、一週間に一度しか会えなかったの。真様は、子孫を残すのがお役目なのでしょうね。1日後と、側室の部屋に行かなくてはならなかったの。清楚で可憐で心の優しい日姫様は、快く真様を送り出すのだけど、会えない苦しみから床に就くのが多かったらしいわ」 「会えない苦しみは分かるわ。そうよね。病気にでもなるわ」 「そうね。でも、真様も、障害の有る体だったから、地球に着く前には、床から起きられない状態になったらしいの。でも、地球の姿だけは見て亡くなったらしいわ」 「そう、なら良かった」 「でね。当時では、主の後を追って死ぬのが普通だけど、日姫様と六人の側室は、始祖様の転生を信じて、残りの将来を転生の儀式で人生を使ったらしいわ。勿論、自分達の転生の儀式も忘れるはずがなかったわ」 「そうよね。自分達も転生しないと意味がないわね」 今日子は、母の話に返事を返しているが、まったく感情が表れていない。恐らく、晶に赤い感覚器官を見せている場面を想像しているのだろう。 「私の話を聞いているの?」 「はい、はい。聞いていますよ」 「この話をしたのはね。これから始祖様のお墓をお参りするでしょう。その時、何か起きても驚かないでね。まだ、転生が出来なくて相手を探すのに悪戯するのよ」 「なっ、何が起きるの?」 「金縛りか、幻聴では無いわよ。始祖様の声のはずなの」 「お母さんも聞えたの?」 「聞えたわ。もう昔だから何を言われたか忘れたけどねぇ」 「そう、憶えていないなら怖がる事でないのねぇ。安心したわ」 「何を言っているの。もし体を乗っ取られたら如何するのよ」 「お母さんは如何して助かったの?」 「それはね。心の底から祈るの。楽園に住めるのも健康体として生まれたのも、始祖様のお蔭です。有難う御座います。そう言いながら何度も祈るの。声が聞こえなくなるまでね」 「はい」 母の話を嘘と思っているのだろうか、感情がまったく感じられない返事を返した。 「本当に分かっているの。心の底から祈るの」 「はい、はい」 「まあ、始祖様の墓は、まだまだ先だからいいけど、練習と思って他の御先祖様も同じように真剣にお参りしなさい。私が見ていてあげるからね」 「はい」 (げ。結局、説教を聞かされるのね。うっうう、泣きたくなるわ) 今日子には、片道二キロは永遠と思える距離に感じているだろう。時々、洞窟から悲鳴が響き渡る。それは、母と娘の楽しい家族愛の証拠だ。母に叱られている娘には地獄かもしれないが、その悲鳴を聞いている父には、二人が無事だと言う証だった。そして、何度目の悲鳴だろうか、娘は墓の前から動こうとはしなかった。 「お母さん。まだ着かないの。もうお腹が空いて動けない」 「何度か休憩したでしょう。もう少しよ。始祖様の墓の前で昼にしましょう」 「うぇええ、歩き続けて足も痛いけどぉ、それだけでないわ。お祈りするから屈んだり立ったりするでしょう。もう腰も痛いの。もう駄目」 「もう仕方が無いわね。なら菓子だけ食べたら直ぐに行くわよ」 「は~い」 「急に、元気が良くなったわね」 母は、大きな溜息を吐きながら娘に菓子を手渡した。そして、小言を言うつもりだったのだろうが、嬉しそうな笑みを見ると、まだ子供と思ったのだろう。何を言わずに娘の笑みを見続けた。 「お母さんは食べないの?」 「私はいいの。始祖様の前で食べるわ。でもね。ゆっくりしていると、晶さんに赤い感覚器官を見せる時間が無くなるわよ。今日、見せるのでしょう?」 「え?」 「昼まで、始祖様のお参りしないと、夕方までには洞窟から出られないわよ」 「え、何故?」 「何故って、帰りも同じように片側のお参りをするって、言ったでしょう。忘れたの?」 「なら、食べている暇などないわ。直ぐ行くわ」 「今日子・・・・」 「何?」 「あのねぇ」 「お母さん。次のお参りしたいから歩きながら聞くわ」 「正しいお参りなのだけど、ちょっとねぇ」 想い人に会えない。その気持ちからだろうか、先ほどまでの屈む度に腰に手を当てて嫌々な態度だったのが、今では心底からの正式なお参りをしている。だが、想い人に会いたい一心からなのは分かるが、拝む時間が短いと感じるのは、母親の思い違いではないはずだ。 「何か変?」 「何でも無いわ。私の考え過ぎみたい」 「そう?」 「昼前には着かないけど、昼過ぎ頃には着きそうね」 「そうなの。良かった」 母親の言う通りの時間に、始祖の墓に着いた。 「始祖様に挨拶だけはしなさい。その間に昼食を用意しておくわ」 「は~い」 十六歳の誕生日の日に、代々始祖の墓の前で食事をするのは変だと思うだろうが、始祖の願いではない。だが、お供え物だけを上げて帰るよりは喜ぶだろう。それもある。なら、何故、それは、后と側室の七人の女性の願いだったのは確かだ。だが、現代では理由は解るはずがないが、恐らく、始祖が地球で亡くなったのでない。それで、地球で転生する為に魂の気の補充と七人の女性の生まれ変わりを始祖に知らせる為だろう。 「今日子」 「何?」 「今日子がお供え物を上げなさい」 「は~い」 (始祖様。始祖様。晶に赤い感覚器官が見えるわよねぇ。私、今日の日を待っていたの。晶は、私の運命の人よね。お願いです。見えるって言って、いや、見えるようにしてください。始祖様、お願いです。お願いします) 今まで、今日子は、何度も拝んできた。だが、これが一生の最後と思うほど心底から願いをした。その気持ちが届いたのだろうか、母が言ったように金縛りになり、幻聴だろうか、男の囁きのような声が聞こえてきた。 (また、七人の姫が転生した。何故、なぜ、私の身体、私は転生をしないのだ。まさか、私は障害として生まれた。なら、転生しているのなら羽も感覚器官が無いのか、一族の者で無いのかも知れない。それなら、この場を離れて探してみるしかないなぁ。お嬢さん。洞窟の結界から出るには、身体が無いと出られない。洞窟から出るまで身体に入らせてもらうぞ。安心してくれ洞窟から出たら直ぐに身体から離れてやるからなぁ) 「今日子。真剣ねぇ。祈る気持ちは分かるけど、そろそろ食事にしない」 「・・・・」 「どうしたの。まさか、金縛りなの。始祖様の声が聞こえるのね?」 「・・・・」 今日子は、祈ったまま固まっていた。 (今回の転生した静(しずか)は大人しいなぁ。俺が知る静は、怒ると頭の血管が切れたように倒れていたからなぁ。これなら、体に入っても大人しくしてくれるだろう) 今日子は、一瞬だが、身体全体が痙攣した。それは、始祖が身体に入った証拠だった。 「今日子、大丈夫なの?」 「お母さん。何か身体が固まって、男の声を聞いたように感じたわ」 「そう、それよ。それが始祖様よ。始祖様の許しが出たの。早く籠を開けて羽衣を手に取りなさい。ん、如何したの?」 「痛いのかなって思って、その、お母さん。あの」 「大丈夫よ。痛くないわ」 「そう、うん、分かった」 今日子は、籠から羽衣を取り出した。と、同時に手から消えて背中に膨らみを現れた。だが、それも一瞬で消えた。身体の一部になり、皮膚と同化して使用を考えるまで模様(もよう)(刺青(いれずみ)に変わるのだ。 「痛くないでしょう」 「うん、でも、頭が痛いって言うか、首から肩まで重いような肩がこっているような変な感じがするの。何故だろう」 「もう昔の事だから憶えていないけど、そんな感じだったはずよ。それとも、始祖様が、体に入ったかもね」 「ええ、嫌、嘘、どうしたらいいの。始祖様って男性でしょう。なんか気持ち悪いわ。それに、身体を見られているようで嫌よ。出てってもらう事できないの?」 「嘘よ。そんな話し聞いた事ないわ。安心しなさい」 「本当?」 「安心しなさい。早く昼を食べて帰りましょう。本当に晶さんに会えなくなるわよ」 「うん、食べる。うん、帰りたい。うん、うん」 母と娘は、食事を食べ始めたが、母は、娘の様子が初潮の時と同じと思い。落ち着かせようと何度も話し掛け続けた。そして、落ち着きを取り戻すと、羽衣での飛び方、赤い感覚器官の使用方法を教えた。それは、気持ちを落ち着かせるだけだ。羽衣も赤い感覚器官も体の一部なのだから慣れるしかないからだ。 「そう、そうよ。それで良いの」 それでも続けたのは、自分の娘だから直ぐに普段のように笑みを浮かべてくれる。そう思っているからだろう。そして、満面の笑みを浮かべてくれた。でも、その笑みには晶の事しか考えてないと感じられた。 「帰りましょうかぁ」 (大人になったのねぇ。もしかして、私の母も、今と同じ気持ちになったのかなぁ) 「うん」 帰り道は、今日子が話し続けるのは、想像できるだろう。勿論、母の気持ちなど分かるはずもなく、晶に赤い感覚器官の見せ方などを聞き続けるだろう。 第三章 第二章。
水無月の季節に、それも、日の出の時間に合わせてだ。女性は井戸の水を汲むと頭の上から流していた。桶の水が無くなると、汲み直し何度も同じ様に浴びていた。白装束を着ているのだから儀式の前の清めをしている。そう思うだろう。だが、その女性の表情からは、そのようには感じられない。何故か、女性は笑みを浮かべているのだ。神との対話なのか、それとも神罰を避ける為の清めだとしたら、どんなに心の優しい神でも許せるような笑みではない。まるで、悪魔が邪な考えで神を討とうとしているような邪悪な笑みだ。大げさと思うだろう。だが、それでも、人としての欲望丸出しなのは確かだ。
「もう、いいわね。歳の数の倍を浴びろと言われたけど、三倍は浴びたわ」
この女性は、鏡家(かがみ家)の長女、今日子(きょうこ)と言い。父から普通の人なら歳の数だけ水を浴びれば良いが、お前では倍は浴びなければ駄目だ。それでも、清められるか分からないと言われていたのだった。それで、三倍も浴びれば、又、同じ事を繰り返してこい。と言われない為の用心だった。
「私は、十六歳の誕生日を待っていたのよ。これで、両思いだと、父に説得が出来るわ」
今日子は、今の呟きが誰かに聞えると思ったのだろうか、突然、辺りを見回した。だが、井戸がある中庭には、誰も居るはずもなく。勿論、周りの建物の母屋、社(やしろ)、その二つを繋ぐ廊下にも居ない。安心したのだろうか、そして、桶を手に持つと母屋の方に歩き出した。片付けようと考えたのだろう。その時、社の方から父の怒鳴り声が響いた。
「何時まで何をしている。早く来ないかぁ」
「もう、今から行く所よ」
八つ当たりのように桶を投げ、社に向かった。
女性の家は、永い時の流れで理由は忘れてしまったが、代々洞窟を守ってきた。何故、理由も分からないまま今まで続いたか不思議に思うだろうが、それには訳があったのだ。自分達は、他の人々とは違う種族と感じていたからだ。それは何故かと言うと、背中に蜉蝣(かげろう)の成虫のような羽を柔らかくした物があり。左手の小指に赤い感覚器官(あかいかんかくきかん)があるからだった。背中の羽は、生まれて直ぐに体から剥がし洞窟に十六歳になるまで保管して置くのが習わしだ。この羽の為に洞窟は、誰にも教えずに隠し続けていた。だが、子供の口を閉じさせる事など出来るはずも無く、羽と言わずに用心の為に羽衣(はごろも)と言い方を変えていた。今日子も幼い頃に両親の姿を見て友達などに話をしていたが、自分の身体に証拠の物が無く信じる人もいなかった。それでも、左手の小指の赤い感覚器官だけは、伝承なのか架空の物語と重なり信じると言うよりも信じてみたい気持ちで、他部族の者も運命の相手に会った場合に現れると思われていた。
「どうした。入ってきなさい。何も怖い事は無いぞ」
娘が、洞窟の入り口から入ろうとしない。普段は、男かと思うほど勇ましく騒がしいのだが、今の様子は怯えて震えているように感じた。そう思うと、幼い頃は、父の後を追いかけて笑みを浮かべる姿や花火を見に行ったが、帰りの夜道の静けさに恐怖を感じて震えながら手を握り締めてきた。そんな娘の思い出と重なったのだろう。優しく声を掛けた。
「怖くないわよ」
「そうだったなぁ。何かと言えば、今日の日の事を話題に上げていたなぁ」
先ほどから何度も娘の事を思い出していた。娘は、物心がつく頃までは、「お父さん。お父さん」と言い。何処にでも後を着いてきた。だが、娘が突然、ある男の話題を出してから何かと口喧嘩をするようになったのだ。自分以外の男性の名前を出したので、寂しさから娘の思っている答えを言わなかった。それまでは、うん。うん。そうだね。と、何でも頷き、娘の笑みを見るのが楽しかった。それは今でも、娘が可愛い。子供の時の満面な笑みは見せてくれないが、今の姿を見ると、まだ、子供なのだなぁ。と感じてしまう。
「お父さん。約束は憶えているでしょうね」
「ああ、憶えているぞ。晶(あきら)君だったなぁ」
「憶えているなら、いいわ」
「安心しなさい。晶くんが、赤い感覚器官が見えれば付き合う事を許そう」
「そう。なら、早く儀式を始めましょう」
(晶さんに、やっと、左の小指を見せる事が出来るわ。父は、晶さんでは、赤い感覚器官が見えるはずがない。そう言ったけど大丈夫よ。私の運命の人に間違いないもの。その確認が出来れば、直ぐにでも、愛の逃避行よ。ぐふふ)
思いを口に出す訳がないが、はっきりと顔の表情に表れていた。
「今日子、久しぶりに笑みを見たぞ。嬉しいのだなぁ。儀式が終われば、晶君の所に直ぐに会いに行くのかぁ?」
「直ぐに会いに行くわよ。ねね、何か変な物食べたでしょう。お父さん、何か変よ」
「変かぁ」
「うん。何か、喜びと言うより、泣いているみたいよ」
「泣きたくもあるなぁ。お前の表情は欲情丸出しだからだ。ご先祖様が許してくれるか、それが心配なのだよ」
「何よ。また、水を浴びろと言いたいの?」
「普段のお前だなぁ。まあ良いだろう。気持ちは落ち着いたようだから儀式を始めるぞ」
「何をするの?」
「先祖代々の墓をお参りするだけだ」
そう呟くと、洞窟の奥を指で指し示した。
「それだけでいいの?」
「だが、可なりの数があるぞ。一つ一つ丁寧に拝むのだぞ。そして、始祖様(しそさま)の墓の隣に籠(かご)が置いてある。その中に羽衣があるから、それを手に取るだけだぁ」
「簡単ね。なら取ってきます」
「ちょっと待て、線香を持たないかぁ」
「持ったわよ?」
父に、右手に持った線香の束を見せた。
「箱のまま持って行きなさい。そして、墓には一本置く毎に丁寧に拝むのだぞ」
「ええ、何個あるのよ」
と、父に視線を向けた。大きな溜息を吐くと、奥の洞窟に入ろうとした。
「ちょっと待てと言っているだろうがぁ」
「何よ?」
「男なら一人で行かせるが、女では怖いだろう。母さんと一緒に行きなさい」
「いいわよ。母さんが来るのを待つのも嫌だし、一緒だと小言を言うから時間が掛かるわ」
「時間が掛かるとはなんだぁ。丁寧に拝めと言っているだろがぁ」
「はい、はい。分かっています。最低でも一分は拝むことにします」
「馬鹿娘、一人で行きたいなら好きにしろ。さっさと行ってしまえ」
今日子は、しめ縄が張っている中を逃げるように入って行った。その後直ぐに母が洞窟に入ってきた。
「あらあら、一人で行ってしまったの」
「ふっー」
父は溜息を吐くことで、意味を伝えた。
「まあ先に、私が墓の清める時に蝋燭を灯してきた。その時、今日子が嫌いな蜘蛛の巣などを払ってきたから大丈夫だろう。それでも、私は、この場所を動く訳には行かない。今日子の後を追ってくれるかぁ」
「仕方が無いわね。あなた、お酒などは、祭壇に置いときましたわ」
「済まない」
「一人でなら何をするか分からないわね。でも、誰に似たのかしら?」
そう呟きながら娘の後を追った。手には大きな荷物を持っていた。形や重さを考えると弁当だろう。何故、弁当が要るのだろう。そう思うだろうが、先祖代々の墓の列は、片道二キロはあるからだ。恐らく、早くても初代の墓に着くのは昼になるはずだ。
(居たわ。あら真剣な顔ね。それほど、晶さんのことが好きなのねぇ)
闇に目が慣れる頃に、娘が真剣に拝んでいる姿を見つけた。
最下部の第三章をクリックしてください。 第一章
「真様(まこと様)見える。あれが領地よ。真様の星なのよ。やっと着いたの。これから、楽しい日々が始まるわ」
「うん、目的の星に着いたねぇ」
「真様、綺麗な星ね」
「うんうん、綺麗な星だ。空気も食べ物も美味しそうな星だね。それに、良く穀物が育ちそうな星だね」
「うんうん、そうね。後で降りたら食べ物を探して食べましょう」
「うん、楽しみだね。なんか眠くなってきた少し眠るね。着いたら起こして、一番に降りるからね」
「そうよ。一番に降りないとね。真様の領地なのだから同然ね」
「うん」
「本当に一番に領地の地を踏んでよ。神様にも歴代の先祖様にも挨拶の儀式をして、領地の地に沢山の恵みを頂くのよ」
「うん、儀式をしないと・・・・ごめん、少し寝るね」
「真様、おやすみなさい」
寝台の周りには、七人の女性が立っていた。その中の一人が、恐らく、后だろう。話しをしていたが、挨拶だけは、七人の女性が同時に言葉を掛けていた。そして、部屋を暗くすると、七人の女性が部屋から出て行った。
洞窟の奥にある。歴代の墓の一番の奥の石に魂を封印された。始祖の真は、何度も、何度も同じ夢を見ていた。そして、同じ言葉を呟くのだ。
「体は何時になれば転生するのだ。日姫(にちひめ)。月姫(つきひめ)。火姫(ひひめ)。
水姫(みずひめ)。木姫(きひめ)。金姫(きんひめ)。土姫(つちひめ)の転生した体は、何度も見ていると言うのに、俺の体が転生しないは、何故なのだろう。先ほど、新しい転生した姫が挨拶に来たが、この世では、俺の体が転生するのだろうか、そして、七人の女性に会えるのだろうか? 最下部の第二章をクリックしてください。 |
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物語を書いて五年になりましたが、私は「左手の赤い感覚器官(赤い糸)と「蜉蝣(カゲロウ)の羽(背中にある(羽衣)の 夢の物語が完成するまで書き続ける気持ちです。
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