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第十章
「これ以上調べる必要はない。あの笑いながら泣いて人を殺す涙姫(本当は、信と楽しく話をしている時に、傘を振り回して偶然に密偵に当たっただけだ。だが、年一度の女性だけの武道大会では常に上位の成績だ)と、信だ。指揮を任せたら十二種族一の上手さ。千人の部下がいれば五万の敵と対等に戦えると噂だ。(だが、王の就任儀礼で昨年の王は少数の者に負けなければならなかった。それが、誤って伝わっていた。毎年やっているのに気が付かない密偵の報告の間違いだろう。それでも、駒の戦争遊びなら常に一位を取っていた。それを見て感じたのなら無能の密偵で無い)
 その二人が、擬人と街中での密談しているのだ。必ず仕掛けてくるぞ。このままでは挟み撃ちに合う。私が一人で残り作戦の邪魔をする。そう伝えてくれ頼んだぞ」
「ん、やはり二人は他部族の長老の家に向かうか?」
 一人残った密偵は三人の後を追う。
「涙花、一人だが、私達の後を付ける者がいるぞ。どうするか決めてくれないか」
 まだ、女性と話すのが慣れないのだろうか、遺言男は恥ずかしそうに問うた。
「もうー信様。目線を外したらやー」
「遺言男と言うのだったな、ありがとう。理由は分かっている。我ら六種族が弔問に来るか探っているのだ。今回は戴冠式もあるから心配なのだろう。これから全ての長老の元に向かう。全て長老の家に向かえば安心して報告に帰るだろう」
 時の流れが悪い方に向かって行く。虹家の党首であり、飛河連合西国の王の危篤の知らせを受けて種族でない者。涙花が赴いたからか、遺言男がこの地に来たからか、愛、蘭、甲、乙が外界に来たからだろうか、それとも、時の流れを操る本当の運命の神は、擬人だけを愛しているとしか思えない。それでは悲しすぎる。
「ここで分かれよう。虹家の党首を看取った者が、我ら六種族に直接会うのは不味い。何の為に種族に関係のない者を使わしたか分からなくなる。涙花は羊家に向かい、父に報告してくれ頼んだぞ」
「ああっんもぉー、離れたくないのを知っているくせにー、ほんとうにっもぉーいやあー」
 信の話が伝わってないのだろうか、涙花はまとわり付いて離れないでいた。
「この門を、御二人で入られるのですか?」
 大きな門の扉に竜の絵柄が書かれ、それを隠さないように二人の警護人が立っていた。
「いや、私だけだ」
「それではお入り下さい」
 扉が開かれると、廊下が広がっていた。廊下の両脇には簡易椅子が並べられ、その奥に
は又扉があった。その手前には一つの机と椅子が置かれ、一人の警護人が机に膝を付けながら座っていた。何故か、その者は、私に鋭い視線を向け続けていた。
 その頃、扉の外にいる涙花は、信が視線から消えたからだろう。我を取り戻した。
「報告しなければならない。付き合え」
 突然に、男言葉で声を上げ歩き出した。一瞬だが、扉に視線を向けた。信の事が心配なのだろう。その頃の信は、
「お願いがあります。私は、第八王家、羊長信です。御取り付けを願います」
「少々お待ち下さい」
 老人は深々とお辞儀をすると扉の中に消えた。信は机の元により、机の上に視線を落とした。記帳が置かれていたが、信は名前を書かずに書かれていた物を読んでいるようだ。
「お入り下さい」
 信は記帳に書かれていた人物名を十人位だろうか、目を通した頃に扉が開かれた。
「ありがとう御座います」
 一礼すると、中に入った。
「やはり」
 老人と言えば言い過ぎだろうが、黒髪よりも白髪の方が多い人が椅子に腰掛けていた。
「はい、お亡くなりになりました」
 扉を開けると、即座に声を掛けられた。そして暫く言葉を待った。だが、話は始まらず、仕方が無く自分から言葉を掛けた。
「我々は、戴冠式だけは出なければならないと思うのです。それで、一番重要な竜家の確認を取りに来ました。他の五種族が出席しても竜家がいなければ意味がありません」
 老人は話題を口にしたくなかった。だが、他人に言われると、よけいに怒りを感じるのだろう。それは声色で感じられた。
「確かに竜家は、代々虹家の就任の儀式をしてきた。だが、今の虹家は勝手に五種族を率いて王制を興した。それでも、竜家が儀式をする理由があると思うか?」
「羊家で代わりが務まるなら、ですが」
「言いたい事は分かる。我らの始祖が神から仰せつかった役目だ。竜家は、虹家に王冠を渡す。他家が代わりを務まる訳が無い」
「それでは、出席するのですね」
「だが、その為に負けるのは口惜しい」
「六種族が欠席しても、試合に勝っても戦が始まります。それは避けたいのです。竜家が出席してくれれば、他家も出席します」
「分かった出席する。儀式もするのだろう」
「少数で行きますから多分ないでしょう。もし、あったとしても剣の試合でしょう」
「虹家は少数で来いと言ってきたのか」
「いいえ。涙花から聞いたのです。先の王が、いや、虹家の先代が言い残したそうです」
「何と言っていたのだ」
 幼い頃は遊び友達だった。その頃なら何を考えていたか分かったのだが、今では何を考え残したか分からなかった。その事が本当に悲しくて声色に表れていた。
「息子とは知らない仲では無いのだから頼むと、人が居る前で言われ、そして、言付けがあるからと涙花一人残し、竜家の党首に、最後の就任の儀式で良いからお願いします。そう言われたそうです」
「そうか、就任の儀式と言ったのか」
 ますます、昔を思い出して涙を流した。
「党首殿」
 信は言葉を掛けなければ、この場から消えてしまう。そう思い声を掛けた。
「私が率先して、皆に頼みに行こう」
「いや、私もお供します」
「そうか」
 何度も同じ言葉を吐いて頷いた。
 信は後で思った事だ。自分一人で手紙だけを持ち他家を回っていれば、二日も掛かれずに、その日に終わったと感じていた。
「しんっさまぁ。二日もー何をしていたのですのぉー、さびしーくって、さびしーくって」
「済まない時間がないのだ。父には言っといてくれたな。涙花、直ぐに出掛けるぞ」
 二人の会話は勝手に話して納得する。全く噛み合った会話がないのは何時もの事だ。だが、涙花の表情には嬉しさよりも不安が表れていた。それが本当に起きてしまう予兆のようなものとは、本人も気が付かないでいた。
「大門の前で待っているぞ。簡単に用意をすまして来てくれよ。ん、どうした?」
 信は話を終えて門に向かうつもりが、裾を捉まれ立ち止まった。
「私には大切な物は無いのよ。この旅装服があれば良いの。後は何を要らないの」
「そうか、女性なのだから気配れよ。それよりも、どうした。急に真面目になって」
「いいえ、何でも無いわ」
「そうか、何か気持ちが悪いぞ。普段のようにしてくれ。恥ずかしくて話し難い」
「はい、私も楽しまなくてはねえ」
 そう呟き終わると、二人は大門に向かった。
 大門の前、それは、以前は河だった跡には五種族の長老が出発を待っていた。
「信、軽装だな、本当に良いのか、我らに気を使ったのではないのか?」
 竜家の長老が話を掛けてきた。
「いえ、違いますよ。私と涙花は旅が好きなだけです。輿に乗るよりも、歩く方が気持ち良いですから気にしないで下さい」
「それで、羊家党首は来ないのか、まさか、まだ敵国にいると思っているのか?」
「いいえ、思っていませんよ。就任儀式もしてますでしょう。それに、党首の責任も果たしていますのはご存知ですよね」
「そうだった、そうだったな。済まない」
 竜家の長老が盛大に笑い声を上げた。
「私と旅には行きたくないと言われました。私が旅に出ると何かが起きるそうです。余程、私が始めての旅に出た時の時を気にしているようです。そうですよね。その翌日に反乱ですから、旅と聞くだけで苦い顔を浮かべます。口では言いませんが、十二種族での就任儀式を楽しみにしていたのですね。結局、見る事も指揮をする事も出来なかったのですから、深酒をする度に言われますよ。お前と叔父は厄病神だと言います」
「それはある意味安心だな。都の留守を任せられるのだからな」
「そう言ってくれれば父も喜びます」
「それでは行くとしよう」
 竜家の長老が声を上げた。皆は、その言葉を待っていたかのように動き出した。
「そうですね」
 信と涙花は問い掛けた。籠よりも歩きの方が早いのだろう。信と涙花を先頭で、まるで新婚旅行でも行くような感じだ。
 最下部の十一章をクリックしてください。

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物語を書いて五年になりましたが、私は「左手の赤い感覚器官(赤い糸)と「蜉蝣(カゲロウ)の羽(背中にある(羽衣)の 夢の物語が完成するまで書き続ける気持ちです。
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