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第二章
 微風が木々の葉を揺すり、女性に向かって囁いているように聞こえる。
「外は気持ちが良いわよ。ふふ、本を読むにしても外の方が明るいわ。出てきたら良いのに、外にも椅子もテーブルもあるわよ。肩が凝るような窮屈な所が好きなの。うっふふ」
 女性が窓を開けていれば、いや、窓を開けていなくても、木々の葉の揺れを見れば心に感じて気持ちが変わるはずだろう。だが、女性は本に夢中だ。そして時々、目の前にある二つの水晶球に似た物に視線を向ける。恐らく、四ページ位読むと必ず視線を向いているはずだ。何をしているのか、それは、女性の仕草や部屋の中を見れば解るだろう。
 部屋の中央に有る水晶球に似た物は恐らく警報機だ。その前にメモを書ける位の小さいスペースに無理やり本を広げながら看視しているはずだ。右の隅に大きい水晶球がある。その中には地球の映像が浮かんでいた。左の物は硝子の板のような物だが起動していない。恐らく、細かい地域を映す物だろう。
 本のページも後半になると、目線は活字を読む時間が長くなってきた。看視の事など頭の片隅に残っているか分からない程に、本に夢中になっている時だ。突然に水晶球に似た物が光り出し、光が目に飛び込んだ。
「えっ、まさか。えっ、えっ」
 何が起きたのか分からないのだろう。赤い点滅を見つづけ、何を思ったのか。意味の分からない事を呟きながら部屋を飛び出した。
「あれが、あれが、あれが」
 喚きながら走り、知らせに向かった。
「何があった?」
 扉を叩く事もしないで、女性は喚きながら部屋に入ってきた。
「あれ、あれ、あれが、ぴかぴか」
「あれが点滅したのか、何色だ」
「分からないわ。驚いて、知らせに来たから色までは覚えていないの。今から見てきます」
 自分の喚き声で言いたい事が伝わり、落ち着きを取り戻した。
「行かなくて良いぞ。一緒に行こう」
「はい」
「私が幼い頃に点いて以来だ。驚くのは無理ないが、あれは異常な驚きだ。人でも殺したのかと思ったぞ」
 立ち尽くしている女性の肩を叩き、二人で水晶に似た物を確かめに向かった。
「青ではないぞ。赤は獣人だ。俺でも対処の方法は知らんぞ」
「私は何をすれば良いのですか?」
 男は、光を見るまでは落ち着いていた。完全に対処方法が頭の中にあったからだろう。
 だが、光を見ると驚きの余りに気を失いかけたが、連れの何事も無かったような普段の声色で問い掛けられて、怒りを感じ、辛うじて意識を取り戻せた。如何する事も出来ない事に変わらないが、自分に言って欲しい言葉を、心の叫び声が、口から出ていた。
「あっ義務を果たした。帰って良いぞ」
「はい、分かりました」
 女性は、上司に報告したから全てが終わった。そう思っているのだろう。本を手に持ち、部屋を出ようとした。
「警報を鳴らせ」
 男は無表情で口にしたが、自分でも何を言っているのか分かっていないはずだ。
「えっ、警報は付いていますが?」
 女性は意味が分からず問い掛けた。
「緊急非常警報を鳴らせと言ったのだ」
 表情も声色も落ち着いているように見えたが、この言葉を吐くのだから完全に正常の判断が出来ない状態だ。
「あれは所長しか押せないはずです」
 驚きのあまり大声を上げた。
「私は所長代理だ。私が良いと言っているのだ。押して来い」
「分かりました。押せば良いのですね」
 女性が部屋から出て数分後に、都市中に警報が響いた。
 人々は何が起きたのか、不安を抱いて端末機に情報を得ようとした。だが、娯楽を流す映像機などは、普段は手動でなければ動かないはず、それなのに、物が勝手に動き出した。
「A地区の方はA地下避難所に至急お集まり下さい。身分照合を確認後に、全ての情報を得る事が出来ます」
 室内にある電灯は明暗で、映像を映す物は映像で、全ての機械が機能を使い室内にいる人に同じ情報を知らせた。非難に向かう人や恐れを感じて外に出た人々は、失神するほどの驚きを感じた。それは、普段は動く訳が無い石畳が動いているからだ。近くで見る勇気がある者は、無数の砂が動いているのに気が付くはずだ。無理をして走れば逆の方向に行けるが、無限に走れるはずが無い。いずれ疲れ果て、人や砂の上の全てを指定の場所に連れて行く。驚きは、それだけでは無かった。外に置かれた拡声器や照明からも、室内以上に同じ言葉を騒ぎ伝える。全ての機器は緊急避難警報が作動すると動き出す仕組みか、それとも、普通の警報でも作動する物が錆付いていた為に、偶然に緊急非常警報が作動したのだろうか、何故、警報で、これ程の騒ぎになるか疑問に思うだろう。それは、
「原子爆弾が飛んできますよ」
 それを、知らせる警報だと思ってくれれば分かるはずだ。そして、都市中は想像絶する騒ぎになっている。そう思うはずだ。だが、機械が騒ぐだけで情報を与えない為に、人々は非難場所に向かうしかない。その場所でなければ何一つ、情報が得られないからだ。
  最下部の第三章をクリックしてください。
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自己紹介:
物語を書いて五年になりましたが、私は「左手の赤い感覚器官(赤い糸)と「蜉蝣(カゲロウ)の羽(背中にある(羽衣)の 夢の物語が完成するまで書き続ける気持ちです。
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