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第四章

「月の主様。いや、始祖様は、真様と言ってね。后の静(しずか)様。愛称では、日姫と言うの。それと、六人の側室がいたのよ」

「ほう」

「静様は、心底から真様を好きだったのだけど、一週間に一度しか会えなかったの。真様は、子孫を残すのがお役目なのでしょうね。1日後と、側室の部屋に行かなくてはならなかったの。清楚で可憐で心の優しい日姫様は、快く真様を送り出すのだけど、会えない苦しみから床に就くのが多かったらしいわ」

「会えない苦しみは分かるわ。そうよね。病気にでもなるわ」

「そうね。でも、真様も、障害の有る体だったから、地球に着く前には、床から起きられない状態になったらしいの。でも、地球の姿だけは見て亡くなったらしいわ」

「そう、なら良かった」

「でね。当時では、主の後を追って死ぬのが普通だけど、日姫様と六人の側室は、始祖様の転生を信じて、残りの将来を転生の儀式で人生を使ったらしいわ。勿論、自分達の転生の儀式も忘れるはずがなかったわ」

「そうよね。自分達も転生しないと意味がないわね」

 今日子は、母の話に返事を返しているが、まったく感情が表れていない。恐らく、晶に赤い感覚器官を見せている場面を想像しているのだろう。

「私の話を聞いているの?」

「はい、はい。聞いていますよ」

「この話をしたのはね。これから始祖様のお墓をお参りするでしょう。その時、何か起きても驚かないでね。まだ、転生が出来なくて相手を探すのに悪戯するのよ」

「なっ、何が起きるの?」

「金縛りか、幻聴では無いわよ。始祖様の声のはずなの」

「お母さんも聞えたの?」

「聞えたわ。もう昔だから何を言われたか忘れたけどねぇ」

「そう、憶えていないなら怖がる事でないのねぇ。安心したわ」

「何を言っているの。もし体を乗っ取られたら如何するのよ」

「お母さんは如何して助かったの?」

「それはね。心の底から祈るの。楽園に住めるのも健康体として生まれたのも、始祖様のお蔭です。有難う御座います。そう言いながら何度も祈るの。声が聞こえなくなるまでね」

「はい」

 母の話を嘘と思っているのだろうか、感情がまったく感じられない返事を返した。

「本当に分かっているの。心の底から祈るの」

「はい、はい」

「まあ、始祖様の墓は、まだまだ先だからいいけど、練習と思って他の御先祖様も同じように真剣にお参りしなさい。私が見ていてあげるからね」

「はい」

(げ。結局、説教を聞かされるのね。うっうう、泣きたくなるわ)

 今日子には、片道二キロは永遠と思える距離に感じているだろう。時々、洞窟から悲鳴が響き渡る。それは、母と娘の楽しい家族愛の証拠だ。母に叱られている娘には地獄かもしれないが、その悲鳴を聞いている父には、二人が無事だと言う証だった。そして、何度目の悲鳴だろうか、娘は墓の前から動こうとはしなかった。

「お母さん。まだ着かないの。もうお腹が空いて動けない」

「何度か休憩したでしょう。もう少しよ。始祖様の墓の前で昼にしましょう」

「うぇええ、歩き続けて足も痛いけどぉ、それだけでないわ。お祈りするから屈んだり立ったりするでしょう。もう腰も痛いの。もう駄目」

「もう仕方が無いわね。なら菓子だけ食べたら直ぐに行くわよ」

「は~い」

「急に、元気が良くなったわね」

 母は、大きな溜息を吐きながら娘に菓子を手渡した。そして、小言を言うつもりだったのだろうが、嬉しそうな笑みを見ると、まだ子供と思ったのだろう。何を言わずに娘の笑みを見続けた。

「お母さんは食べないの?」

「私はいいの。始祖様の前で食べるわ。でもね。ゆっくりしていると、晶さんに赤い感覚器官を見せる時間が無くなるわよ。今日、見せるのでしょう?」

「え?」

「昼まで、始祖様のお参りしないと、夕方までには洞窟から出られないわよ」

「え、何故?」

「何故って、帰りも同じように片側のお参りをするって、言ったでしょう。忘れたの?」

「なら、食べている暇などないわ。直ぐ行くわ」

「今日子・・・・」

「何?」

「あのねぇ」

「お母さん。次のお参りしたいから歩きながら聞くわ」

「正しいお参りなのだけど、ちょっとねぇ」

想い人に会えない。その気持ちからだろうか、先ほどまでの屈む度に腰に手を当てて嫌々な態度だったのが、今では心底からの正式なお参りをしている。だが、想い人に会いたい一心からなのは分かるが、拝む時間が短いと感じるのは、母親の思い違いではないはずだ。

「何か変?」

「何でも無いわ。私の考え過ぎみたい」

「そう?」

「昼前には着かないけど、昼過ぎ頃には着きそうね」

「そうなの。良かった」

 母親の言う通りの時間に、始祖の墓に着いた。

「始祖様に挨拶だけはしなさい。その間に昼食を用意しておくわ」

「は~い」

 十六歳の誕生日の日に、代々始祖の墓の前で食事をするのは変だと思うだろうが、始祖の願いではない。だが、お供え物だけを上げて帰るよりは喜ぶだろう。それもある。なら、何故、それは、后と側室の七人の女性の願いだったのは確かだ。だが、現代では理由は解るはずがないが、恐らく、始祖が地球で亡くなったのでない。それで、地球で転生する為に魂の気の補充と七人の女性の生まれ変わりを始祖に知らせる為だろう。

「今日子」

「何?」

「今日子がお供え物を上げなさい」

「は~い」

(始祖様。始祖様。晶に赤い感覚器官が見えるわよねぇ。私、今日の日を待っていたの。晶は、私の運命の人よね。お願いです。見えるって言って、いや、見えるようにしてください。始祖様、お願いです。お願いします)

 今まで、今日子は、何度も拝んできた。だが、これが一生の最後と思うほど心底から願いをした。その気持ちが届いたのだろうか、母が言ったように金縛りになり、幻聴だろうか、男の囁きのような声が聞こえてきた。

(また、七人の姫が転生した。何故、なぜ、私の身体、私は転生をしないのだ。まさか、私は障害として生まれた。なら、転生しているのなら羽も感覚器官が無いのか、一族の者で無いのかも知れない。それなら、この場を離れて探してみるしかないなぁ。お嬢さん。洞窟の結界から出るには、身体が無いと出られない。洞窟から出るまで身体に入らせてもらうぞ。安心してくれ洞窟から出たら直ぐに身体から離れてやるからなぁ)

「今日子。真剣ねぇ。祈る気持ちは分かるけど、そろそろ食事にしない」

「・・・・」

「どうしたの。まさか、金縛りなの。始祖様の声が聞こえるのね?」

「・・・・」

 今日子は、祈ったまま固まっていた。

(今回の転生した静(しずか)は大人しいなぁ。俺が知る静は、怒ると頭の血管が切れたように倒れていたからなぁ。これなら、体に入っても大人しくしてくれるだろう)

 今日子は、一瞬だが、身体全体が痙攣した。それは、始祖が身体に入った証拠だった。

「今日子、大丈夫なの?」

「お母さん。何か身体が固まって、男の声を聞いたように感じたわ」

「そう、それよ。それが始祖様よ。始祖様の許しが出たの。早く籠を開けて羽衣を手に取りなさい。ん、如何したの?」

「痛いのかなって思って、その、お母さん。あの」

「大丈夫よ。痛くないわ」

「そう、うん、分かった」

 今日子は、籠から羽衣を取り出した。と、同時に手から消えて背中に膨らみを現れた。だが、それも一瞬で消えた。身体の一部になり、皮膚と同化して使用を考えるまで模様(もよう)(刺青(いれずみ)に変わるのだ。

「痛くないでしょう」

「うん、でも、頭が痛いって言うか、首から肩まで重いような肩がこっているような変な感じがするの。何故だろう」

「もう昔の事だから憶えていないけど、そんな感じだったはずよ。それとも、始祖様が、体に入ったかもね」

「ええ、嫌、嘘、どうしたらいいの。始祖様って男性でしょう。なんか気持ち悪いわ。それに、身体を見られているようで嫌よ。出てってもらう事できないの?」

「嘘よ。そんな話し聞いた事ないわ。安心しなさい」

「本当?」

「安心しなさい。早く昼を食べて帰りましょう。本当に晶さんに会えなくなるわよ」

「うん、食べる。うん、帰りたい。うん、うん」

 母と娘は、食事を食べ始めたが、母は、娘の様子が初潮の時と同じと思い。落ち着かせようと何度も話し掛け続けた。そして、落ち着きを取り戻すと、羽衣での飛び方、赤い感覚器官の使用方法を教えた。それは、気持ちを落ち着かせるだけだ。羽衣も赤い感覚器官も体の一部なのだから慣れるしかないからだ。

「そう、そうよ。それで良いの」

 それでも続けたのは、自分の娘だから直ぐに普段のように笑みを浮かべてくれる。そう思っているからだろう。そして、満面の笑みを浮かべてくれた。でも、その笑みには晶の事しか考えてないと感じられた。

「帰りましょうかぁ」

(大人になったのねぇ。もしかして、私の母も、今と同じ気持ちになったのかなぁ)

「うん」

 帰り道は、今日子が話し続けるのは、想像できるだろう。勿論、母の気持ちなど分かるはずもなく、晶に赤い感覚器官の見せ方などを聞き続けるだろう。
最下部の五章をクリックしてください。

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物語を書いて五年になりましたが、私は「左手の赤い感覚器官(赤い糸)と「蜉蝣(カゲロウ)の羽(背中にある(羽衣)の 夢の物語が完成するまで書き続ける気持ちです。
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