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第九章
 常磐新一とシロは、何故、森の中で倒れていたのか、それは、真が、七人の女性と別れたの頃に理由があった。時間は、朝の八時五分だ。新一は、普段のように家を出ようとしていた。
「新一さん、おはよう」
 同級生の女の子が玄関の前で待っていた。
「げぇ。初音(はつね)ちゃん。何故、居るの?」
「えっ、学校行くでしょう。一緒に行こうかと思ったの」
「でも、突然、どうして」
「父が、警護人を増やしてくれて、歩いて登校を許してくれたからなの」
「ニャァ、ニャアァ」
 シロも主人が玄関から出てくると、塀の上から鳴き声を上げた。おはよう。と呼んでいるのだろうか、遅刻するよ。早く行こう。と言っているようにも思えた。それは、幼稚園から小学生、中学、高校と、シロが登下校の見送りをしていたからだ。幼稚園の時なら頼もしかったと思うが、最近では、嬉しいような恥ずかしい気持ちを感じていた。
「シロちゃん。もう、見送りはしなくていいの。私がするからね」
 意味が分からないのだろう。シロは、主人を見続けていた。
「ねえ、初音ちゃん。周りに居る人達も一緒に来るの?」
 初音の周りには、三十人の強面の男が警護として来ていた。警護とは驚くだろう。裕福な家の子供と思うはずだ。それなら、何故、車で送り向かいしないのか。誰でも、そう思うはずだ。確かに、新一と出会う前は、車で登下校をしていた。新一との出会いの当時、猫の付き添いで学校に来るのは、昔でも今でも有名だった。まあ、新一と初音の出会いの話しは機会が合ったら話すとして、勿論、初音は、一緒に登下校したくて、新一を車に乗せようとしたのだ。だが、猫が引っ掻き騒ぐので車に乗せる事が出来なかった。それで、歩いて登下校したい。そう、両親に頼んだが許してもらえなかったが、何度も頼んで、やっと許して貰えたのだ。そして、初音は、朝、一緒に登校しようと嬉しそうに出迎えたのだ。
「父に、警護は要らないって言ったのよ。だけどね。それだけは許してくれなかったの」
と、話をしていると、シロが塀から下り、新一の足元に絡み付いた。時間だと教えているのだろう。その様子を見て、警護の一人が腕時計を見て声を上げた。
「お嬢様。そろそろ行かなければ、遅刻になります」
「そう分かったわ」
 初音は、新一の手を取り歩こうとした。だが、シロは、初音に対してなのか、時間だと教えているのだろうか、一声の怒りの声を上げた。
「シロ。分かったよ。今行くから絡み付いたら歩けないよ」
 シロには意味が分かったのだろう。道を教えるように先頭を歩き出した。家から、それ程に離れていなく、初めての曲がり角を曲がった時だ。シロは後ろを振り向いた。主人が後を着いてきているのかと、確かめようとしたのだろう。
「ニャ~」
「本当に頭が良い猫ねぇ」
「ねぇ、初音ちゃん。腕を組まなくても歩けるよ」
 シロは、悲しそうに鳴き声を上げた。主人は直ぐに、初音と腕を組み現れたからだ。シロには、その様子が楽しそうに感じたのだろう。初音と会う前は、主人が名前を呼び、シロが逃げて困らせる。そのように遊びながら登下校していたのだ。まあ、新一に言わせれば、「猫の付き人が居ないと外も歩けないのねぇ」と近所の人に笑われたから捕まえて抱っこしようとしたのだ。それなら、新一が猫を守っていると子供心に思っての行動だった。それに、今の初音の場合も、無理に腕の組を外そうとしたら警護をする人が鋭い視線を向けられて嫌々だったのを猫が分かるはずもなかった。
「離れたら危ないわ。これからは、シロの代わりに私が守るって決めたの」
「えっええ、そんな事をしなくてもいいって」
「ニャ~」
 シロは「遅いよ」とでも鳴いたのだろうが、新一にも初音にも聞えていない。新一が猫の鳴き声を無視するなど、今までには無かった事だ。それに、驚いたのだろうか、シロも今までに無い行動をした。主人が気づくまで、その場で待つと考えたのだろう。だが、シロに気が付かずに通り過ぎてしまった。その事で悲しかったのだろうか、人では嗚咽のような咳で苦しむ。そのような感じを表した。その息苦しさが聞えたのだろうか、それとも、前に居るはずのシロに助けも求めるつもりだったのだろう。だが、視線には居なかった。直ぐに後ろを振り向いた。そして、シロの容体を確かめに向った。
「フッゴウ。フッゴウ。フッゴウ」
「シロ大丈夫か、どこか痛いのか?」
と、シロの背中を苦しみが癒えるように何度も何度も撫でた。その気持ちが伝わり、痛みが治まったのだろう。呼吸が少しずつ整ってきた。
「シロ、大丈夫か?」
「ニ~ァニャ~」
「良かった。大丈夫なんだなぁ」
「ニャァ」
「新一さん。シロは、私の警護の者に任せて学校に行きましょう。遅刻しちゃうわ」
「でも、あの、でも」
 初音は、一人の警護人を、その場に残る指示を与えると、新一の腕を掴みながら歩きだした。それでも、新一は抵抗するが、他の警護人から説得の声や殺意の視線を向けられ渋々と歩き出した。だが、心配になり警護人の人だかりの隙間から後ろを見た。すると、シロを托された者の手からシロが逃げるのを見た。
「シロ、どこに行く~ぅ」
 新一は、シロの事だけを思ったからだろう。普段の時には考えらない力を出して、警護人、そして、初音の手から逃げて、シロを追った。
「シロ、シ~ロ~、おいで、シロ、病院に行こう。シロ、おいで、おいで」
 シロは、主の声が聞こえているはず。それでも、足を止めようとしなかった。
「新一さん。どこ行くの。遅刻するわよ」
「初音様。これ以上、この場に居れば本当に遅刻します。もし、今の事を聞いてくれないのでしたら、抱えても学校に行って頂きます」
「でっでも」
「どうしても、時間までに学校に行って頂きます」
「むむむ、私に指示をするのですね。頭に来ました。私は、今日は休みます」
「許す事が出来ません」
「なら、学校に行って欲しいなら、シロを探すのを手伝いなさい。シロの容体が何でも無いと分かったら学校に行きます。それか、病院に連れて行くだけでも良いのです。安心すれば、新一も学校に行くはずだから、私も一緒に行きます」
「仕方がありません。無理やり学校に連れて行ったとしても、途中で抜け出して誘拐されては困ります。その、指示に従って猫を探しましょう。ですが、警護の者から離れないと約束だけは守って頂きますぞ」
 これ程までの真剣な警護は、確かに、可なりの資産家なのだから誘拐を心配するのは分かる。だが、それだけでなかった。初音の父の代で莫大な資産を作った為に、勿論、怨みを感じる者いるだろう。だが、一番の恐れがあったのだ。父の代で解散はしたが、代々やくざの家系で、まだ、祖父が手打ち式や相談役としての力があり、その為に、一人の孫娘に組の再興を考えている。そう思われ、初音の命を狙う者が居たからだった。
「約束は守る。早く探しに行きなさい」
「必ず探し出します。お待ちください」
 初音の言葉で、二十人の警護人が散り、残りの十人が初音を囲むように歩き出した。そして、一時間位の時間が過ぎると、探しに出た全ての者が帰ってきた。だが、何かを隠すような態度を表したのだが、「探し出す事が出来ませんでした」その言葉しか吐かないのだ。初音は、納得するはずもなく、何度も問うが同じ言葉を吐くだけだ。それで、再度、探しに行けと言うが、それも、拒否をされて怒りを爆発する時だった。
「シャー」
と、猫が威嚇する時の鳴き声が響いた。恐らく、シロが威嚇しているはずだ。何故だろう。近くに居るのなら新一と一緒のはずだ。シロに何か遭ったのか、それとも、新一に何か遭って、守る為に戦おうとしているのか、初音は、不審を感じて、その場に向おうとしたが、警護する者に止められた。
「お嬢様、行ってはなりません」
「如何してなのだ。何か隠しているのは分かる。それを、答えないのなら一人でも向うぞ」
 初音は、怒りの為だろうか、それとも、猫と同じように男性のような言葉で威嚇を表しているのだろう。その怒りが伝わったのか、それとも、止めても止めなくても同じように怒りを感じるのなら見せた方が、初音の気持ちが落ちつくと感じたに違いない。
「んっ・・・・・・・?」
 三十人の警護人は、ある方向に進ませるように囲いを解いた。そして、初音は、猫の鳴き声を辿るように歩きだした。それは、数十歩くらいだろう。
「し・ん。何をしているの?」
 初音でなくても驚くはずだ。自分の命よりも大事な猫が、主人を助けるように威嚇をしているのに、新一は、七人の女性に囲まれ喜んでいるとしか思えないからだ。まあ、新一に言わせると、絶世の美女と思える七人に囲まれ膠着しているのだが、それを、初音に分かれとは無理だろう。勿論、分かるはずもなく、問いにも答えないのだから何も見なかったかのように元に居た場所に戻って行った。
「お嬢様?」
「荒井(あらい)、武器を用意しなさい」
「武器・・・・・・?」
「そう、武器を用意しなさい」
「新一様と会ったのでは、まさか、他の組みの者?」
「威嚇する程度の武器で構わない。直ぐに用意しなさい」
「それでしたら、弓で、矢尻に吸盤を付けてみては、どうでしょうか?」
「それを、直ぐに用意しなさい」
「畏まりました」
と、初音に礼を返すと、直ぐに部下に視線を向けた。
「辰(たつ)、直ぐに用意しろ」
「どの位の時間で用意が出来るの?」
「私の娘が弓道をしていますので、三十分もあれば、自宅から帰ってこられます」
「分かりました。この場で待ちます」
 この時、時間は朝の八時三十五分だった。
 最下部の十章をクリックしてください。

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