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第八章
 今日子の家は、代々の洞窟を守る家系だ。旧国道沿いに神社の社は在るが、母屋の陰で見えない。鳥居が無ければ離れの部屋か蔵と思うに違いない。その母屋から女性七人が笑いながら出てきた。その上空に魂だけの真が浮いていた。だが、下を見るのでなく珍しい物でも見るように辺りをキョロキョロ見回している。それも、そうだろう。先ほどは、無我夢中で転生した身体を捜す為に上空に上っただけだ。そして、地の果てまで建物が立ち並んでいると感じたのだ。その気持ちでは他の人工物など目に入るはずもなかった。
「凄い、何処を見ても人工物しかない。それに、想像が出来ない物まである。本当に凄い文明だぁ。どの位の月日が流れたのだろう。うぉおおおおお」
 真は、辺りを見て感心していた。そして、男性だからだろうか、ある物を見て興奮を表した。恐らく、女性の裸体の絵だろう。映画の看板のはずだ。勿論、真の様子など分かるはずもなく、七人の女性は、目的の場所に歩き続けた。
「まあ、転生した七人の女性達は昼に帰って来るのだし、この文明の進歩した姿を見物でもしてみるかぁ。もし、子孫が間違った文化を進むのなら修正するように教えなければならない。それが、魂だけになったが始祖の役目に違いないはずだ。そして、転生した時の最初の仕事になるはずだからなぁ」
と、呟いた。まあ、視線はある場所に釘付けで、表情からは欲望しか表れてなかった。その呟きは、七人の女性が見えなくなるまで呟き続けた。もしかすると、自分と同じように姫達の魂が、七人の身体に存在していると思っているからだろうか。
「これは、文明の資料だ」
 七人が視線から消えても呟くのだ。それほど、転生前の七人の女性が怖いのだろうか、それとも、女性が怖いのだろうか。まあ、それは良いとして、真は、欲望のまま映画館に入って行った。この状態では昼に、七人の女性と合流する事は出来るはずがない。母屋に帰らなければならないと気が付き、外に出て見ると夕方になっていた。そして、慌てて母屋に向ったが女性達は居なかった。
「仕方が無い。自分で探すしかないかぁ。歩きで行けると言っていた。確か、北東の方向と言っていたはずだ。向ってみるか、駄目な時は、その時に考えるしかない」
 真は、急いで向かっているのだろう。だが、魂だけなのだ。ふわふわと幽霊のように飛んで行った。時々、興味を感じる物があると視線を向ける。誘惑に負ける時もあるが、それでも、目的の方向に向って行った。
「ん・・・・・?」
 また、興味を感じた物でもあったのだろうか、突然に進むのを止めた。だが、辺りを見回していた。興味を感じたのでなく、何かが耳に入り探しているように思えた。
「ん・・・・・助けを求めているのかぁ。だが、聞き取り難い。方言か?」
 ある一言だけが聞え悩んでいた。それでも、聞えて来た方向が北東の方向だった為に向う事に決めた。時間にして二〇分くらい過ぎた。距離は分からないが近づいて来たからだろうか、聞えて来る言葉が多くなってきたのだろう。進まずに耳を傾けるのが多くなってきた。だが、助けを求めるような人は居ない。それでも、進み続けた。その時・・・。
「小さい主様(ちいさいあるじさま)。助けに向います。もう少し待っていてください」
と、真の耳に確りと言葉として聞えてきた。その言葉以外も聞こうとして意識を集中した。そして、相手にも聞えるのかと、祈りながら大声を上げた。
「おお、わしの言葉が聞えるか?」
「聞えます。もしかして、貴方様は、私の上空に居る人ですか?」
「ん・・・・・・・下?」
 下を向いたが、想像を描くような男性は存在しなかった。
「そうです。下です。貴方様は、幽霊なのですか、それとも、猫神様(ねこかみさま)ですか?」
「猫・・・・・・・猫神?」
「話をしている時間が無いのです。猫神様なら、お願いですから力を貸してください。私は、動けないのです。お願いですから小さい主様を助けてください。もし、力を貸してくれるなら動けるようにしてください。私が助けに向います。お願いします。お願いします」
「猫?」
 真は、下を見た。草木に隠れ猫が苦しそうに横になっていた。外見からは分からないが、もしかすると、可なり歳を取った猫かもしれない。
「俺の下にいる。猫なのか?」
「私は猫です。お願いですから小さい主様を助けて下さい」
「俺には何も出来ない。それでも、もしかすると、お前の身体に入れば、前と同じように身体が動くかもしれない。だが、痛みがあるかも、そして、記憶が無くなる可能性もある。それでも、良いのか?」
「痛みなら常にある。もう歳だから身体が悲鳴を上げているのでしょう。別の所の痛みが増えても気にはしない。記憶が無くなるのは困りますが、小さい主様の為なら問題は無いので頼みます」
「そうかぁ」
「はい」
 猫の必死の頼みに渋々だが答えようとした。
「もう一度、確かめる為に聞くぞ。もし、身体に入った同時に死んでも良いのだな」
「はい、構いません。このまま何もしないで死ぬよりましです」
 真は、猫が承諾すると、ゆっくり、ゆっくりと下に向った。そして、猫の身体に少しずつ、猫の身体を労わるように融合していった。完全に融合すると、真の意識に、今まで生きて来た。猫の思い出が、走馬灯のように見えた。猫は二十年も生きて来た。小さい主の両親は子供が出来なかったので、猫を飼ったのだった。それでも、猫が三歳目の誕生日が過ぎた頃に待望の子供が生まれた。それが、小さい主様と叫んでいた者だ。その子を助けるのだろう。その子供は赤子の頃から何を見ても、些細な音でも怖がる子供だった。だが、何故か、猫の尻尾が好きで掴むと安心して寝る赤子だった。それだからだろう。小さい主の両親は、猫を信じて、赤子と猫だけで留守を任せる事が多かった。猫も自分の子供と思っていたのだろう。そのお蔭で、両親が留守でも赤子の鳴き声は家の外にも中にも響く事がなかった。赤子は、猫を、赤子の玩具のガラガラと思っていたのだろう。猫は、その気持ちに答えるように尻尾を左右に振り、掴めるなら掴んでごらんと、猫も遊び気分でしていたのだ。それでも、長い間、尻尾を掴む事が出来ないと泣くので、時々、故意に?まえさせてやっていた。勿論、猫の痛みの感覚があるので悲鳴をあげていた。その様子が近所に人達に分かるはずもなく、何故、赤子が泣かずに猫の鳴き声だけが響くのかと、驚く人も居た程だった。
「それ程まで思っていたのか、なら力を貸そう。必ず助けよう」
「ありがとう御座います」
 猫の二十年の思い出は、一瞬の間で真に伝わった。猫の心底からの思いを感じたからか、それとも、猫の体質に合ったからか、痛みは感じたが記憶と自我は残る事が出来た。猫は敏捷な動きで起き上がり、小さい主が居る場所に向った。
[小さい主様。今、助けに行きます」
と、泣き叫んだ。そして、小さい主の様子を見ると、真は不審と驚きを感じるのだ。
「命の危機でなかったのか?」
「小さい主様の危機です」
「口から泡を吹いているが怪我もないようだぞ?」
「小さい主様は潔癖症で、虫なども死ぬほど嫌いなのです。家に居る時も、外出する時も、私が先頭を歩き、蜘蛛の巣などを払うのが、私の役目なのです。それでも、最近は、小さい主様の運命の相手に出会い。私の役目を終わりと思い、自分の死を隠す為に旅に行こうとしていたのです。その時に、小さい主様の悲鳴が聞えたのですよ」
「そうか、なら如何するのだ?」
「何でしょうか?」
「思いは遂げたと感じたのだが?」
「猫神様の許しがあるのでしたら、命が有る限り、小さい主様の助けになりたいのです」
「そうか、良いぞ。だが、私の身体、いや、転生した身体を見つけるまでになるが、それでも、良いのか。恐らく、俺が身体から出ると命が尽きるかもしれないぞ」
「それまでの命でも構いません」
「そうか、分かった」
「ありがとう御座います」
と、思いを告げながら尻尾で、小さい主の顔や頭に付いている蜘蛛の巣を払っていた。そして、真の許しを貰えると、また、尻尾で服の汚れを落とし終わると、顔の汚れを舐めた。猫の舌はザラザラの舌だから痛いのだろう。男性は直ぐに目を覚ました。
「シロ、シロ。探したのだぞ」
 気が付くと直ぐに猫を抱え、涙を浮かべながら喜びを表した。小さい主の言葉に答えるように猫はゴロゴロと喉を鳴らして、ちいさい主に思いを伝えた。
「シロと言うのか、シロよ。俺は、そろそろ、転生した身体を捜しに行かなければならない。それでだ、北東の方向に進みたいのだが、行動してくれるなぁ」
「う・・・・・でも、小さい主様を、この場に置いて行けない」
「自宅に帰したらどうだ」
「それしかないですね」
 シロは、虚空を見て鳴いていた。シロは、真と話をしているのだが、人から見ると何もない方向を向いて鳴いているのだ。その姿を見て、猫の主人は恐怖を感じていた。
「シロ、シロ。如何した。何か居るのか?」
 その言葉が分かったのだろう。振り向いて、一声だけ鳴くと歩き出した。
「シロ、シロ、家に帰るのだよね?」
 シロは、主人が話し続けても家の方向に歩き続ける。それでも、声が聞こえ無くなると、後ろを振り向き、後に付いて来ているのかと確認していた。主人は、猫の名前を呼んでも自分に向って来ない。それが悲しいのか、それとも、夕方の暗い森が怖いのだろうか、猫の後を泣きながら歩き続けた。だが、森から出て住宅街に来ると、何故か泣き止んだ。恐怖を感じる不気味な森を出たからだろうか、人工物が密集して虫も居ないから安心したのだろうか、本当の理由は、極度の自尊心の固まりだった。突然に恥ずかしい気持ちが心を満たしていた。この男性は、幼いように見えるが、歳は、十五歳になっている。名前は、常磐(ときわ)新一(しんいち)と言う。一人の時、特に恐怖を感じる時は幼児に戻る。だが、人、得に女性の視線を感じると痩せ我慢をする性格だった。その性格が分かるから、猫も、運命の相手と結ばれるまで陰ながら手助けをする考えなのだ。この猫と男性の関係や今までの全てが、真の心の中に記憶された。そして、何事も無く、家の目の前まで着く事が出来た。
 
最下部の九章をクリックしてください。

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物語を書いて五年になりましたが、私は「左手の赤い感覚器官(赤い糸)と「蜉蝣(カゲロウ)の羽(背中にある(羽衣)の 夢の物語が完成するまで書き続ける気持ちです。
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