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第十一章
 公園と名称だが、木々が九割を占める。元は、いや、今でも墓なのだが、公園と名称が付いたのは、この地の持ち主に理由があった。その者は、明治の有名な富豪だったが、天涯孤独で、自分が死ぬと、誰も墓に訪れる者は居ない。そう思ったのだろう。それで、生前に広大な墓の敷地の中に野外劇場を作り人が集まるようにしたのだ。まあ、野外劇場と言っても形だけで素人が発声練習をするような小さい物だ。席は、50人位あるだろう。それでも、考えていた用途としては使われていなかったが、持ち主の考えの通りに人が集まる公園としては利用されていた。その、公園の入り口で戦争のような騒ぎが起こしていたのが、新一を守る七人の女性と初音と三十人の警護人だった。
「新一が逃げたのよ。早く追いたいの。あの女達を早く片付けなさい」
 新一が狂ったように叫びながら消えた後、睨み合いが続いていた。
「お嬢様。ですが・・・・・・」
「拳銃が駄目なら素手で戦いなさい。まさか、女に負けるはずがないでしょう」
「はっ・・・・い」
 荒井の気持ちもわかる。拳銃の弾を弾き返したのだ。そのような者と戦っても勝てるはずもない。だが、その気持ちを伝える事が出来なかった。そのような事情で睨み合いが続いていたのだ。それでも、初音の言葉で、恐怖を感じながら少しずつ近寄って行った。
「今日子、どうする?」
 明菜が、明日香たちの後ろから問うた。
「どうするも構えを解く訳には行かないでしょう。拳銃で撃ってきたのよ」
「そうよね」
「明日香、美穂、由美、真由美。あのヤクザ達が消えるまで守りをお願い」
「良いわよ。でも、ヤクザなのかな?」
「当たり前でしょう。拳銃よ。普通の人が持っているはずないでしょう」
「刑事とか特種の任務の人かもよ」
「あの男達の顔やあの女の言葉使いを聞いたら判断が出来るでしょう」
と、明日香以外は防御を崩し言い争いを始めた。その話は、初音にも届いていた。
「なっななっんなの。私達がヤクザだと言いたいの」
「おお嬢様、おおお待ちを・・・危険です」
 今日子達が、自分達の事を言われていると感じて、怒りを表したまま近寄った。
「確かに、祖父の代はヤクザだったわよ。でも、この者達は、いや、他の者達も今では世界的に有名な警護校を卒業し正式な警護人なのよ。この者達が希望すれば首相でも大統領でも警護が出来る優秀な者達です。ヤクザではありません。訂正しなさい」
「そうだったのですかぁ。済みませんでした」
「もういいわ。許します」
「あっ、いいえ。済みませんでした」
と、明日香以外は、防御も攻撃の構えを解くと、意味が分からないまま謝っていた。
「許します。それで、荒井は、私に付いてきなさい。他の者は公園で新一を探すのです」
 初音の自分だけが正しいと思う思考判断で、そく行動していた。その初音の雰囲気だろうか、それとも、真剣に自分が正しいと思う話し振りで雰囲気が変わっていた。先ほどまでの殺気の嵐からお嬢様と普通の子との価値観の違い。そんな口喧嘩に変わっていた。
「散れ。お嬢様、どこに行くのです?」
 荒井は一言だけ呟くと他の者達は新一を探しに向った。そして、すたすたと歩く初音の後を追いかけ、追いつくと初音に問うた。
「決まっているでしょう。必ず戻る場所で待つのよ」
「おお、幼馴染だから隠れる場所が分かるのですかぁ」
「何を言っているのです。自宅に決まっているでしょう」
 初音は、もう七人の女性には興味が無い。と言うよりも始から会っても居ないような感じで公園の外へと向った。そして、残された七人の女性は、不思議そうに初音が消えるまで呆然と立ち尽くしていた。
「明日香、もう大丈夫と思うわ」
 明日香が一人で防御の構えをしていたので止めるように勧めた。
「・・・・・・・」
 明日香は辺りを見回して殺気が消えたと感じたのだろう。赤い感覚器官の回転を止めた。
「先ほどの新一と言う人を探すの?」
「今日は諦めましょう。先ほどのヤクザ屋さんに会うと命の危険を感じそう」
 怯えるように、由美と真由美が、今日子に視線を向けた。
「そうねぇ。もし、探していて、一人であの人達に会ったら命の危険を感じるのは確かね。探すのは止めましょう」
「今日子、でも、帰るには早いわよ。如何する?」
「そうねぇ。親公認だし、昼まで遊びましょう」
「うぉおお」
「この時間の平日ならケーキバイキングが良いと思うわ」
 明日香が独り言のように呟いた。
「それが良いわね」
と、歓声の声を上げた。そして、皆は、昼食を忘れているようにケーキバイキングへと向った。勿論、昼に戻る事は出来るはずもなかった。その頃、初音は、荒井に車を呼ぶように指示を下し、新一の自宅の前に向った。勿論、初音の性格を熟知している荒井は、車内で寛げる車を指示と食事を忘れるはずがない。当然の事だが、新一が帰って来るまで車内から出るはずもなく夕方まで寝てしまっていた。そして、新一の自宅に居る母親も、近所の者も車に近づくはずも無く。それ程に迷惑と感じる車だったのだ。
「今日子、もう一時よ。昼に帰るって言っていたけど、今からでも大丈夫?」
「大丈夫でしょう。赤い感覚器官の導きのまま歩いて時間が経ったと言えばいいわよ。それよりも、問題なのは、母の料理を食べられるかって事なのよ」
「そうねぇ。もう何も食べられないわ」
「でも、帰った方がいいと思うわ」
「そうね。帰るわ。皆は、どうするの?」
「一緒に帰るわよ。私達、今日子の手助けをするって事で、学校を休んだのよ。両親にも連絡が行っているはずだしね」
「うっううう、ありがとう」
 今日子は、皆の優しい心遣いを感じて涙を流した。だが、六人の女性の本心はそれぞれ違っていた。明日香の本心は分からないが自分の事だけを考えているはずだ。明菜は、親と大喧嘩して家に帰りたくないから当分の間は、今日子の家で過ごすと考えているはずだ。瑠衣と真由美は、明後日から始まる。好きな芸能人のコンサートを行く為に、今日子を利用する考えだろう。美穂は、念願の十六歳になり、バイクの免許を取りたいと親に言ったが断られ許してくれるまで家に帰るはずがない。由美は、今日子と同じように好きだった人が赤い感覚器官が見えない。そう言われ思いを忘れる為に、今日子達と馬鹿騒ぎしたかった。それでも、六人は、今日子を心配する気持ちは嘘ではなかった。それに、赤い感覚器官が不思議な反応をしていた。それだけでなく、始祖の復活の話を聞き全てを知りたいと言う気持ちがあったので、六人は最後まで今日子の側から離れるはずがなかった。
「今日子、時間に遅れたのだし、少しでも早く帰った方がいいと思うわ」
「うん、そうね。帰りましょう」
 その後は、先ほどのケーキバイキングの話をしながら家に向かった。
「遅かったわね。でも、約束の通り帰ってきてくれて良かったわ」
「お父さんは?」
「あなた達が心配で、始祖様のお墓でお祈りをしているの。そろそろ帰って来ると思うわ」
「お父さんが・・・・・そう」
「そうよ。お父さんは、今日子は遅れて来る。二時頃だろうって。でも、今日子、もう何か食べてきたのでしょう。いいわよ。昼に来て食べたって言っておくわ」
「ごめんなさい」
「いいの。それで、今日子、又、出掛けるの?」
「う~むむ」
「今日子、ちょっと来なさい」
 母は、一瞬、真剣な表情を表し、今日子だけを隣の部屋に来るように伝えた。そして、娘を座らせると話を始めた。
「気持ちは分かるわ。いいのよ。幼い時から晶君、晶君って言っていたものね。悲しいのは分かるわ。今日は、疲れるほど遊んできなさい」
「うっ」
「お小遣いが無いのでしょう。それは分かっているわ。お父さんも分かっているの。お父さんはね。自分から渡せないから、私から渡しって言われたわ。だから、前の様にとは無理なのは分かるけど、お父さんの前だけは笑みを見せてあげてね」
と、母は、自分と連れ合いの気持ちを伝えた。伝え終わると、今日子にお金を渡した。
「今日子?」
「怒られたの?」
「・・・」
「大丈夫?」
「一緒に謝ってあげようかぁ」
「言い訳してあげるよ?」
 今日子が心配なのだろう。近寄って、それぞれの思いを伝えた。
「えへへ、大丈夫よ。ねね、軍資金が出来たの。遊びに行きましょう。どこでもいいわよ」
「えっ、今日子のおごりなの?」
 六人の女性は、同時に興奮を表した。
「そうよ」
「きゃぁああああ」
 叫び声を上げると、その響き声が消える前には家から居なくなっていた。何処かに遊びに行くのか、それは、考えなくても十六歳が思う場所に、資金が無くなるまで遊ぶ事だろう。早くても夕飯時までには戻れれば良い方だろう。そして、新一とシロ猫と真は、どうなったか、想像は出来るだろうが、新一の自宅の前に、初音が乗っていると分かる車種だ。初音が消えるまで、自宅の近くで隠れていた。勿論、初音の警護人は、公園で探し続けている。初音が自宅に帰ると当時に帰宅の命令が届くはずだ。そして、今日子達は・・・
「今日子、ありがとうね。奢ってくれて。今度、この礼は必ず返すわ」
「いいの。私の感覚器官のお蔭で付き合ってくれているだけで嬉しいし、晶の事も合ったでしょう。それで、帳消しよ。そうそう、夕飯も食べていってね」
と、美穂に言っているようだが、皆に、それぞれ、視線を向けていた。
「うんうん。楽しみしているわ。ご馳走に間違いないもの。食べるわよ」
「皆に、言っているのよ。ありがとうね。勿論、泊まっていってね」
「分かっているって、何のご馳走だろうね」
「最近、私、肉は食べてないしね」
 六人の女性が、言葉で返事を返す者、肩を叩く者、笑み浮かべる者と居るが、本心から喜びを表していた。
「今日子、七時よ。大丈夫?」
「うん、大丈夫と思うけど、その為に皆に泊まってもらうのよ」
「そう」
「・・・・」
「もう、その代わりって変だけど、私を口実にしたらいいわ。瑠衣、真由美、明後日からコンサートに行く口実を考えていたのでしょう。それに、美穂は、バイクの免許を取るのでしょう。皆の企みは、私に任せておきなさい」
「今日子、そろそろ、家よ。堂々と玄関から入るの?」
 最後のカラオケの店を出ると楽しみの余韻を楽しんでいたが、今日子の家に近づくにしたがい、今日子が話題を変え、それぞれの気持ちを確かめた。そして、玄関を開けると・・。
「おかえり」
と、心配して待っていたのだろう。今日子の父親が出迎えに出てきた。
「それらしい人には会ったわよ。でも、面倒な事になりそう」
 今日子は、拳銃で撃たれた事は黙っていた。それは当然だろう。その話をしたら探索する事も家からも出してもらえない。そう考えたからだ。だが、赤い感覚器官が拳銃の弾を弾かなかったら父親に相談したはずだろう。
「面倒な事だとぉ」
「その男、凄い女性に好かれているみたいなの。でも、その男は好意を感じてないと思うの。その事なの、面倒な事ってね。心配しなくても大丈夫よ」
「そうなのか?」
「うん。それで、一週間くらい様子を見たいの。その間は学校を休んでいいよね」
「まあ、一週間は様子を見ようと考えていた。校長も、同族だし始祖様の事だからなぁ。許すだろう。明日の朝でも連絡をしてみる」
「お父さん。勿論、友達もよねぇ」
「う・・・まあ話してみる。校長よりも家族が心配するだろう」
「お願い、お父さんから承諾してくれるように連絡をして」
「でも・・・・友達にも用事があるだろう。一週間もお前の為に貴重な時間を使わせるのもなぁ。そう思うだろう」
「お父さん。私達は、大丈夫だからお願いします」
と、六人は同時に声を上げた。
「そう言うなら良いが、だが、朝と夜には、自分達で家に連絡だけは入れるのだぞ」
「は~い」
 先程と同じように返事を返した。
「父さんは用事がある。後で食べるから早く皆で食事を食べなさい」
「母さんも、父さんに用事があるから話しをしてくるわね。あ、それと、客間の二部屋に床の用意をしておくわ。寝る時は、襖を外しなさい。友達と話しながら寝たいのでしょう。あっ、それと、夕食は直ぐ出なくていいわね。私が帰ってきたら一緒に食べましょう」
 父は娘と言うよりも友人に気を使ったのだろう。それを感じて、母は、父に謝罪をしようとしたのだろう。二人で玄関から出て行った。社か洞窟に向ったのだろう。父は笑い声が聞えてきて、母が戻り食事をしている。そう感じたはずだ。そして、笑い声が消えると母屋に帰り食事を食べた。それは、七人の女性が、銃弾を弾く恐怖や初めて赤い感覚器官を使った為だろう。早く床に付き楽しい夢を見ている時間だった。そして、七人の女性は朝起きると驚きを感じるのだ。それは、七人が同時に同じ過去の夢を見たからだった。その夢を思い出し、自分達が転生した事実を受けとめ左手の小指の赤い感覚器官の導きを信じて行動するのだった。
 
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物語を書いて五年になりましたが、私は「左手の赤い感覚器官(赤い糸)と「蜉蝣(カゲロウ)の羽(背中にある(羽衣)の 夢の物語が完成するまで書き続ける気持ちです。
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