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第十六章
 都市の一つだけの門の方からは猪、馬、犬家の戦車が、虹、鳥家は戦車の届かない所を攻撃していた。都市中は弾丸の破片や衝撃の風発、建物の破片や崩壊が起きていた。神が罰を与える為に、地上に地獄を創るとしても、今の惨状を創造も出来ないだろう。それほどの事が起きていた。だが、虹、鳥家の攻撃は予定になかった。元々は要求に応じない時の威嚇の為だった。それが、四時までに指示が来ない為に、虹、鳥家の軍長が自分で判断を下した。何故かは、一時間前の西国で起きていた。それは、猪家の長老の一言が原因だった。事件の一時間前。三時の事だ。
「何故、私は自室で寝ているのだ」
 猪家の長老の灰は声を上げた。
「主様。全て予定通りです」
「何が予定通りだ」
「主様は、手を汚さなくていいのです。私が、主様の願い通りに致しました」
「東国の長老はどうした。まさか、殺したのではないだろうなあ」
「いいえ。牢に入れております」
「そうか、ん。今は何時だ」
「三時を少し過ぎました。どうしたのです」
 主が、慌てていたと言うよりも、考えているのか、悩んでいるとも思える複雑な表情をしている。それで、問い掛けた。
「間に合えばいいが、むっんん。牢屋が先だ。今すぐだ。案内しろ。まだ間に合う」
「主様。落ち着いてください」
「いいから、直ぐに牢を案内しろ」
「はっはい」
「走れ、時間がないのだ」
 灰は、急ぎ部屋を出た。老人が礼儀を優先していた為に、引き摺るように急がせた。
「済まない。何かの手違いが起きた」
 灰も老人とは大袈裟だが、部屋から牢まで走りとおす事は出来なかったが、息が切れるほど真剣に走って来た事は声色で感じ取れた。
「おおそうか、出してくれるのだな」
 灰の様子で、指示を出してないと感じた。
「今出す。それで、竜家の長老直ぐに変身が出来るか、東国が攻撃されているのだ。皆を乗せて帰れるか?」
「主様。何を言っているのです。人質にすれば確実に勝てるのです」
「お前は何を考えている。鍵をよこせ」
「主様。十二族の王に成れるのです。止めてください。お願いです、止めてください」
「何度言ったら分かるのだ。私は王になる気持ちがないと、何度も言っているだろう」
「私達を騙していたのですか」
「良いからよこせ」
 奪い取り、鍵穴に差そうとした。
「うっ、何を考えて、いる、のだ」
 背中を短刀で刺された。刺した者は猪家の灰の片腕の老人だ。主を刺した同時に、牢番兵が刺した者の命を奪った。
「早く出してやれ」
「はっ」
「猪よ。大丈夫か、確りしろ」
 五種族の長老と、涙花、信は自国が攻撃をされているのを忘れているのだろうか、灰の容態を気にした。
「父が、近い間に十二族を一家で従えたい。そう思う者が出るはずだと言っていた。十二種族が分かれ、二つの政治の体制を作れば防げるはずだ。その話を何度も聞かされた。だが、私は年々他家への険悪を感じ、駄目だと感じた。東国の者が遠い地へ行けば防げる。威嚇の行動を起こせば意味が伝わるだろう。そう思ったのだ。それは、酒を飲みながら伝える積もりだった。今日の酒は美味しかった。若い頃に皆で飲んで以来かなぁ」
 目が虚ろで、眠いのだろうか、目を閉じて昔の思い出を見ようとしているのだろうか、それとも、身体の機能が役目を果たせないのだろうか、だが、穏やかな表情している。
「わかった。もう良い」
 灰は言葉を聞き、竜家の長老は、目を見開いた。
「私が死ねば、獣機を止められない、戦も止められない。獣族が泥沼になるはず。東国はこの地を捨てた方が良い」
「獣機。禁忌だぞ」
 四家の長老が驚きの声を上げた。 
「言うな」
 竜家の長老が諌めた。
「そうだな、猪の。そう思う有難う」
 もう、灰の口から出るのは、会話にも言葉にもなっていない。全てを話し終えたら償われる。そう思っているようだ。
 灰が息を引取ると、皆は、建物の外に駆け出した。走りながら竜家の長老が声を上げる。
「変身をしたら直ぐに乗ってくれよ」
 西国の都市に住む者は戦が行われている事は知らない。虹家と猪家が、東国との交渉の為と言う名目で軍を動かしたからだ。勿論、東国の長老を引きとめようとする者もいない。
「急げ、都市の外に出るぞ」
 外に出ると、竜家の長老は変身した。全長二五メートルの蛇と鯉を併せたような物が現れた。それが竜だろう。
「良いぞ。全ての者が乗ったぞ」
 その言葉が分かるのだろう。鳴き声を上げると、大空に昇った。
「あれでは、もう間に合わない」
 悲鳴の聞こえない所でも火や煙が見える。それで、都市中の様子は感じ取れた。都市の中で弾丸の破片や建物の崩壊などが、想像が出来て、状況が目に見えるのだろう。
「竜家の長老。私を北の方向に連れてって、妹がいるはずなの。妹の仲間と一緒に故郷に帰るわ。そして、空を飛ぶ船を持ってくるわ。必ず戻るから待っていて」
 竜は頷いたように首を下げ、北の方向に向かう。それ程飛ばなくても馬車を発見した。                                           
「居た。私を、あそこに降ろして」
 空から大きい蛇のような生き物が降りてきたからだろう。愛達が乗る馬車が止まり、即座に涙花は竜から降りて馬車に向かった。
「私は涙よー。涙花よー」
「涙花さん?」
 愛と乙が不審顔で呟いた。
「そうです。涙花です。蘭を呼んで」
 呼ぶ声が聞こえたのだろう。蘭は現れた。
「なんです」
「私は涙花です。貴女は本名を隠しているようだから言わないけど。私の事忘れたの。涙花よ。貴女の姉の涙花よ」
「涙お姉ちゃん」
「そうよ。涙お姉ちゃんよ」
「会いたかったよぉ。お姉ちゃん」
 嬉し涙を流しながら抱き付こうとした。
「ごめん、そんな暇はないの。私を都市に連れて行って。お願い」
「今直ぐなの」
「そう、今直ぐよ」
「甲、直ぐに都市に帰れる」
「帰れるぞ。だが、愛、良いのか」
「良いわ。直ぐに都市に帰って」
「分かった。それでは、椅子に腰掛けて確りと身体を固定してくれ」
 車は行きの時とは違い。微かな振動もしないで到着をした。恐らく、完全な肯定位置を入力が出来たからだろう。
「帰りは良いわ。勝手に帰るから」
 即座に簡単に挨拶を済まし。事件が起きた建物に入っていった。蘭と同族だからだろうか、それとも元の仕事場だったのか、迷いもしないで地下に向かった。
「静かね。私達の使命は終わった証拠ねぇ」
「そうだな。帰って来たのだから報告しに行くとしよう。報告が終われば安心して好きな事が出来るからな」
「そうしましょう」
「蘭、良いのか」
「何が」
「お姉さんなのだろう。何か久しぶりに会ったように感じたから」
「そうよ。何年も会ってなかったわ。だけど、今は駄目なの。何か遣っている時とか、何か遣ると決めた時のお姉さんは人の話は聞かないから、終わるまで待つしかないの」
「そうか」
「行きましょう。愛、乙も行くわよ」
 愛と乙は、何も否定する理由がない為に話には入らず。そのまま二人の後を追った。
 四人は長老の室に行く途中に喚き声や叫び声は勿論、警報機の音も聞こえてこない。それで使命は終わったと感じた。だが、長老の室の近くに来ると、怒鳴り声が聞こえた。一瞬、事件は終わってないのか、そう感じたが、長老と蘭の姉の声と感じ取り、胸を撫で下ろした。だが、四人は室に入る勇気がなかった。
「長老、船の鍵を貸してください」
「駄目だ。外界で使うのだろう。そして、そのまま外界に置き去りにされては困る」
「だから、何度も、返しに来ると言っているでしょう。分からない人ね」
「それにだ。外界には干渉をしないようにしている。そう何ども言っているだろう」
「だから、ただの運搬船よ。理由を言ってよ。持って帰って来ると言っているでしょう」
 二人の会話は扉の外まで聞こえていた。このような喚き声が聞こえていては、普通の神経の持ち主なら入る者は居無いだろう。四人は話が終わるのを待っていた。その時に後ろから靴音がしたのを気が付かないでいた。そして、その者は近寄り、蘭の肩に手を置いた。
「あっお父さん」
「涙花が帰っているのを知っているか」
 娘が扉に指を向けた。
「ああっそうだな、涙花の声だな」
「蘭と名前を変えて、事件の担当している。そうだな、全てが終わったのか」
 蘭は又、扉に指を向けた。
「そうだな。これでは入れないなあ」
 そう言いながら扉を叩いた。その様子を見て、四人は声を掛けようとしたが、許可の返事も聞かずに入ってしまった。怒鳴り声で扉の音が聞こえない。そう思ったのだろう。
「涙花、少し落ち着きなさい」
「お父さん」
「来てくれたか。お前からも言ってくれ」
「長老、お父さんを呼んだからって、諦めないわよ。ある種族の危機なの、お願いよ」
「長老、娘のかたを持つ。そう思うかもしれないですが、他家の建物で水晶球が点滅した。そう知らせを受けました。同じ警告なのか、違う警告なのか分かりませんが、娘が外界から都市に帰るほどの事が起きているのです。恐らく関係している。そう思うのです。私からもお願いします。許可して下さい」
「うぅうう」
 長老は思案していた。
「長老、又、誰かを調査に向かわせる考えのはず。娘二人と、他の三人で向かわせてください。そして、運搬船の許可もお願いします」
「うぅうう。分かった。議題として採り上げる。今日中に結果をだす。それで良いな」
「お願いします。涙花も納得しろ」
「長老様、お願いします」
 涙花はしぶしぶ納得した。
「失礼します」
 部屋の騒ぎ声が聞こえなくなったからだろう。軽く扉を叩きながら部屋に入った。
「ご苦労さん。そう言いたいが、他家で水晶球が点滅したようだ。もう一度出掛けてもらう事になりそうだ。恐らく明日だろう」
「そうですか。わっ分かりました」
「涙花、久しぶりだ。家でゆっくりしなさい。向こうでの話を聞かせてくれるのだろう」
「嫌よ。この部屋で待つわ。一秒でも早く帰りたいの。今でも、一人、二人と命が消えているわ。その事が分かって言っているの?」
「涙花、我がままは止めなさい」
「あのう」
「なんだね」
「なによ」
 親子二人が、愛に問い返した。蘭は二人の姿を見て天を仰いでいた。
「私の部屋に来ない。ここから近いし、一緒に出発するのでしょう。変な言い方だけど、長老が、私達だけで出掛けろ。そう言ったとしても、私と一緒なら大丈夫よ」
「うっ」
 長老は言葉を無くした。愛に言われた事を考えていたのだろう。そう表情を表した。
「そうする、ごめんね。お邪魔するわ」
 涙花は長老の表情を見て、そう言葉を返した。
「私は車に止まるわ。何か、上手い具合に父さんが来たのって、嫌な予感がするわ。言い包められて、仕事が増えそうだわ」
「勝手にしろ」
 父は、そう言って部屋を出た。
「甲も乙も車に来るわね。勿論、外よ」
 蘭は、二人に聞かずに決めてしまった。
「お姉ちゃん、またね」
「私達も行きましょう。う~ん、涙花さん。それとも、涙さんと言えばいいのかな」
「好きな方で、呼んでいいわ」
 愛と共に部屋を出ようとした時、一瞬だが、長老に鋭い目線を向けた。口では言い切れない事を言っているように感じた。
 最後に長老が一人で残ったが、慌てる訳でも、連絡を取ろうともしない。蘭、涙花の父が来た事で再度四人を行かせる事が決まった。そうなのだろう。残るは、涙に鍵を渡す事は長老の気持ちしだい。そう表情で感じられた。
「あのねえ。・・・・」 
 涙花は、蘭達と別れる時、本名で問い掛けようとした。恐らく、父も同じ気持ちのはず。自分の嬉しい事や妹の嬉しい事などを話したかったのだろう。蘭は、その気持ちを気が付かず。甲、乙と罵り合っていたが、涙花には楽しい会話をしている。そう感じた。
「涙さん。外界に付いて色々聞きたい事があるのです。時が経てばねえ。私も外界で住む事になるのです。あの、そのねえ」
「いいわ。何でも言って、分かる事なら何でも教えるわ」
 愛のお蔭だろう。明日の朝までは、外界の事は忘れて楽しい時間を過ごした。
 最下部の十七章をクリックしてください。

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